目次
はじめに
1.海外からの一時帰国前の出産準備
2.日本での制度や手続き
3.滞在先への帰国時に、留意すべきこと
まとめ
近年、グローバル化が進み海外赴任を命じられる会社員も多くなっています。海外赴任する人材は、年々低年齢化し、出産年齢層の夫婦が赴任することも珍しくなくなっています。中には、夫や本人の海外勤務によって、滞在国で妊娠・出産する方も増えています。
日本では、親元に身を寄せて出産する文化が根付いており、妊娠中の不安を抱えたまま海外に滞在している人も、滞在国の医療水準や夫のサポート状態、言葉の問題など、様々な理由で日本へ一時帰国して里帰り出産をする人がいます。
ここでは、日本に一時帰国して出産する方へ向けて、妊娠中に利用できる制度や手続き、帰国前後の準備や事前確認などについてご紹介します。スケジュールや費用面で心配な方もぜひご一読ください。
海外からの一時帰国前の出産準備・出産手続き
海外赴任からの一時帰国の前の準備として、日本の産院の分娩予約や妊婦健診の予約が必要です。詳しく説明します。
①産婦人科予約・分娩予約
里帰り目的の帰国時には、すでに分娩予約を取っていることが大切です。
里帰り出産を決める時期は、早いほうが良いでしょう。エリアによっては、妊娠初期ー中期で分娩予約を締め切る施設があるためです。
東京にはたくさんの医療施設があり、分娩できる病院もたくさんありますが、自分の希望する施設での分娩予約が取れるかどうかは別問題です。特に、無痛分娩を希望する人、ハイリスク妊娠の方は早めの対応が求められます。
里帰り出産を決めたら、まずは希望する産院をピックアップし、妊娠何週までに帰国する必要があるかをホームページや電話で確認しておきましょう。
里帰り出産では、日本の医師の指示がメインです。可能な限り指示通りに帰国することをおすすめします。
また、日本への一時帰国の前に妊婦健診の予約も取っておきましょう。妊婦健診の間隔は、世界的にほぼ日本と同じです。
②紹介状
海外では、転院のときに紹介状を書くのが一般的でない国もあります。理由は、検査結果や診察の結果、エコー写真などは毎回患者さんに渡していることが多いからです。カルテのようにとじていくため、それを見ると病院のカルテと同じ情報が得られるようになっていることも多いです。
しかし、日本では、転院のときに経過を報告する紹介状が必要なことが多いため、紹介状を書いてもらえるかどうか確認しておきましょう。滞在国の言葉が、日本人にとって理解が難しい言語の場合は、英語で書いてもらうようにすると良いでしょう。
③予防接種確認(滞在国)
住民票を各市区町村に移して出産すると、赤ちゃんの定期予防接種が無料で受けられます。任意予防接種は料金がかかりますが、日本で受けられます。
定期予防接種:BCG・B型肝炎・ヒブ・小児肺炎球菌・4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)・麻疹・風疹・みずぼうそう・日本脳炎
どのスケジュールで滞在国に戻るかにもよりますが、これらの予防接種が滞在国でも難なく受けられるかどうかを確認しておきましょう。生後2ヶ月頃から予防接種が始まります。
また、ほとんどの国で日本で受けた予防接種の続きをすることが可能ですが、念の為確認しておくと安心です。
日本脳炎は3歳頃から接種されるものですが、日本やアジア特有であるため、欧米で受けるのは簡単ではない可能性があります。アメリカでは、結核は稀な病気であるため、BCGはどこでも受けられない可能性があるので注意が必要です。
英文での予防接種記録が必要な場合がありますので、予め予防接種を受ける予定のクリニックに確認しておくと安心です。
里帰り出産のための日本一時帰国での制度や手続き
里帰り出産で日本に一時帰国したときに利用できる制度や、里帰りの出産手続きについてお話します。
【制度】
①妊婦健診助成制度
妊婦健診を日本で受ける場合は、住民票を各市区町村に移して母子健康手帳を申請すると、母子健康手帳に妊婦健診の補助券がついています。市区町村によって、助成額や回数は様々です。
母子手帳をもらっていないとこの券は入手できません。
②出産育児一時金
出産育児一時金は、被保険者やその扶養者が出産したときに、加入している社会保険や国民健康保険に申請すると、出産一時金や育児一時金が支給される制度です。
これは、健康保険に加入していないと申請できません。
②出産育児一時金の直接支払い制度
出産前に、被保険者と医療機関で出産一時金や育児一時金の支給申請、受け取りに関わる契約を結んで、一時金が直接医療機関に支払われる制度です。窓口での自己負担額が減るというメリットがあります。
【手続き】
これからご紹介する手続きのうち、②④⑦は健康保険に加入している場合のみ使用や一時金の受け取りが可能です。
①住民票を分娩する市区町村に入れる
住民票を分娩する市区町村に移すメリットとデメリットについてお話します。
海外から一時帰国で里帰り分娩をされる多くの方は、住民票を日本に移しています。
住民票を移すことによるメリット
・国民健康保険や国民年金に加入できる。
・国民年金の受領額が増える。
・ただし、住民票を移さなくても任意加入に変わるだけなので、国民年金の加入は続けられる。
住民票を移すことによるデメリット
・住民票を日本に移すことによって、健康保険や国民年金に加入すると、短期間でも費用の支払いが生じる。
・収入に応じて住民税がかかる。
②日本で各種健康保険が使用できるように手続きをする
駐在で海外勤務している家庭の場合は、会社の意向によりますが、必ず健康保険を使用できるようにしてもらうか、かかった医療費用を補助してもらうようにしましょう。
一般的に出産では健康保険が適用されませんが、妊娠や出産は何が起こるかわかりません。妊娠高血圧症候群や切迫早産などの治療が必要なケースでは、健康保険が適用になります。
健康保険に加入して出産後に申請すると出産育児一時金が支給されます。
③母子健康手帳をもらう
母子手帳は日本特有のもので、海外では使用されていないことがあります。また、妊婦健診の補助券は母子手帳に付属されているため、母子健康手帳がないと補助は受けられません。母子健康手帳は、住民票がある市区町村で窓口に行くと発行されます。その際に、医師の診断書などは不要なことが多いものですが、予め確認できるようなら、診断書について必要かどうか聞いておきましょう。
④産院で出産育児一時金の直接支払いの手続き
出産前に、被保険者と医療機関で出産育児一時金の支給申請、受け取りに関わる契約を結んで、出産育児一時金が直接医療機関に支払われるようにします。差額は、退院のときに自分で支払います。窓口での自己負担額が軽減できるメリットがあります。
⑤出生届
出産後14日以内に、市区町村に出生届を出す必要があります。
産院から書類をもらえますので、名前を決めて提出します。
⑥赤ちゃんの各種健康保険の加入
日本滞在中に赤ちゃんの健康保険の加入手続きをします。
⑦乳幼児医療証の取得
乳幼児が受診した場合の医療費のうち、保険診療分の自己負担分を助成する制度です。市区町村によって、助成する年齢の範囲などの助成内容が違います。各種健康保険に加入していることが条件です。
⑧赤ちゃんのパスポート取得する
再び滞在国に戻る場合は、赤ちゃんのパスポートが必要です。申請には赤ちゃんを連れて行かなくてもいいのですが、パスポートを受け取るときには、赤ちゃんの顔を確認するため赤ちゃんと一緒に行く必要があります。申請のときには赤ちゃんの写真も必要です。
滞在先の国へ帰るとき、帰ってから気を付けること
滞在国へ帰る前に気をつけておくことを紹介します。
①赤ちゃんの保険
滞在国での赤ちゃんの健康保険の準備をしておく必要があります。会社の駐在員の場合は、会社で加入してくれることが多いものですが、念の為確認しておきましょう。また、いつ戻るかによって保険の適用開始時期などを確認する必要があります。
赤ちゃんは半年くらいまで母乳と胎盤から免疫をもらっていますが、生後半年を過ぎると免疫力が下がってきて、病気になりやすいと言われています。
②予防接種の引き継ぎ
滞在国で、これまで受けた赤ちゃんの予防接種について証明する必要がある場合、いつ戻るかを考慮しながら医師に依頼して準備しておく必要があります。
ただし、母子健康手帳の予防接種記録欄には、予防接種名の日本語と英語表記があるため、それで対応できることもあります。滞在国で確認しておくと良いでしょう。
抜けることなく、予防接種が受けられるようにどの予防接種を何回受けたのか、母子健康手帳の記載を見て把握しておきましょう。
まとめ
日本での制度は自分で申請しなければ受けられないものが多くあります。新しい家族を迎えるための参考にしてください