【2025】オーストラリアにおけるワーキングホリデーの現状
ワーキングホリデーは、二国間の取り決めに基づいて、一定期間の休暇を過ごす活動とその間の滞在費を補うための就労を相互に認めている協定で、多くの場合、18歳から30歳前後までの若者を対象に働きながら外国語の習得や生活体験ができる制度です。日本は、1980年12月にオーストラリアとワーキングホリデー協定を結んだことをはじめとして、現在は30カ国と取り決めがあります。40年弱と長い歴史のあるワーキングホリデーですが、最近ではその在り方が大きく変わってきているようです。今回は、ワーキングホリデーの概要と近年のトレンドを紹介します。
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人気の渡航先オーストラリア
日本は現在、オーストラリアやカナダ、韓国など30カ国とワーキングホリデー協定を結んでいますが、その中でも一番人気の渡航先はオーストラリアです。2024年は9カ月間で1万2000件のワーキングホリデー・ビザが発給されていますが、その半分はオーストラリアで発行されています。理由は、オーストラリアの日本人向けワーキングホリデー・ビザは人数制限がなく、約42.5万円以上の貯金があれば良いといったクリアしやすい条件であること、そしてビザの取得についてもオンラインで簡単に数分で完了するという手軽さにあります。
さらに、オーストラリアは給与水準が高いこと、留学よりもお金をかけずに英語を学べることも魅力です。その7割は女性で、飲食店や農場で働いている人が多いのですが、清掃業や住み込みで育児支援を行う人など、その働き方もさまざまです。
円安で加速したワーキングホリデー利用者
近年、空前の円安が進んでいます。その結果、本来は語学や異文化交流が目的だったワーキングホリデーを、日本の厳しい職場環境から逃れるための出稼ぎとして活用する若者が増えています。例えば、オーストラリアの農場で収穫作業をすると、週に1000豪ドル、ピーク時になると2500豪ドルになります。これは、日本円で月給に換算すると100万円にもなります。若い世代にとってこの金額は日本で普通に働いても稼げる金額ではないため、日本での厳しい生活をリセットするために渡航する人が増えているのです。少し前であれば、カフェで日本人従業員を募集すると、数名しか応募がない状態でしたが、近年は募集広告を地元紙に出せば、数十人の日本人が職を求めて殺到する状況であるといいます。
30年間以上、給与水準が上がらず、生活が困窮している派遣社員やフリーターといった日本の若者が、効率よく安定して稼げる職業を求めてワーキングホリデーに殺到するのも仕方がないのかもしれません。日本において働き手不足が叫ばれている状況を見ると、日本人が働きたいとすら思わない日本は、既に先進国ではなくなっているのかも知れません。
オーストラリアにおける日本人ワーキング・ホリデー滞在者の変化
働き口を求めて若者のワーキングホリデー渡航が増える一方で、元来のキラキラした”ワーホリ”のイメージと逆行して、オーストラリア短期滞在の外国人が不当な待遇を受けて困窮するという状況が報告されています。例えば、現地で仕事を見つけられない日本人が家賃滞納で住居を追い出されてホームレス化し、地元ボランティア団体による無料の食料配布に集まっていたり、女性の場合は生活苦のあまり夜の世界に踏み出すケースもあるようです。
なぜこのような事態になっているのでしょうか。最も大きな要因は、英語の読み書きが堪能ではない日本人が仕事を探している、という点にあります。以前はワーキングホリデーというと、英語を話したい、英語のスキルをアップさせたいという若者が多かったためこのような状況が生まれることはレアケースでした。
しかし、前述のとおり英語を話すことが目的ではなく、ただ高額な給料が欲しいという出稼ぎ感覚で、そこまで英語が堪能ではない日本人の渡航が増えた結果、読み書きが堪能なフィリピン人や韓国人に負けて最低賃金を下回る給与で働かざるを得ない、という状況もあるようです。また、とにかく仕事にありつくために、雇用主や同居人からセクハラを受けた女性もいます。さらに、給与が歩合制で、英語力が低いことから十分に稼げないために、雇用主がビザ延長に必要な証明書類を出さないケースも確認されています。雇用主やマネージャーなどが自国民を優遇して、それ以外の国籍の人を差別することもあるそうです。
一般的に、日本人は大人しくて文句を言わないために、不利な扱いを受けてしまう傾向が強いです。こうした背景には、昨今の円安の影響で日本人観光客が大幅に減ったことがあります。以前は、ホテルや土産店、レストランにとって、日本語を話せる従業員は大切な存在でしたが、最近は円安の影響で、そもそも日本人の観光客がオーストラリアに来ないので、日本語しか話せない日本人は必要なくなって来ているのです。
行政による対策
オーストラリアは農業大国であり、オーストラリア人が敬遠しがちな農作物の収穫作業をワーキングホリデー滞在者などの外国人の若者に依存しています。こうした構造があるにもかかわらず、外国人への差別が横行している背景には、当局による悪徳業者の取締りが不充分であることが指摘されています。これを受けて、オーストラリア政府や連邦議会でもこの問題を取り上げはじめています。
連邦議会ではワーキングホリデーに関する諮問がなされ、各国大使館との連携強化などの対応策が提言されました。また、2021年には日本政府がジュネーブでの国連人権理事会によるレビューにおいて、オーストラリアにおけるワーキングホリデーを含めた短期滞在者の労働環境の改善に向けた取組の強化を求めるなど、オーストラリア政府・連邦議会に対して継続的に待遇改善に向けた働きかけを行いました。
さらに、情報共有及びネットワーキングのために、オーストラリア各地で活動するエージェントを集めたオンライン会議を開催しています。現在は制度の改善を図る努力がなされつつあり、一部で待遇の改善も見られますが、なかなか対策が追いつかずに引き続き問題事案が発生し続けているのが現状です。
ワーキングホリデー渡航前に私たちが心掛けるべきこと
行政の力による課題解決以外に、私たちが心掛けるべきことはどのようなものがあるでしょうか。
まずは、ワーキングホリデーで渡航する前に、正しい情報を収集することが大切です。海外生活が初めてなのにも関わらず、ワーキングホリデーのメリットばかりに目が行き、情報を十分に持たずに渡航した結果、トラブルに巻き込まれる日本人は多くいます。渡航先国の最低賃金をはじめ、仕事に関する情報や住居、その国の法律に関する情報は、大使館や総領事館、エージェント、日本人コミュニティ誌やウェブサイトなどから集められます。自分を守る意味でも、必要最低限の情報を理解した上で、渡航するようにしましょう。
また、相談相手を持つことも重要です。何か問題に直面した際にサポートを提供してくれるオーストラリア側の機関もありますし、日本で言う労働基準監督署にあたる組織に相談をして未払い給与が支払われたケースもあります。オーストラリア人権委員会や労働組合、大使館や総領事館、ワーキングホリデーを支援するエージェントなど、問題が発生したら、しかるべく機関に積極的に相談してサポートを得ることをおすすめします。
おわりに
ワーキングホリデーの楽しい部分だけを見て、十分な情報を持たずに渡航してしまうと、さまざまな問題を引き起こす原因となります。まずは自分で情報を収集して正しい知識を身につけ、また適切な相談相手を確保することで、多くのトラブルを回避できます。ワーキングホリデーを有意義なものとし、日本人の若者がオーストラリアにおいて良い経験を積むために役立つ制度にしていくためにも、十分な予備知識を持った上で渡航することをおすすめします。
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