【対談企画】老齢年金改正見送りの裏側で、遺族厚生年金が改正に!あらためて自己年金づくりの必要性を考えよう

2024年7月30日、厚生労働省は遺族厚生年金の見直し案を発表しました。この見直しは、現役世代で子どもがいない人に対する遺族厚生年金の受給資格や給付額を変更する内容で、より多くの遺族に生活の支えとなるべく制度の改善を目指しています。一方で、見直し案が可決されると、一部の遺族にとっては受け取れる年金額が減少するリスクがあります。 

年金制度の見直しについては保険料払込期間を延長する案も出されるなど、将来的に国民の老後や遺族となった後のセーフティーネットが揺るがされる可能性も考えられます。 

そこで、社会保険制度やファイナンシャルプランニングに詳しいシニアコンサルタントの才田氏に、年金制度改正ニュースやその裏側の動き含め、各自で備えたい対策法についてお話をお伺いしました。

INSURANCE 110 DIRECTOR/シニアコンサルタント
才田 弘一郎

日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。



遺族厚生年金の見直し案とは

高林:「最近、遺族厚生年金の見直しについてのニュースが流れましたが、これはどのよう見直しでしょうか?」 

才田:「年金というと、多くの方は自分の老後にもらう年金つまり『老齢年金』をイメージされると思いますが、日本の年金制度は優れていて、受給のための各種条件はありますが保障の機能もあります。今回見直し案が出された『遺族厚生年金』は、その保障の役割をもつ年金です。現行制度の遺族厚生年金は、実は男女間の不平等があり、その不平等を是正するという理由で見直しが検討されています。 

遺族厚生年金についての詳細は弊社のブログ記事等で確認していただきたいですが、簡単に言うと、厚生年金の加入者が死亡したときに遺族に対する保障をするというものです。

そのなかで、現行制度では夫を亡くした妻が優遇される内容となっているのですが、今回はそこにメスが入りました。現行では夫が死亡したときの自分(妻)の年齢が30歳前後で保障期間は変わりますが、30歳以上であれば一生涯にわたって遺族厚生年金を受け取ることができます。一方で、男女が逆だった場合、つまり妻が死亡し夫が遺族となった場合は夫が55歳未満であれば遺族厚生年金は支給されません。55歳以上であれば支給はされますが、期間は短くなります。今回出された改正案は、この男女間の差を是正しようという内容です。」 

高林:「才田さんは今回の改正案についてどのようにお考えですか?」 

才田:「これまでの日本社会においてはこのような(男女差のある)制度になっているのも理解できなくはないですが、昨今の男女平等を目指す社会の雰囲気においては遺族年金にもその流れに即して見直すというのはわかる気がします。 

ただそれよりも、年金加入期間が40年から45年に5年間支払期間が延長されるなど、『老齢年金』において改悪されると言われていた内容が、今回は見送られたことの方が気になります。年金財政を見直すために5年ごとに開催される会議があるのですが、今回の見直し会議で年金額や年金加入期間の見直しを見送るということになったのです。わかりやすくいうと、国民の負担が増えるかもしれないという不安がなくなったため、国民側にとっては良い話です。

しかし、これはあくまで私見ですが、選挙戦が続く今年は国民世論が悪くならない様に年金負担の先送り調整をしたのではないかと考えています。つまり、将来どこかで再度年金財政の調整を図る可能性があるのではないかと思いますので楽観視しない様にしてください。」

遺族厚生年金の改正で最も影響を受ける人は?

高林:「遺族厚生年金が見直しされるとどのような影響が考えられますか?」 

才田:「今回の見直し案は、男女関係なく遺族厚生年金の支給期間を5年間にするというものですので、一番影響を受けるのは、(自分が)30歳以上で夫を亡くした妻です。改正前(現行制度)では一生涯遺族厚生年金を受け取れますが、改正後は(経過措置は設けられると思いますが)5年間しか受給できなくなります。 

逆に夫のほうは、これまで自分が55歳未満で妻を亡くした場合は遺族厚生年金を受け取れませんでしたが、5年分の年金を受け取れるようになります。」

年金保険料支払い5年延長案とは?

年金保険料支払い延長は見送りに

高林:「先ほど、年金保険料支払い5年延長案について少し触れられましたが、これについて教えていただけますか?」 

才田:「これは年金の加入期間を5年間延長するというもので、年金制度の財政安定化が目的です。財政安定化のためには年金保険料を長く払ってもらうか、増額するかということになります。増額は、昨今の経済状況で現役世代の人への負荷をこれ以上大きくするのは難しい部分があります。そのため、現在の支払い期間をさらに延ばし、年金開始年齢を先延ばしして、将来的な年金給付を支えようという措置です。 

しかし、過去には定年退職年齢が55歳、60歳、65歳退職と働く期間が延びてきて、これからも70歳まで働けるような仕組み作りが企業に求められており、さらに年金加入期間に手を加えることになると、年金の歳入不足問題が顕在化してしまいます。 

今でも年金をもらいながら働くと、もらえる年金が減額される『在職老齢年金制度』など、年金財政を維持するためのさまざまな対策がされています。年金期間延長案は多くの国民にとって追加の経済的負担となるため、慎重な議論が求められています。今回の発表では、この延長案の実施が先送りされたものの、年金制度の持続可能性を確保するためのバランスを模索していますので、将来的には再び議題に上がる可能性が高いとされています。あくまで私の個人的な考えですが。」

老後に働くと年金を受け取れない?

高林:「年金を受給しながら稼ぎすぎると年金がもらえなくなるという話がありましたが、それについて教えていただけますか。」 

才田:「そもそも年金が発足したときには、老後は年金でゆっくり過ごす前提がありました。もちろん働きたい人は働いても良いですが、自分が払った保険料分は権利として老後の収入額に関係なく年金を受給できていました。 

しかし年月が経過するとともに、そのようなシステムを続けると年金財政に問題が生じるようになりました。それで、年金の他に収入がある人は年金額を少し下げる在職老齢年金制度ができました。現在は年金と給料を合わせて月50万円の収入がある人は年金がもらえません。例えば、老後も会社役員などに就任していて報酬が50万円以上であれば、その間は年金がもらえません。老後にもしっかり働きたいという人もいますが、その場合は、年金をもらわなくても良いと割り切った選択肢が求められると思います。これも行政の立場からの年金財政を維持する措置の一つだと考えています。」

今後、我々はどうするべきか

意識して年金の動きを見つつ、自己年金づくりをする

高林:「お話をお聞きしていて、我々若い世代にとっては明るい話題ではないように思いました。年金制度の不安定さを踏まえて、我々は自分の資産を守っていくためにどのように対策を講じるべきでしょうか。」 

才田:「まず、年金制度についての政治的な動きに関心を持つことですね。そのうえで意見を出すことが大切だと思います。 

そもそも年金は人口ピラミッドを前提に成り立つ仕組みですが、今の日本はそのピラミッドが崩れてきています。長生きは生活が良くなった結果ですし、いいことなのですが、少子化は問題があります。少子化の問題が解決しない限り、年金保険料を支払う期間が延びるか、支払う額が増えるか、もしくは受給できる年金額が少なくなるかのどれかになってしまいます。 

年金制度の悪化を防ぐためには本来の人口ピラミッドの形、綺麗な三角形に戻す必要がありますが、それは超長期目線でみなければなりません。つまり、現在現役世代の人たちは国の制度に頼り切るのはいけないけれども、『どうせ年金を受け取れないから払わない』というのもいけません。自分の意見も出せなくなりますから。 

年金保険料は支払いつつも、本当の将来の年金は自分たちで準備していかないといけないと思います。今回のテーマである遺族年金の見直しや年金加入期間の延長など、ちょっとしたニュースも意識して見ることも大事ですし、並行してスキルアップしたり、早いうちから資産運用に取り組んだりすることが大事です。とくに海外にいらっしゃる方は、海外の仕組みを使った自己年金作りを始めておきたいですね。

資産運用は先進諸国のあるべき姿

高林:「日本以外の国々では、積極的に自己年金を作っていく人が多いのでしょうか。」 

才田:「G7と言われる先進諸国では、個人の投資という発想は数十年も前から始まっています。日本でも『貯蓄から投資へ』という流れになりつつありますが、他諸国に比べると遅いですよね。 

そもそも、日本では学校でお金の教育をしていないですよね。どんな仕組みで世の中が回るかを理解しないまま社会に出る人が多いです。他の国は資産運用で成り立つ土台がずっとあるなかで年金制度が作られていますので、資産運用に長けている人も多いです。ただ、そうは言っても資産運用が上手くできない人もいて、富裕層とそうでない人との二極化が進んでいます。 

日本はこれまで国の制度がしっかりしていた分、総中流社会といわれ、みんなどの世代も安定的に上昇傾向にありました。それが2000年初頭の政治改革によって、個人が投資に取り組むことが推奨されるようになりました。投資や運用が得意な人には良い社会になってきていると思いますが、今までの中流階級を保ちたい人にとっては投資で資産を増やせる人との差が開く可能性があると思います。ただ、それが資本主義にもとづく先進国の姿だと思いますし、国が中流社会を守るのではないということに気づいて自分達で一歩動き出すことが大事だと思います。」

自己年金づくりのやりかた

日本国内に住んでいる人の自己年金づくり

高林:「では、日本国内にいる人はどのようにして資産を作っていけば良いのでしょうか。」 

才田:「日本国内にいる人は、『必要だから始める』というのではなく、『テレビなどで言い出したから始める』という人が多いと感じています、それではあまり上手くいきません。ですので、投資より先に自分のスキルを磨くことが大事だと思います。 

スキルといっても世代によって変わるとは思います。例えば、長く働けるように健康に気をつけたり、ITスキルを身に着けたり、より年収の高い外資系企業で働くなどですね。とにかく、長く働き、稼ぎ続けるための活動スキルを蓄えるのが最優先だと思います。 

そのうえで、例えば一般の会社員であれば新NISAやiDeCoを上手く活用して資産を作っていくのが良いと思います。ただ、新NISAには注意点もあります。今年2024年8月はじめに株式相場が急落して日経平均株価が4~5,000円下がりましたが、新NISAの場合は損失が出た場合に他の利益と相殺できません。こういった注意点も踏まえながら、(相場の動きに左右されず)一喜一憂せずに長く積立をし続けるのが良いと思います。」

海外に住んでいる人の自己年金づくり

高林:「ありがとうございます。では、海外に住んでいる人はどのようなことができそうでしょうか。」

才田:「海外に住んでいる人は、海外での仕組みを作れるのは大きなメリットです。ただ、最終的にどこに住むのかによって選択が変わります。海外にずっと住み続けるのであれば、不動産を含めて今住んでいる地で資産を所有するのが良いでしょう。 

一時的な海外滞在で最終的には日本に戻るという人であれば、米国、シンガポール、香港など金融センターといわれている国の金融商品や制度を使うのが良いと思います。税制的なメリットを考えると保険を使って貯蓄を兼ねた資産防衛をするのもいいですね。 

実は、私のところでも不動産投資に関するご相談を多くいただくのですが、海外で不動産を所有してもしっかり管理できたり、収益を得られたりする人は案外少ないようです。海外不動産は多くの収益、売買益を得られそうという感覚で購入する人も多いですが、日本の方にはあまり合っていないと感じることもあります。 

あと、ゴールドも海外で購入した場合も持ち運びや保管の問題があります。国によって税制上の扱いが違い、金現物を申告せずに日本に持ち込むことはできません。そう考えると、貯蓄型保険やファンドの積立などが一番安心できてよいのではないでしょうか。自分に万一のことがあっても自分の指定した人、例えば必ず家族に資産を渡せるメリットもあります。 

もちろん、自分で積極的にFXや株式投資などなど何かできるという方には当てはまらないかもしれませんが、海外で資産を作りたいけど何がいいかわからないという方は弊社にぜひご相談ください。」

これから海外移住したい人は?

まずは目的をもって海外の経験値を積むこと 

高林:「今海外にいる人でも、最終的に日本に帰るかどうかで選択肢が変わってくるんですね。では、これから海外移住をしたい人に対して資産運用についてなにかアドバイスはありますか。」 

才田:「30歳までのワーキングホリデーを使える人は、どんどん海外経験されるといいと思います。外から日本を見ることで日本の良さや悪さに気づけますし、学べることがたくさんあります。ただし、行った先で何をしたいか人生プランを考えてから出ることが大事です。言葉も現地の言葉ができれば良いですが、最低でも英語でのコミュニケーションをとれるようにしておかなければなりません。 

ワーキングホリデーを使えない年代の方も、例えばお子さんの教育や自分のキャリア、年配の方であれば海外の温暖な国で過ごしたいという目的もあると思います。勢いも大事ではありますが、自分の生活環境をイメージしたうえで行動することが大事です。移住してしまう前に、少しテスト移住をしながら自分に合う国を探すのも良いと思います。 

ただし、テスト移住をする先では年金はないと思っておいてください。医療保険もない国が多いです。自分なりの備えをしたうえで海外生活を楽しんでいただきたいです。」

定年後の海外移住をしたい人へのアドバイス

一時的な海外移住も良いが資産計画を立てるこが大事

高林:「ありがとうございます。今50代~60代の方々で、例えば、日本が寒い時期だけ海外で暮らしたいと考えている人や、定年後に海外移住したいけどお金や生活面で悩んでいる人に向けてアドバイスをお願いしたいです。」 

才田:「そうですね。まず、70代、80代になると、現実的に飛行機に乗っての移動が大変になりますし、海外に出るのは気持ち的に難しいと思います。私も今は40代なので元気に動き回れますが、あと30年経つと何時間も飛行機に乗り続けるのは難しいと思っています。 

ですので、移動はまだ問題ない50代〜60代で海外移住されるのは良いと思います。昔からの憧れを実現したいとか、55歳、60歳などで早期退職して退職金をもらったからから、ずっと憧れていたオーストラリアで5年くらい生活してみる……というのであれば構わないと思います。 

ただ、どの国に行くにしても、これから年金生活が始まる入り口の段階で多額のお金を使ってしまうことがないように、資産設計・資金計画はきちんとしておく必要はあります。今50代〜60代の人は今の若い人達に比べると受給できる年金額は多いはずですが、何のために行くかということもしっかり考えたうえで移住の計画をしていただきたいですね。」

110では海外での年金づくりの相談も可能

高林:「ありがとうございます。では、50代〜60代の人などで年金もわりともらえる可能性もありつつ、海外に出て、海外で自分の資産や自己年金を作ることに興味がある人、でも資産設計の仕方がわからないという人もいると思います。そのような人が相談したいとなったときに、貴社ではどのような相談が可能ですか?」 

才田:「弊社では、海外での日本人居住者が最も多い北米、国際金融センターの香港、シンガポール、台湾、最近日本人人口が増えているバンコクなどに拠点を置いて、駐在を含めて海外居住されている日本人の方々に向けた海外での年金づくりセミナーを定期的に開催しています。そもそも年金の仕組みをご存じない方、年金は勝手にくれるものと楽観的に考えている方もいます。そのような方にきちんと仕組みを知っていただき、せっかく海外にいる特権を上手く使いこなしていただきたいという気持ちで、年金はじめ資産形成に関する情報提供をしています。 

手前味噌になってしまいますが、弊社のスタッフは日本でのFP経験が豊富な人が多く、日本に帰国される場合のことや、日本と海外の保険のバランス、日本円との為替とのバランスなども考慮しながら、どうお金を配分するのが最適かという視点でアドバイスをさせていただいています。また、先ほどもお話しさせていただいたように、最終的に自分に万が一のことがあったときに、家族にお金が必ずわたることを前提に置いて海外での資産運用のご提案をさせていただいています。

お客様と弊社スタッフが、後々、お互いに顔を合わせられないというような関係にはならないよう、間違いの少ない金融商品やプランを提供させていただいていますので安心してご相談いただけると自負しています。 

ご家族の構成や海外居住の事情や目的、将来的な希望なども人それぞれに違い、十人十色、百人百色ですので、事例のサンプル、経験、ノウハウも豊富に積んでいます。

すべて日本語で対応させていただけますので、海外での資産運用や海外でお金を無駄にしないための運用の方法を知りたいという方はぜひ、セミナーでも対面でのお問い合わせでも、弊社にご連絡いただければと思います。」 

高林:「ありがとうございます。心強いですね。セミナーと問い合わせはどちらがいいのでしょうか。」 

才田:「それは相談される方の緊急度にもよると思います。近々帰国するかもしれない、異動するかもしれないなどという方は個別に面談していただいたほうが良いと思います。セミナーでお話しする内容を包括したうえでコンサルティングさせていただきます。 

弊社がどんな会社で、どんなことをしているのか、信頼して大丈夫かなどと考えられる方は、先にセミナーで確認していただくのも良いと思います。セミナーの内容もいろいろですので、何度でもセミナーに参加いただいて、違う講師も見ていただきながら一歩踏み出すかどうかの判断をしていただければいいですね。」

 高林:「本日は年金制度改革から、国内海外でどう自己年金を作るかというヒントまで詳細に解説いただき、どうもありがとうございました。」

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記事監修:INSURANCE 110 DIRECTOR 才田 弘一郎
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。
日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。