リタイア後の海外移住│定年後・退職後・老後に人気の移住国ランキングや諸手続きを解説

60代の定年後、またはアーリーリタイア(早期退職)をきっかけに、海外移住や海外ロングステイを検討する方は少なくありません。外務省の統計によると、2025年10月1日時点の海外在留邦人総数は129万8,170人で、海外で暮らす日本人は、長期滞在者・永住者を含め、引き続き高い水準で推移しています。
「リタイア後に海外移住したい」「定年後の海外移住費用を知りたい」「老後の海外移住で年金だけで暮らせるのか不安」と考える方にとって、移住先選び・生活費・医療保険・税金・ビザ・資産運用は必ず確認しておきたいポイントです。
この記事では、老後や早期リタイアの際に海外移住を考えている方のために、移住先を選ぶポイントや人気ランキング、移住の際に必要な手続き、年金受給、税金、リタイアメントビザなどについて解説します。
※この記事で記載する生活費・ビザ要件・税制は、2026年7月時点で確認できる公開情報をもとにした目安です。生活費は、都市・住居のグレード・医療保険・日本食の頻度・為替・インフレによって大きく変わる点にご留意ください。
Contents
リタイア後の海外移住先を選ぶポイント

まずは、海外移住先・ロングステイ先として人気の国・地域をランキング形式で見てみましょう。
ここでは、ロングステイ財団が過去に発表した「ロングステイ希望国・地域2023」を参考情報として紹介します。 なお、同財団は2026年3月31日をもって事業活動を終了し、解散しているため、現在は新しいランキングの更新は行われていません。
| 順位 | 海外ロングステイしたい国・地域 |
|---|---|
| 1位 | マレーシア |
| 2位 | タイ |
| 3位 | フィリピン |
| 4位 | オーストラリア |
| 5位 | インドネシア |
| 6位 | ベトナム |
| 7位 | 台湾 |
| 8位 | ハワイ |
| 9位 | ニュージーランド |
| 10位 | カナダ |
マレーシアは、ロングステイ先として長年高い人気を誇ります。2023年のランキングではフィリピンが3位に入り、ベトナムも6位にランクインしています。
リタイア後の海外移住ランキングを見ると、トップ10のうちマレーシア・タイ・フィリピン・インドネシア・ベトナムの東南アジア5カ国が入っており、生活費の安さ、日本からの距離、温暖な気候などの面で、アジア圏の人気が根強いことが分かります。
この結果をふまえて、老後や早期リタイア後の移住先を選ぶポイントを8つ紹介します。
1. 生活費の安さ
60代の定年後や老後、シニア層、またはアーリーリタイア(早期退職)後は、現役時代よりも収入が減るケースが一般的です。そのため、移住先を選ぶ際は生活費をどの程度抑えられるかが重要になります。
ただし、「東南アジアなら月10万円で裕福に暮らせる」といった以前のイメージは、現在ではやや古くなっています。 円安、家賃上昇、医療費、民間医療保険、日本食材の価格などを考慮すると、生活費は以前より高めに見積もる必要があります。
海外移住の生活費をアジアで比較する場合、マレーシア・タイ・ベトナムは比較的生活費を抑えやすい国といえます。ただし、首都や外国人向けエリアでは住居費が高くなる傾向があります。たとえば、バンコク、クアラルンプール、ホーチミン、ダナンなどは、日本人にも暮らしやすい一方で、外国人向けコンドミニアムや日本食、医療サービスを利用すると生活費は上がります。
目安としては、単身であれば月15万〜30万円程度、夫婦であれば月25万〜45万円程度を想定しておくと安心です。もちろん、地方都市でローカル寄りに暮らすのか、都市部で日本と近い生活水準を維持するのかによって大きく変わります。
なお、ここで紹介する生活費は、家賃・食費・交通費・通信費などを含めた一般的な目安です。医療保険料、一時帰国費用、介護費用、高額医療費、ビザ更新費用などは別途見込んでおく必要があります。
2. ビザの取りやすさ
海外に長期滞在するためには、国ごとのルールに応じたビザが必要です。
長期滞在ビザ、退職者向けビザ、投資家向けビザ、デジタルノマド向けビザなど、国によって制度は大きく異なります。また、近年は各国でビザ要件が頻繁に変更されているため、古い情報をもとに判断するのは危険です。
リタイア後の海外移住では、海外移住向けのリタイアメントビザがあるかどうかも大切な判断材料です。たとえば、マレーシアにはMM2H、タイには50歳以上を対象にした長期滞在ビザやLTRビザの一部カテゴリーがあります。一方、ベトナムのように、短期滞在や電子ビザは利用しやすいものの、退職者専用の長期滞在ビザが明確に整っていない国もあります。
移住を検討する際は、各国大使館・移民局・政府機関の公式情報を必ず確認しましょう。
3. 現地の医療事情
老後の移住を検討する場合、現地の医療事情は必ず確認しておきたいポイントです。
海外では、日本の健康保険制度と同じような仕組みが使えるとは限りません。公立病院で安く治療を受けられる国もありますが、待ち時間が長い、英語や日本語が通じにくい、医療水準に不安があるなどの課題もあります。
そのため、外国人や日本人の長期滞在者は、私立病院やインターナショナルクリニックを利用するケースが多くなります。こうした医療機関は設備や対応が整っている一方で、自由診療となることが多く、治療費が高額になる可能性があります。
海外移住をするシニア層にとって、医療保険は生活費と同じくらい重要です。年齢が上がるほど保険料が高くなったり、既往症が補償対象外になったりすることもあります。日本語対応や質の高い医療を求めるほど費用は高くなりやすいため、民間医療保険への加入、日本に一時帰国して治療を受ける選択肢、緊急時の帰国費用なども含めて考えておくことが重要です。
4. 言葉・英語の通じやすさ
旅行であれば、限られた英語や翻訳アプリでも何とかなるかもしれません。しかし、生活となると話は別です。
役所での手続き、病院での診察、賃貸契約、銀行口座、トラブル対応など、日常生活では細かなコミュニケーションが必要になります。相手の言っていることが分からない、自分の伝えたいことが伝わらない状態が続くと、大きなストレスになることもあります。
とくに東南アジアでは、都市部では英語が通じやすい国や地域もありますが、郊外や地方では現地語が中心となるケースも少なくありません。移住先を選ぶ際は、英語の通じやすさだけでなく、日本語対応の病院・不動産会社・サポート会社があるかどうかも確認しておくと安心です。
5. 気候の過ごしやすさ
温暖な気候は、海外移住の魅力の一つです。寒さが苦手な方にとって、東南アジアやハワイ、オーストラリアなどは魅力的な選択肢になるでしょう。
ただし、近年は世界的に気温上昇や異常気象が問題になっています。一年中温暖といわれる国でも、実際には猛暑、雨季の湿気、大気汚染、洪水、台風などのリスクがあります。
気になる国がある場合は、乾季・雨季・暑季など、時期を変えて試しに滞在してみることをおすすめします。
6. 日本からの距離
海外生活において、有事のときに日本へ帰国しやすいかどうかは大切なポイントです。
東南アジアの国々は、日本から比較的近く、直行便がある都市も多いため、家族の急病や一時帰国の際に安心感があります。ハワイやオーストラリア、カナダなども人気ですが、移動時間や航空券代は東南アジアより大きくなる傾向があります。
セミリタイア後に日本の仕事を続ける場合や、日本の家族・資産管理と関わりがある場合は、時差・直行便の有無・航空券代・一時帰国のしやすさを事前に確認しておきましょう。
7. 治安のよさ
治安も、移住先を選ぶうえで外せないポイントです。
ただし、治安は国全体のランキングだけで判断できるものではありません。同じ国でも、都市・エリア・時間帯によって安全性は大きく変わります。日本と同じ感覚で生活すると、スリ、置き引き、詐欺、交通事故などに巻き込まれる可能性もあります。
移住先を検討する際は、外務省の海外安全ホームページや現地在住者の情報を確認し、住むエリアの治安、夜間の移動手段、医療機関までの距離なども含めて判断することが大切です。
8. 食事との相性
国や地域によって、よく使われる食材や味付けは大きく異なります。
旅行中は楽しく感じる料理でも、長く暮らすとなると「毎日食べられるか」「胃腸に合うか」「塩分や油分が多すぎないか」なども気になってきます。食事が合わない状態が続くと、体調を崩したり、生活満足度が下がったりすることもあります。
日本食レストランや日本の食材を扱うスーパーがある街を選ぶと安心です。ただし、海外では日本の食材は輸入品となるため、日本で買うよりも割高になるケースが一般的です。
退職後やリタイア後におすすめしたい海外移住先3選
ここでは、ロングステイ先として人気が高く、日本人にも比較的なじみやすい国として、マレーシア・タイ・ベトナムを紹介します。
リタイア後の海外移住におすすめの国を選ぶ際は、生活費だけでなく、ビザ、医療、治安、日本人コミュニティ、年金受給後の暮らしやすさまで総合的に見ることが大切です。
1. マレーシア

マレーシアは常夏の国で、マレー系・中国系・インド系、先住民族などが暮らす多民族国家です。宗教もイスラム教、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教などが混在しています。
首都クアラルンプールは、英語が比較的通じやすく、日本人駐在員やリタイアメント層も暮らしています。ショッピングモール、病院、日本食レストランも多く、海外生活が初めての方でも比較的暮らしやすい都市の一つです。
ただし、生活費については、以前のように「月10万円台で十分」と単純に考えるのはやや危険です。住居のグレード、医療保険、日本食の頻度、車の有無によって大きく変わるため、単身で月20万円前後から、夫婦では月30万円台以上を目安にしておくとよいでしょう。
MM2Hは、マレーシアでリタイア後の海外移住を考える方にとって代表的な長期滞在制度です。現在のMM2Hは、Silver・Gold・Platinum・SEZ/SFZなどのカテゴリー制になっています。マレーシア政府の公式情報では、Silverカテゴリーは15万米ドルの定期預金、60万リンギット以上の住宅購入、Goldカテゴリーは50万米ドルの定期預金、100万リンギット以上の住宅購入、Platinumカテゴリーは100万米ドルの定期預金、200万リンギット以上の住宅購入などが要件とされています。
また、Silver・Gold・Platinumの主申請者は25歳以上、SEZ/SFZカテゴリーは21歳以上が対象です。申請は、マレーシア観光芸術文化省の認可を受けたMM2H事業者を通じて行う必要があります。
MM2Hは「マレーシアでリタイア移住をしたい」と考える方に人気の制度ですが、近年要件が大きく変わっています。古いブログ情報だけで判断せず、必ず公式情報を確認しましょう。
2. タイ

「微笑みの国」と呼ばれるタイは、国民の多くが仏教徒で、日本人にとって親しみやすい国の一つです。バンコク、チェンマイ、パタヤ、ホアヒン、プーケットなど、都市によって雰囲気や生活費が大きく異なります。
バンコクには日本食レストラン、日本人向けスーパー、日本語対応の病院などが充実しており、海外生活が初めての方にも暮らしやすい環境があります。一方で、家賃や外食費は上昇しており、都市部で快適に暮らす場合は、以前よりも余裕のある生活費を見込む必要があります。
タイには、50歳以上を対象とした長期滞在向けのビザがあります。たとえばNon-Immigrant O-Aビザは、50歳以上で、就労を目的とせず、タイに1年以内滞在する方向けのビザです。資金要件として、80万バーツ以上の預金、月6万5,000バーツ以上の収入、または預金と収入の合算で80万バーツ以上などが定められています。
また、タイにはLTRビザ(Long-Term Resident Visa)もあります。LTRビザの中には、50歳以上の退職者を対象にした「Wealthy Pensioners」というカテゴリーがあり、リタイア後の長期滞在を検討する方に関係する制度です。
タイBOIの公式情報では、LTRビザのWealthy Pensionersカテゴリーについて、50歳以上で、年8万米ドル以上の年金または安定した受動所得があること、または年4万米ドル以上8万米ドル未満の場合は25万米ドル以上の投資などが求められるとされています。
タイのLTRビザは、リタイア後の長期滞在を検討する方にとって魅力的な選択肢の一つです。ただし、一般的なリタイアメントビザよりも条件が高めです。資産・年金収入・医療保険などの要件を満たせるか、事前に確認しておきましょう。
3. ベトナム

ベトナムは、近年、長期滞在先として注目度が高まっている国です。経済発展にともない、日本からのビジネス客や観光客も増えています。
ホーチミン、ハノイ、ダナンなどの都市では、カフェ、レストラン、コンドミニアム、ショッピングモールなどが増え、都市部を中心に生活環境が整ってきています。特にホーチミンのフーミーフン地区や、ダナンのミーケー周辺などは、外国人にも暮らしやすいエリアとして知られています。
ただし、生活費については、以前のように「月4万〜5万円」「10万円で裕福に暮らせる」と考えるのは現実的ではありません。ベトナムは物価が比較的安い国ではあるものの、外国人向けの住居、民間医療、海外旅行保険、日本食、配車アプリ、カフェ利用などを含めると、生活費は上がります。
目安として、単身でも月15万〜25万円以上を見込んでおくと安心です。夫婦で快適な住居に住み、医療保険や一時帰国費用も考える場合は、さらに余裕を持った計画が必要です。
ビザについては、ベトナムは日本国籍者に対して45日以内のビザ免除を認めており、電子ビザでは90日までの滞在・複数回入国が可能です。 ただし、退職者専用の長期滞在ビザを前提にしにくいため、長期的に住む場合はビザ更新や滞在資格の計画が課題になります。
食事面では、ベトナム料理は比較的あっさりした料理も多く、米や麺を中心とした食文化のため、日本人になじみやすい面があります。一方で、地域によって味付けや衛生環境は異なるため、実際に数週間から数カ月滞在して相性を確認することをおすすめします。
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老後の海外移住で年金は受給できる?

老後の海外移住を考えるうえで、多くの方が気になるのが「海外移住後も日本の年金を受給できるのか」という点です。
結論からいうと、海外に住んでいても、日本の公的年金を受け取ることは可能です。ただし、海外で年金を受け取る場合は、手続きが必要になります。
日本年金機構によると、年金を受けている方が海外に居住して年金を受け取る場合、「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」の提出が必要です。海外の金融機関を年金の振込先として指定する場合は、口座証明、小切手帳の写し、通帳の写しなどの添付書類も必要になります。
海外移住後の年金受給では、受取口座、為替、送金手数料、税金の扱いを事前に確認しておきましょう。日本の銀行口座で受け取るのか、海外の銀行口座で受け取るのかによって、使いやすさや手数料が変わります。
また、受けている年金が老齢年金で、日本と滞在国が年金の受け取りに関する租税条約を締結している場合、手続きをすることで税法上非居住者が納めるべき所得税の免除を受けられる場合があります。 ただし、国によって取り扱いが異なるため、税理士や年金事務所に確認することをおすすめします。
リタイア後の海外移住で使えるリタイアメントビザとは?

海外移住でリタイアメントビザを使えるかどうかは、移住先を選ぶうえで重要なポイントです。
リタイアメントビザとは、一定の年齢以上の退職者や、十分な年金・資産・収入がある人を対象に、長期滞在を認めるビザのことです。国によって名称や条件は異なり、必ずしも「リタイアメントビザ」という名前で呼ばれているわけではありません。
たとえば、タイのNon-Immigrant O-Aビザは、50歳以上で就労を目的としない人向けの長期滞在ビザです。マレーシアのMM2Hも、リタイア層に人気の長期滞在制度として知られています。タイのLTRビザのWealthy Pensionersカテゴリーも、資産や年金収入がある退職者に関係する制度です。
一方で、ベトナムのように、リタイアメントビザとして使いやすい制度が明確に整っていない国もあります。その場合、電子ビザや短期滞在を組み合わせる形になりやすく、長期移住というよりはロングステイに近い形になることもあります。
リタイア後の海外移住を成功させるには、生活費だけでなく、ビザの更新しやすさ、必要資産、医療保険、就労可否、家族帯同の可否まで確認することが大切です。
リタイア後の海外移住で必要な手続き・準備

ここからは、海外に移住する場合にしておくべき手続きと準備を解説します。
定年後の海外移住では、手続きの流れを事前に整理しておくことが重要です。勢いで渡航してしまうと、住民票、年金、保険、税金、銀行口座、ビザなどで後から困る可能性があります。
定年後の海外移住に必要な手続きの流れ
定年後の海外移住手続きの流れは、以下のように考えると整理しやすくなります。
まず、移住候補国を決める前に、生活費・医療・ビザ・治安・気候を比較します。次に、1〜3カ月程度のお試し滞在を行い、実際の生活に合うか確認します。その後、ビザ要件を確認し、資金証明や保険、健康診断など必要書類を準備します。
日本側では、住民票、年金、健康保険、税金、銀行口座、クレジットカード、証券口座、不動産、郵便物の転送などを整理します。1年以上海外に滞在する場合は、海外転出届の提出も検討が必要です。海外に3カ月以上滞在する場合は、在留届の提出も必要です。
外務省は、海外に住所または一時滞在先を定めて3カ月以上滞在する日本人に対し、在留届の提出を義務付けています。
1. ビザ
外国に長期滞在する場合、一般的には観光目的の短期滞在ではなく、目的に合ったビザを取得する必要があります。有効期限や取得要件は国によって異なり、制度変更も頻繁にあります。
マレーシアのMM2Hでは、Silverカテゴリーで15万米ドルの定期預金、Goldカテゴリーで50万米ドル、Platinumカテゴリーで100万米ドルの定期預金が必要です。また、カテゴリーに応じて住宅購入要件もあります。
タイのNon-Immigrant O-Aビザでは、50歳以上であることや、80万バーツ以上の預金、月6万5,000バーツ以上の収入などの資金要件が定められています。
ベトナムでは、日本国籍者の45日以内のビザ免除や、90日までの電子ビザが利用できますが、退職者向けの長期滞在制度はマレーシアやタイほど分かりやすく整っているわけではありません。
ビザ制度は変更されることがあるため、移住を決める前に、各国の大使館・移民局・公式観光機関などで最新情報を確認しましょう。
2. 保険
移住先・ロングステイ先の医療事情や医療保険制度は、事前に必ず調べておきましょう。
海外では、日本の健康保険がそのまま使えるわけではありません。日本で海外旅行保険に加入して渡航する方法もありますが、長期滞在や高齢者の場合、加入期間や補償内容、既往症の扱いに制限があることもあります。
また、現地の民間保険や国際医療保険に加入する選択肢もあります。質の高い医療を受けるには相応の費用がかかるため、医療費が想定外の出費にならないよう、保険と貯蓄の両面で備えておくことが重要です。
特にシニアの海外移住では、医療保険に加入できる年齢、保険料、更新条件、既往症の扱い、緊急移送費用の有無を確認しておきましょう。
3. マネープラン
東南アジアは日本と比べて生活費を抑えやすい国もありますが、安いからといって無計画に暮らしていると、思いのほかお金がかかります。
治安のよいエリアの快適な物件に住む場合、住居費は高くなります。さらに、日本食、医療保険、一時帰国費用、趣味、旅行、現地での交際費なども考慮する必要があります。
また、日本に住民票を残す場合、国民健康保険料や住民税、国民年金などの支払いが発生する可能性があります。不動産を所有している場合は、固定資産税も引き続き発生します。
そのため、日本の銀行口座にどれだけ資金を残しておくのか、どのクレジットカードを使うのか、海外送金をどうするのか、日本円と外貨の資産配分をどうするのかといったマネープランが重要になります。
リタイア後の海外移住では、資産運用も重要なテーマです。年金だけに頼るのではなく、生活費、医療費、為替変動、インフレ、一時帰国費用を見込んだうえで、資産をどのように長持ちさせるかを考える必要があります。
特に円安が進むと、同じ年金額でも海外で使える金額が目減りします。リタイア後の海外移住における資産運用では、日本円だけでなく外貨建て資産や海外で使いやすい資金管理方法も検討するとよいでしょう。
4. 税金
税金は、どの国に住んでいるか、どの国で所得が発生しているかによって納税義務が変わります。
海外移住後に非居住者となった場合の税金は、居住者のときとは扱いが異なります。国税庁によると、非居住者または外国法人に対して、国内において源泉徴収の対象となる国内源泉所得を支払う者は、その支払の際、所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、納付する義務があります。
つまり、海外に住んでいるからといって、日本の税金が完全になくなるわけではありません。日本国内の不動産収入、年金、配当、退職金などがある場合、日本で課税対象になる可能性があります。一方で、移住先の国でも所得があれば、現地で課税される可能性があります。
日本と租税条約を結んでいる国の場合、二重課税を調整する仕組みが用意されていることもありますが、単純に「二重に払った分が必ず戻る」とは限りません。
海外移住と非居住者の税金は、住民票の有無だけで判断されるものではなく、生活の本拠、滞在日数、家族や資産の状況なども関係します。税金については、日本側と移住先側の両方に詳しい税理士や専門家に相談することをおすすめします。
5. 海外移住で出国税はかかる?
海外移住を検討する際は、「出国税」にも注意が必要です。
一般的に「出国税」と呼ばれるものには、航空券などに上乗せされる国際観光旅客税を指す場合もありますが、海外移住や富裕層の資産移転で特に注意したいのは、国外転出時課税制度です。
国税庁によると、国外転出時課税制度では、国外転出をする時点で1億円以上の対象資産を所有等している一定の居住者について、国外転出の時に対象資産の譲渡等があったものとみなし、対象資産の含み益に対して所得税が課税されます。
そのため、海外移住時に株式・投資信託・未決済信用取引・デリバティブなどを多く保有している方は、出国前に税理士へ相談しておくことが重要です。
特にリタイア後の海外移住では、老後資金として証券口座に多額の資産を持っているケースもあります。移住後の資産運用だけでなく、移住前の税務整理も忘れずに行いましょう。
6. 在留届・海外転出届など
海外に長期滞在する場合は、日本側の手続きも忘れてはいけません。
海外に3カ月以上滞在する場合は、外務省の在留届を提出する必要があります。在留届を出しておくことで、現地の安全情報や緊急時の連絡を受け取りやすくなります。
また、1年以上海外に滞在する予定がある場合は、原則として市区町村で海外転出届を提出し、住民票を抜く手続きが必要になるのが一般的です。住民票を残すかどうかによって、住民税、国民健康保険、国民年金などの扱いが変わるため、出国前に自治体で確認しておきましょう。
老後の海外移住で失敗しないための注意点

老後の海外移住で失敗しやすいケースには、いくつか共通点があります。
まず多いのが、生活費を安く見積もりすぎるケースです。旅行中の物価感覚だけで「この国なら安く暮らせる」と判断してしまうと、実際に住んだあとに家賃、医療保険、日本食、交通費、一時帰国費用などが想像以上にかかることがあります。
次に、医療面の準備不足です。若い頃は問題なく暮らせても、年齢を重ねると病院に行く機会が増えます。日本語対応の病院があるか、持病に対応できる医療機関があるか、緊急時にどこへ行くかは事前に確認しておきましょう。
また、ビザの更新条件を軽く見てしまうことも失敗の原因です。移住後に制度が変更され、必要資産や収入条件が上がる可能性もあります。特に長期滞在ビザやリタイアメントビザは、制度変更の影響を受けやすい分野です。
さらに、人間関係や孤独感も見落とせません。海外での生活は自由で楽しい一方、日本語で気軽に話せる相手が少ないと、精神的に負担を感じることもあります。
老後の海外移住で失敗しないためには、いきなり完全移住をするのではなく、まずは1〜3カ月のお試し滞在を行い、生活費・医療・気候・食事・人間関係を確認することが大切です。
リタイア後の海外移住は、費用・年金・ビザ・医療保険まで計画的に準備しよう

この記事では、リタイア後や退職後に海外移住する際の移住先・ロングステイ先の選び方や、必要な準備について解説しました。
一昔前は、東南アジア圏であれば「日本の年金だけでかなり余裕のある生活ができる」と言われることもありました。しかし現在は、現地のインフレ、円安、医療費、民間保険料、家賃上昇などを考えると、年金だけに頼るのではなく、年金+αの収入や資産運用を考えておくことが重要です。
また、移住先・ロングステイ先で何をしたいのかによっても生活コストは変わります。たとえば、毎週ゴルフをしたい、マリンスポーツを楽しみたい、近隣諸国へ旅行したい、日本食を頻繁に食べたい、医療や住居の安心感を重視したい場合は、その分だけ必要な生活費も高くなります。
せっかく海外移住をするのであれば、現地でやりたいことを楽しめるだけの資金計画を立てておくことが大切です。
リタイア後の海外移住におすすめの国は、生活費だけで決まるものではありません。ランキング上位の国であっても、ビザ、医療保険、年金受給、税金、出国税、資産運用、治安、家族との距離などを総合的に見て、自分に合うかどうかを判断する必要があります。
定年後の理想の生活を送るためには、さまざまな準備が必要です。特に、保険・生活費・税金・資産運用・為替リスクなど、お金まわりのプランニングは早めに行っておきましょう。
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