【年末対談】2026年の海外『資産運用』は『志産運用』へシフト|相続対策と出口戦略を意識した資産形成


2025年は、AIの急速な進化や世界的な金融情勢の変動など、私たちを取り巻く環境が加速度的に変化した一年でした。特に海外に居住する日本人にとって、円安の進行や不安定な国際情勢は、将来の資産形成に対する不安を増大させる要因となったのではないでしょうか。

「2026年に向けて、どのような資産運用戦略をとるべきか」「海外にある資産を、将来どのように活用し、次世代に引き継いでいけばよいのか」といった悩みは、多くの海外在住者が共通して抱える課題です。

今回は、こうした海外在住者特有の資産運用の課題に対し、日本および海外の金融業界で20年以上にわたり、累計2,000名以上のお客様をサポートしてきた専門家・才田弘一郎氏にお話を伺いました。2026年以降の資産運用を考えるうえで重要なキーワードとなる『志産運用』とは何か。さらに、海外資産の出口戦略と相続対策について、対談形式で詳しく解説していきます。

監修者プロフィール
INSURANCE 110 DIRECTOR/シニアコンサルタント
才田 弘一郎

日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。



Contents

2025年の海外資産運用を振り返る


高林:「才田さん、本日はよろしくお願いいたします。まずはじめに、2025年はどのような年だったか、専門家の視点から振り返っていただけますでしょうか。」

才田:「よろしくお願いいたします。2025年は、あらゆる物事のスピードが非常に速い一年でした。特にマーケットの動きは目まぐるしく、AI技術の進化は私たちの情報処理能力を超えるほどの変化をもたらしました。多くの情報が溢れる中で、それをどう活用し、資産運用に結びつけていくかが問われた年だったと言えるでしょう。」

2025年の市場動向|アメリカの借金問題と金価格の上昇

高林:「経済的な側面で、特に印象に残った出来事はありますか?」

才田:「最も大きな動きとしては、やはりアメリカの借金問題が挙げられます。国の債務が38兆ドルという天文学的な数字に達し、世界中の投資家が『本当にドルを持ち続けてよいのか』という疑問を抱き始めました。このドルへの不信感が、結果として金の価格を大きく押し上げる要因となったのです。」

高林:「金(ゴールド)への投資が注目された一年でしたね。」

才田:「はい。私自身も2022年頃から現物資産の重要性を訴えてきましたが、当時と比較すると金の価格は約3倍にまで上昇しました。これは、多くの国がドル以外の安全資産を模索し始めた結果です。世界経済の根幹であるドルへの信頼が揺らぎ始めたことは、2025年を象徴する大きな出来事でした。」

デジタル資産の台頭|新しい資産運用の時代へ

高林:「現物資産である金とは対照的に、デジタル資産の分野でも大きな変化があったと伺いました。」

才田:「その通りです。もう一つの大きな転換点は、デジタル資産に対するアメリカ政府の姿勢の変化です。トランプ政権下で、これまで懐疑的だったデジタル資産を正式な資産クラスとして認める動きが加速しました。『ジーニアス法』や『クラリティ法』といった法整備が進み、アメリカの年金機構のポートフォリオに金やデジタル資産が組み込まれる可能性が出てきたのです。」

高林:「それは、資産運用の世界において非常に大きな変化ですね。」

才田:「はい。これは時代の大きな転換点と言えるでしょう。長らく続いたドルへの絶対的な信頼(ドルへの信認)から、価値の裏付けがある現物資産への回帰、そして全く新しい技術であるデジタル資産の台頭という、二つの大きな潮流が生まれた一年でした。この流れが2026年以降、さらに加速していくと考えています。」

海外在住者が直面した資産運用の課題

高林:「そうした世界情勢の変化の中で、海外に住む日本人の方々からは、どのような相談が多かったのでしょうか?」

才田:「ご相談内容は大きく二極化していました。一つは、金価格の上昇やデジタル資産の話題に触発され、『自分のポートフォリオにも積極的に取り入れたい』という前向きなご相談です。一方で、もう一つの大きな流れとして、コロナ禍をきっかけに『海外での永住から、日本への帰国を検討し始めた』という方々からのご相談が非常に増えました。」

高林:「日本への帰国を考える方が増えているのですね。」

才田:「はい。海外での生活に区切りをつけ、日本で老後を過ごしたいと考える方が増える中で、『海外に置いている資産をどう整理し、日本の税制や相続制度に対応させていくか』という、いわゆる資産のリバランスに関するご相談が急増しました。私たちは、国際案件に強い弁護士や税理士と連携しながら、こうした課題の解決をサポートしています。」

海外資産運用の現状と課題


高林:「日本への帰国を考える方が増えている中で、特にどのような課題が浮き彫りになってきたのでしょうか?」

才田:「せっかく海外で資産を増やしても、その『落としどころ』、つまり出口戦略を考えていない方が非常に多いという点です。特に、海外に資産を持ったまま日本に帰国したり、あるいは海外で万が一のことがあったりした場合、その資産をご家族がスムーズに受け取れないという問題が頻発しています。」

増加する帰国希望者|海外永住から日本への回帰

高林:「コロナ禍をきっかけに、海外から日本へ戻りたいと考える方が増えたというのは、非常に興味深い傾向ですね。」

才田:「はい。海外での生活は刺激的で多くのメリットがありますが、いざという時に医療や社会保障の面で不安を感じたり、最終的には慣れ親しんだ日本で暮らしたいと考える方が少なくありません。特に、ご自身の老後やご両親の介護などをきっかけに、日本への帰国を具体的に検討し始める方が多い印象です。」

高林:「海外に一度でも出た経験のある方にとって、資産の『落としどころ』が特に重要になる、というお話がありましたが、これは日本にずっと住んでいる方とは何が違うのでしょうか?」

才田:「よい質問ですね。一番大きな違いは、適用される法律や税制、そして文化が異なるという点です。日本国内だけであれば、資産の相続は日本の法律に基づいて行われます。しかし、資産が海外にある場合、その国の法律や国際的なルールが複雑に絡み合ってきます。少し難しい話ですが、所得に関する税金(所得税)には租税条約がある一方で、相続税については原則として租税条約がないケースが多いんですね。そのため、二重課税の問題が生じ得ても、最終的には当事者側で調整・対応せざるを得ない場面が出てきます。言語の壁はもちろん、パートナーが外国籍であったり、お子さんが二重国籍であったりする場合、問題はさらに複雑になります。日本での相続手続きと比べて、10倍以上煩雑になりかねないのです。」

海外資産とプロベート(相続手続き)の複雑性

高林:「海外資産の相続が、それほど複雑だとは知りませんでした。」

才田:「多くの方がこの問題の深刻さに気づいていません。例えば、英米法の国(香港、シンガポール、アメリカ、オーストラリアなど)では、人が亡くなると、その方の資産は一旦すべて凍結され、『プロベート』という裁判所の手続きを経なければ、相続人が受け取ることができません。」

【専門家からのアドバイス】プロベートとは?

プロベートとは、亡くなった方の遺産(資産と負債)を法的に確定し、正当な相続人に分配するための裁判手続きのことです。この手続きには通常、1年半〜2年という長い時間がかかり、弁護士費用として200万円〜500万円、あるいはそれ以上の高額な費用が発生する場合があります。この間、遺されたご家族は故人の資産を一切動かすことができず、精神的にも経済的にも大きな負担を強いられることになります。

才田:「せっかく海外で築いた資産が、いざという時に塩漬けになってしまい、さらに高額な費用までかかってしまう。これでは、何のために資産運用をしてきたのか分かりませんよね。こうした事態を避けるためには、資産を形成する段階から、出口戦略をしっかりと考えておく必要があるのです。」

資産が増えても、出口戦略がなければ意味がない

高林:「つまり、ただリターンを追い求めるだけでなく、その資産を最終的にどうしたいのか、という視点が重要だということですね。」

才田:「その通りです。金利やリターンを追い求める資産運用はもちろん重要ですが、それはあくまで手段の一つです。2026年以降の資産運用では、その先にある『どうやって資産を円満に次世代へ引き継ぐか』『どうやって自分の人生を豊かにするために使うか』という出口までをセットで考えることが、これまで以上に重要になってきます。特に、少しでも海外に資産をお持ちの方は、この点を強く意識していただきたいですね。」

『志産運用』とは何か


高林:「ありがとうございます。これまでのお話で、海外資産の出口戦略の重要性がよく分かりました。そこで、今回の本題である『志産運用』について、詳しくお伺いしたいと思います。そもそも、なぜ今『志産運用』という考え方が必要なのでしょうか?」

才田:「近年、新NISAの開始や米国株ブームなどもあり、多くの方が資産運用に関心を持つようになりました。しかし、その多くが『いかにお金を増やすか』というリターン追求に終始してしまい、『そもそも、何のために資産を増やすのか』という最も重要な部分が抜け落ちてしまっているように感じます。株価が右肩上がりで上昇し続けることを前提にした考え方に寄りかかってしまうと、予期せぬ事態が起きた時に、対応できなくなるケースが後を絶ちません。」

リターンだけを求める運用の限界

高林:「予期せぬ事態、といいますと?」

才田:「例えば、ご自身の突然の死や、パートナーとの死別・離別などです。特にこの数年は、コロナ禍の影響もあり、若くして亡くなる方の話を耳にする機会が増えました。リターンを最大化するためにリスクの高い運用をしていたり、20年後の目標達成を前提とした長期プランを組んでいたりすると、道半ばで万が一のことがあった場合、遺されたご家族が路頭に迷ってしまう可能性があります。新NISAも、資産が増えている局面では『非課税』の効果が大きい一方で、損益通算ができないなど、見えにくいリスクがある点も最近話題になっています。」

高林:「なるほど。お金を増やすことだけが目的化してしまうと、そうしたリスクへの備えが疎かになってしまうのですね。」

才田:「はい。また、人生の選択肢が多様化する中で、パートナーとの関係性が変わることもあります。海外の不動産を個人名義で持っていた場合、財産分与をどうするのか。国が運営する制度は、状況に応じてルールが改定されることもあります。そうした問題は、決して他人事ではありません。だからこそ、単に金利やリターンだけを追い求めるのではなく、ご自身の人生設計と資産運用を統合して考える『志産運用』が重要になるのです。」

志産運用の定義|人生設計と資産運用の統合

高林:「『志産運用』という言葉の定義について、もう少し詳しく教えていただけますか?」

才田:「私が提唱する『志産運用』とは、従来の『資産運用』に、ご自身の人生の目的や想いを意味する『志』を掛け合わせた考え方です。つまり、『どういう人生を送りたいか』をまず明確にし、その目的を達成するためのツールとして、お金(資産)をどう活用していくかを設計することを指します。」

高林:「お金を増やすことが目的ではなく、あくまで理想の人生を実現するための手段である、と。」

才田:「その通りです。資産運用を始める前に、まず『そのリターンが実現した時、自分はどうなっていたいのか』『その資産を誰のために、どのように使いたいのか』という出口のイメージを明確に持つ。たったそれだけで、選ぶべき金融商品や資産の持ち方は大きく変わってきます。そして、万が一のことがあっても、ご自身の『志』が資産と共に大切な人に引き継がれ、多くの人を幸せにする結果に繋がるのです。」

ライフステージに応じた志のアップデート

高林:「『志』と一言で言っても、年代やライフステージによって変わってくるものだと思います。そのあたりは、どう考えればよいのでしょうか?」

才田:「非常によいご指摘です。『志』は固定的なものではなく、ご自身のライフイベントに応じて、常にアップデートしていくべきものです。例えば、30代でこれから家族を築いていく段階の方であれば、まずは資産を積極的に増やしていくことが『志』になるかもしれません。しかし、お子さんが生まれれば、『この子に迷惑をかけないように、資産をどう残していくか』という責任が生まれます。」

高林:「なるほど。結婚、出産、子育て、そしてリタイアと、人生のステージが進むにつれて、『志』の形も変化していくのですね。」

才田:「はい。ですから、定期的にご自身の人生設計を見直し、それに合わせて資産運用のポートフォリオも柔軟に組み替えていくことが大切です。例えば、『何歳までにいくら貯めて、そのうちいくらを子どもの教育費に充て、残りは夫婦の老後資金にする』といった具体的な計画を立てることで、漠然とした将来への不安は、具体的な目標へと変わっていきます。これが『志産運用』の第一歩です。」

海外資産の『落としどころ』を考える


高林:「『志産運用』の重要性は理解できましたが、特に海外に資産を持つ人にとって、最も注意すべき『落としどころ』の問題、つまり相続について、さらに詳しく教えてください。」

才田:「はい。先ほど少し触れましたが、海外資産の相続で最大の障壁となるのが『プロベート』という手続きです。日本の相続制度とは全く異なるため、多くの方がここでつまずいてしまいます。」

日本とは異なる相続制度|プロベートの費用と時間

高林:「日本の相続手続きとの違いは、具体的にどのような点なのでしょうか?」

才田:「日本では、亡くなった方の資産は、法律で定められた相続人(配偶者やお子さんなど)が話し合いを通じて分割し、10か月以内に相続税を申告・納税するのが基本的な流れです。しかし、香港やシンガポール、アメリカといった英米法の国では、個人の遺言がない場合、資産はまず裁判所の管理下に置かれます。」

高林:「裁判所が介入するのですか。」

才田:「その通りです。裁判所が弁護士などを通じて、故人の資産と負債をすべて洗い出し、誰が正当な相続人であるかを確定させる『プロベート』という手続きを行います。この手続きが完了するまで、相続人は資産を一切引き出すことができません。このプロセスには、通常1年半〜2年という長い時間と、数百万円単位の高額な弁護士費用がかかってしまうのです。」

【注意点】海外資産の相続で起こりうること

資産の凍結:プロベート手続き中は、銀行口座や証券口座が凍結され、一切の取引ができなくなります。
高額な費用:弁護士費用や裁判所への手数料として、遺産総額の数%(数百万円以上)を請求されるケースも少なくありません。
長期化:相続人の確定や資産の評価に時間がかかり、手続きが完了するまでに数年を要することもあります。
精神的負担:慣れない海外の法律専門家とのやり取りや煩雑な手続きは、遺されたご家族にとって大きな精神的ストレスとなります。

プロベートを避ける資産配置戦略

高林:「そのような事態は、何としても避けたいですね。プロベートを回避するための具体的な方法はありますか?」

才田:「はい、方法はあります。最も有効な対策の一つが、各地域でのWill(遺言書)の作成、そしてプロベートの対象とならない形で資産を保有することです。例えば、生命保険(保険金)や貯蓄型保険は受取人が指定されているため、プロベートを経ずに、受取人固有の財産としてスムーズに受け取れる場合があります。遺言書があることで故人の意思も最大限反映されるため、保険ラッピングプラン以外の海外資産をお持ちの場合は、遺言書の作成も重要になってきます。」

高林:「なるほど。遺言や、どのような資産の持ち方をするかが鍵になるのですね。」

才田:「その通りです。不動産や株式などを個人名義で持っていると、プロベートの対象となってしまいます。しかし、遺言や信託(トラスト)の仕組みを活用したり、生命保険のように“保険で包まれた形”で保有したりすることで、裁判所の介入を防ぎ、ご自身の『志』の通りに、指定した相手へスムーズに資産を承継させることが可能になります。どの資産の持ち方が、ご家族に一番迷惑をかけない形になるのか。その視点で見直すことが非常に重要です。」

子どもに迷惑をかけない資産の持ち方

高林:「特に、次の世代であるお子さんたちに負担をかけたくない、と考える方は多いと思います。」

才田:「おっしゃる通りです。海外に資産を置いたまま認知症になられたり、亡くなられたりした方について、日本にいるご子息の方からご相談を受けるケースも増えています。突然、海外の法律事務所から高額な手数料を請求され、どうしていいか分からず途方に暮れてしまうのです。資産運用で成功し、プロフェッショナルインベスターとして10億円以上の資産を築いたとしても、その『持ち方』を間違えれば、遺された家族に大きな苦労を強いることになりかねません。今一度、ご自身の資産がプロベートの対象にならないか、確認してみることを強くお勧めします。」

2026年の資産運用戦略


高林:「ありがとうございます。プロベートのリスクと、それを回避するための資産の持ち方の重要性がよく分かりました。それでは、これまでの議論を踏まえ、海外在住者が2026年に向けて取るべき具体的な資産運用戦略について、アドバイスをいただけますでしょうか。」

才田:「はい。2026年の戦略を考える上で重要なのは、『攻め』と『守り』のバランスです。そして、そのバランスは、個人の年代やライフステージによって大きく異なります。」

攻めと守りのバランス|年代別アプローチ

高林:「年代別のアプローチについて、詳しく教えてください。」

才田:「例えば、20代や30代といった若い世代の方は、まだ資産形成の初期段階にありますから、ある程度リスクを取って積極的にリターンを狙う『攻め』の運用も重要です。全世界株のインデックスファンドや、将来性のあるテクノロジー株などへの投資が考えられます。ただし、その際も、万が一働けなくなった時のための『守り』として、就労不能所得補償保険などで備えておくことは不可欠です。加えて実は、自己投資(スキル・人脈・チャレンジ)など、自己成長につながる分野に全力投資することも大事な年代ですね。」

高林:「では、40代、50代と年代が上がるにつれて、戦略はどう変わっていくのでしょうか?」

才田:「40代、50代になると、お子さんの教育資金やご自身の老後資金など、守るべき資産も増えてきます。そのため、徐々に『守り』の比重を高めていく必要があります。具体的には、値動きの激しい個別株などの比率を下げ、安定的に配当収入が得られる高配当株や、先ほどお話しした生命保険のようにプロベートを回避できる資産の割合を増やしていく、といったポートフォリオの見直しが有効です。」

IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の選び方

高林:「資産運用のパートナーとなるIFA選びも重要になってくるかと思いますが、信頼できるIFAを見分けるポイントはありますか?」

才田:「非常に重要な点ですね。残念ながら、商品を販売するだけして、その後のフォローを全くしないというIFAも存在します。実際に、『担当者がいなくなってしまい、自分の契約がどうなっているか分からない』というご相談も後を絶ちません。」

【専門家からのアドバイス】信頼できるIFAの選び方

長期的なサポート体制:担当者個人の力だけでなく、組織として長期間にわたり顧客をサポートする体制が整っているかを確認しましょう。
出口戦略への理解:単にリターンの高い商品を勧めるだけでなく、相続や税金といった出口戦略まで含めた提案ができるかを見極めることが重要です。
複数の選択肢の提示:状況や意向を丁寧にヒアリングした上で、メリット・デメリットを含めて複数の選択肢を提示してくれるIFAは信頼できる可能性が高いです。
顧客からの評判:既存顧客からの評判や紹介なども、判断材料の一つになります。

才田:「IFAを変えたいというご相談も多く寄せられます。今のIFAに不安を感じたら、セカンドオピニオンを求めるなど、積極的に行動することをお勧めします。」

海外資産の整理と日本への資産移動

高林:「日本への帰国を考えている場合、海外資産はどのように整理すればよいのでしょうか?」

才田:「帰国を決めたら、計画的に資産を整理し、そのまま残すか、日本へ移動させる必要があります。一度に多額の資金を動かすと、送金手数料が高額になったり、税務署から問い合わせが来たりする可能性もあります。どの資産をいつ、どのような方法で日本に移すのが最適か、専門家と相談しながら、ご自身の状況に合わせたプランを立てることが重要です。特に海外の不動産などは売却に時間がかかり、焦りが出ると足元を見られた価格になってしまう場合もあるため、気持ちにも余裕を持って早めに準備を始めることが肝心です。」

人生設計から見た資産運用


高林:「ありがとうございます。年代やライフステージに合わせた戦略が重要だということがよく分かりました。最後に、資産運用の根幹となる『人生設計』について、才田さんの哲学をお聞かせいただけますでしょうか。多くの方が、『どういう人生を送りたいか』という問いに対する答えを見つけられずに悩んでいるように思います。」

才田:「おっしゃる通り、そこが一番のセンターピン(中心)でありながら、最も難しい問いかもしれませんね。アドバイスとしてお伝えしたいのは、『自分探しの旅』に出てはいけない、ということです。」

『どういう人生を送りたいか』が出発点

高林:「『自分探しの旅』に出てはいけない、とはどういう意味でしょうか?」

才田:「『理想の人生』を求めて、今の場所から離れて遠くへ探しに行こうとする人がいますが、多くの場合、何も見つけられずに旅を終えてしまいます。本当に大切なのは、今、自分の目の前にあることに集中することです。今やっている仕事、目の前にいる人との関係、そうしたものに真剣に向き合う中でしか、自分の本当の価値や、やりたいことは見えてこないのです。」

高林:「未来を考えるあまり、足元がおろそかになってはいけない、ということですね。」

才田:「はい。今やっている仕事が、たとえ単純な作業だと思えても、それをどうすれば効率化できるか、どうすれば顧客にもっと喜んでもらえるかを突き詰めて考える。そのプロセスの中に、ご自身の得意なことや、情熱を注げるものが見つかるはずです。目の前のことに100%コミットできない人が、『理想の人生を送りたい』と願っても、それはただの空想で終わってしまう可能性が高いでしょう。もちろん願い通りに叶う人もいますが、それは、その願いを達成・成就するために、しっかりと自分を追い込んだ経験がある人だと思います。」

目の前の仕事に集中することの重要性

高林:「昔と比べて、現代はインターネットで世界中の人の生き方を見られるようになりました。それが逆に、自分と他人を比較してしまい、焦りや迷いを生む原因になっているのかもしれませんね。」

才田:「その通りです。SNSを見れば、華やかな成功事例が溢れています。しかし、その成功の裏には、私たちの見えないところでの泥臭い努力が必ず存在します。さらに、SNS上の成功者が本物なのかどうかすら怪しい点もあるものです。他人の成功を安易に真似しようとしても、その根底にある哲学や試行錯誤のプロセスを理解していなければ、決して自分のものにはなりません。大切なのは、他人の真似をすることではなく、自分のいる場所で、自分にしかできない価値を創造することです。」

自分探しの旅から脱却する方法

高林:「では、読者の方が『志』を見つけるために、今日からできることは何でしょうか?」

才田:「まずは、今のご自身の資産状況と、人生の目標を紙に書き出してみることをお勧めします。どんな些細なことでも構いません。『5年後に家族で世界一周旅行に行きたい』『子どもを海外の大学に進学させたい』『60歳でリタイアして、趣味の絵を描いて暮らしたい』。そうした具体的な目標を書き出すことで、その実現のために『いつまでに、いくら必要なのか』が明確になります。それが、あなただけの『志産運用』の羅針盤となるのです。」

実例から学ぶ志産運用


高林:「ありがとうございます。具体的なイメージを持つために、これまでに才田さんがご相談を受けた中で、印象に残っている『志産運用』の実例があれば、教えていただけますか?」

才田:「はい。一つ、非常に象徴的なケースがあります。20代で海外に渡り、現地で40年以上ヨーロッパに住まわれていた、ある女性の方のお話です。」

40年海外に住んで気づいた日本への想い

高林:「40年とは、すごいですね。まさに海外での人生を全うされた、という感じですね。」

才田:「ええ。その方も、ずっと海外で永住するつもりだったそうです。しかし70歳を前にして、ふと海外で、現地のボランティアとして関わっていた場で『ついつい日本の丁寧なおもてなしや、繊細な整理整頓をしている日本人としての自分にハッと気づいた』。さらに味覚も、『繊細な味付けの和食が恋しい』と感じるようになった、と。何十年経っても、自分の中に深く刻まれた日本のDNA、つまり『望郷の念』に気づいたそうです。そして最終的には、日本へ帰国するという決断をされました。」

高林:「長年海外にいても、最終的には日本に戻りたくなるものなのですね。」

才田:「もちろん人によりますが、私が昨年ご面談させていただいた30名ほどの帰国希望者の方々は、ほぼ全員が同じようなことをおっしゃっていました。若い頃に抱いていた『志』と、人生の最終章を迎えるにあたっての『志』は、このように変化していくのです。この方の場合、日本に帰国するという新たな『志』が生まれたことで、海外に分散していた資産を、日本の税制や相続制度に合わせて最適化するという、新たな資産運用のステージに進まれました。」

相続トラブルを避けるための事前準備

高林:「相続に関するご相談も多いとのことですが、具体的な事例はありますか?」

才田:「海外で亡くなられたお父様の相続で困っている、というご子息の方からのご相談でした。お父様は多額の資産を遺されていましたが、そのほとんどが海外の不動産や銀行口座に個人名義で置かれており、プロベートの対象となってしまいました。その結果、ご子息は突然、現地の弁護士から高額な費用を請求され、1年以上にわたって資産を動かせないという状況に陥ってしまったのです。」

高林:「それは大変でしたね…。」

才田:「このケースでは、私たちが現地の専門家と連携し、手続きをサポートしましたが、もしお父様がご存命のうちに、遺言書の作成や、相続税対策を見据えた生命保険の設計などを活用してプロベートを回避し、日本国内での相続税対策を整えていれば、ご家族がこのような苦労をすることもなかったはずです。資産を『遺す側』の『志』として、家族に迷惑をかけない準備をしておくことの重要性を、改めて痛感させられた事例でした。ただ、正直なところ、自分の父親に『遺言書を書いて』と子どもの立場で伝えるのは、かなり難易度の高いプロセスです。この対談記事が、何らかのきっかけになれば幸いです。」

パートナーとの人生設計の重要性

高林:「パートナーが外国籍の場合など、さらに複雑な問題も出てきそうですね。」

才田:「その通りです。国際結婚が珍しくない現代において、ご夫婦で『どこで暮らし、どのように資産を築き、それをどう次世代に繋いでいくか』という共通の『志』を持つことが、これまで以上に重要になっています。国籍が異なれば、適用される法律も、お金に対する価値観も異なります。お互いの価値観を尊重し、将来のライフプランについて、早い段階からしっかりと話し合っておくことが、円満な資産承継の鍵となります。もちろん、別の道を進む選択をされた場合であっても、それぞれが次の人生を楽しく生きるための準備は必要かもしれません。」

まとめ


今回の対談では、2026年以降の海外資産運用において、単にリターンを追い求めるのではなく、ご自身の人生設計(心・体・お金の健やかさ)と統合した『志産運用』がいかに重要であるか、そして、海外資産の出口戦略、特にプロベート(相続手続き)への対策がいかに不可欠であるかについて、専門家の視点から詳しく解説いただきました。

世界情勢が目まぐるしく変化し、個人の生き方も多様化する現代において、資産運用のあり方が大きな転換点を迎えています。この記事が、海外で奮闘される皆様にとって、ご自身の資産と人生を見つめ直し、2026年に向けた新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

資産運用に関する漠然としたお悩みやご相談、ご自身の『志産運用』プランについて、専門家からの具体的なアドバイスが必要な方は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

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記事監修:INSURANCE 110 DIRECTOR 才田 弘一郎
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