アップルが直面している追徴課税問題と国際課税のあり方

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はじめに

常に世界を牽引するテクノロジー企業であるアップル(Apple Inc.)は、iPhoneやiPad、Macなどのイノベーティブなハードウェア製品に加え、App StoreやiCloud、Apple Musicなどのデジタルサービスで莫大な収益を上げています。
今やアップルの時価総額は3兆ドルを超え、企業としての影響力は世界中に及ぶ一方で、国際的な税金逃れの象徴としての批判が噴出しています。ここ数年、アップルは日本政府や欧州による税務調査や制裁など、追徴課税問題に直面しており、世界的なグローバル課税体制の見直しという大きな議論に巻き込まれています。
アップルの税務戦略と国際的批判

アップルが本社を置くのは米国カリフォルニア州ですが、売上の多くはアジアや欧州を含む海外市場で稼いでいます。その税負担を抑えるため、アップルは長年にわたってアイルランドなどの税率が低い国に収益を移転してきました。アイルランドの法人税率は12.5%と他国よりも低く、多国籍企業の節税拠点として広く知られています。
アップルはそこに子会社を設け、欧州や一部アジアの売上を集約しているのです。こうした税務戦略によって、イギリス、フランス、ドイツ、日本といった売上の多くを占める国での課税を最小限に抑えてきました。このような節税手法は違法ではないものの、不公正な税制回避としてこれまで批判の対象となってきました。
アップル日本法人に対する税務調査

2024年、日本の国税当局はアップルの日本法人に対して大規模な税務調査を実施しています。この調査の結果、本来であれば日本国内で課税されるべき利益が適切に申告されておらず、日本市場での収益が国外に流出していたとして、約140億円の追徴課税が課されています。
アップルはこれに対して「国際的な課税ルールに従っており、日本の法律に違反した認識はない」とコメントしていますが、追徴額の支払いには応じたと報じられています。この一件は、外資系IT企業のデジタル課税逃れに対する日本政府の対応強化を象徴する事例となりました。
アイルランドを巡る巨額課税命令

欧州においても、アップルは長年にわたって法人税回避の象徴として注視されてきました。欧州委員会は、アイルランドがアップルに対して特別な税制措置を与えることで、競争を歪めてきたと判断しました。EU司法裁判所は、競争法の観点から重大な問題であると指摘し、アイルランド政府による米国アップルへの税制優遇は違法として、同社に130億ユーロの追徴課税をアイルランドへ支払うことを命じました。
この判決を受けて、アイルランド政府は「いかなる企業や納税者に対しても、優遇税制措置は取っていない」「アイルランドは国際的な租税に関する議論に積極的に参加しており、国際ルールの発展に伴い、自国の税制に必要な変更を行ってきた」とコメントしています。また、アップルも一貫して「すべての国で現地の法律に従い税務処理をしている」と主張し、欧州委員会の判断には強く反発しています。
この一件は、欧州における多国籍IT企業へのデジタル課税のあり方に一石を投じ、この事例に基づいて、今後も各国の税務当局が多国籍IT企業に対して追加課税を実施していく可能性があります。
国際課税体制における課題

アップルは、毎年数十億ドル規模の法人税を世界中で支払っており、最新の報告書によると、2023年は世界全体で約210億ドルの税金を納めたとされています。一方、税務逃れを指摘する側の主張として、アップルの税務戦略は形式的には合法であっても、実質的には税の回避行為に該当するとの立場を取っています。
とりわけデジタル経済においては、物理的な拠点を持たずに各国で売上を上げることが可能であるため、利益の集中や税率の低い国への移転が容易です。このことを利用したタックス・プランニングは是正されるべきだという声が強まっており、こうした状況に対し、OECDなどの国際機関は「グローバル・ミニマム課税」などの新たな枠組みを提唱し、国際的な課税ルールの整備を進めています。
今後アップルは、各国においてより多くの税を納め、透明性の高い税務処理を行うことが求められていくでしょう。また、株主やESG投資家の間でも企業の納税責任への関心が年々高まっており、企業価値やブランドへの影響も無視できない要素となっています。多国籍IT企業の象徴とも言えるアップルが、今後国際課税ルールの変化にどのように対応していくのかは、他のグローバル企業にとっても重要な指標となっていきます。
まとめ

アップルが日本や欧州で直面している追徴課税問題は、単にアップルだけの問題にとどまらず、国をまたいでサービスを提供しているグローバル企業の国際的な税制の課題を浮き彫りにしています。デジタル経済の成長という新たな産業が生んだ、利益の集中と税の不公平感という課題に、各国の政府がどう対応していくかが問われています。
日本や欧州の事例を見ても、アップルに対する法的・道義的なプレッシャーは強まる一方です。アップル自身も変革を迫られており、同社の今後の動向は、グーグルやフェイスブック、アマゾン、マイクロソフトなど、他の巨大テック企業の動きにも大きな影響を与えていくでしょう。
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