お金の歴史

【対談企画】老齢年金改正見送りの裏側で、遺族厚生年金が改正に!あらためて自己年金づくりの必要性を考えよう

2024年7月30日、厚生労働省は遺族厚生年金の見直し案を発表しました。この見直しは、現役世代で子どもがいない人に対する遺族厚生年金の受給資格や給付額を変更する内容で、より多くの遺族に生活の支えとなるべく制度の改善を目指しています。一方で、見直し案が可決されると、一部の遺族にとっては受け取れる年金額が減少するリスクがあります。  年金制度の見直しについては保険料払込期間を延長する案も出されるなど、将来的に国民の老後や遺族となった後のセーフティーネットが揺るがされる可能性も考えられます。  そこで、社会保険制度やファイナンシャルプランニングに詳しいシニアコンサルタントの才田氏に、年金制度改正ニュースやその裏側の動き含め、各自で備えたい対策法についてお話をお伺いしました。 INSURANCE 110 DIRECTOR/シニアコンサルタント才田 弘一郎 日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。 〜対談スタート〜 遺族厚生年金の見直し案とは 高林:「最近、遺族厚生年金の見直しについてのニュースが流れましたが、これはどのよう見直しでしょうか?」  才田:「年金というと、多くの方は自分の老後にもらう年金つまり『老齢年金』をイメージされると思いますが、日本の年金制度は優れていて、受給のための各種条件はありますが保障の機能もあります。今回見直し案が出された『遺族厚生年金』は、その保障の役割をもつ年金です。現行制度の遺族厚生年金は、実は男女間の不平等があり、その不平等を是正するという理由で見直しが検討されています。  遺族厚生年金についての詳細は弊社のブログ記事等で確認していただきたいですが、簡単に言うと、厚生年金の加入者が死亡したときに遺族に対する保障をするというものです。 そのなかで、現行制度では夫を亡くした妻が優遇される内容となっているのですが、今回はそこにメスが入りました。現行では夫が死亡したときの自分(妻)の年齢が30歳前後で保障期間は変わりますが、30歳以上であれば一生涯にわたって遺族厚生年金を受け取ることができます。一方で、男女が逆だった場合、つまり妻が死亡し夫が遺族となった場合は夫が55歳未満であれば遺族厚生年金は支給されません。55歳以上であれば支給はされますが、期間は短くなります。今回出された改正案は、この男女間の差を是正しようという内容です。」  高林:「才田さんは今回の改正案についてどのようにお考えですか?」  才田:「これまでの日本社会においてはこのような(男女差のある)制度になっているのも理解できなくはないですが、昨今の男女平等を目指す社会の雰囲気においては遺族年金にもその流れに即して見直すというのはわかる気がします。  ただそれよりも、年金加入期間が40年から45年に5年間支払期間が延長されるなど、『老齢年金』において改悪されると言われていた内容が、今回は見送られたことの方が気になります。年金財政を見直すために5年ごとに開催される会議があるのですが、今回の見直し会議で年金額や年金加入期間の見直しを見送るということになったのです。わかりやすくいうと、国民の負担が増えるかもしれないという不安がなくなったため、国民側にとっては良い話です。 しかし、これはあくまで私見ですが、選挙戦が続く今年は国民世論が悪くならない様に年金負担の先送り調整をしたのではないかと考えています。つまり、将来どこかで再度年金財政の調整を図る可能性があるのではないかと思いますので楽観視しない様にしてください。」 遺族厚生年金の改正で最も影響を受ける人は? 高林:「遺族厚生年金が見直しされるとどのような影響が考えられますか?」  才田:「今回の見直し案は、男女関係なく遺族厚生年金の支給期間を5年間にするというものですので、一番影響を受けるのは、(自分が)30歳以上で夫を亡くした妻です。改正前(現行制度)では一生涯遺族厚生年金を受け取れますが、改正後は(経過措置は設けられると思いますが)5年間しか受給できなくなります。  逆に夫のほうは、これまで自分が55歳未満で妻を亡くした場合は遺族厚生年金を受け取れませんでしたが、5年分の年金を受け取れるようになります。」 年金保険料支払い5年延長案とは? 年金保険料支払い延長は見送りに 高林:「先ほど、年金保険料支払い5年延長案について少し触れられましたが、これについて教えていただけますか?」  才田:「これは年金の加入期間を5年間延長するというもので、年金制度の財政安定化が目的です。財政安定化のためには年金保険料を長く払ってもらうか、増額するかということになります。増額は、昨今の経済状況で現役世代の人への負荷をこれ以上大きくするのは難しい部分があります。そのため、現在の支払い期間をさらに延ばし、年金開始年齢を先延ばしして、将来的な年金給付を支えようという措置です。  しかし、過去には定年退職年齢が55歳、60歳、65歳退職と働く期間が延びてきて、これからも70歳まで働けるような仕組み作りが企業に求められており、さらに年金加入期間に手を加えることになると、年金の歳入不足問題が顕在化してしまいます。  今でも年金をもらいながら働くと、もらえる年金が減額される『在職老齢年金制度』など、年金財政を維持するためのさまざまな対策がされています。年金期間延長案は多くの国民にとって追加の経済的負担となるため、慎重な議論が求められています。今回の発表では、この延長案の実施が先送りされたものの、年金制度の持続可能性を確保するためのバランスを模索していますので、将来的には再び議題に上がる可能性が高いとされています。あくまで私の個人的な考えですが。」 老後に働くと年金を受け取れない? 高林:「年金を受給しながら稼ぎすぎると年金がもらえなくなるという話がありましたが、それについて教えていただけますか。」  才田:「そもそも年金が発足したときには、老後は年金でゆっくり過ごす前提がありました。もちろん働きたい人は働いても良いですが、自分が払った保険料分は権利として老後の収入額に関係なく年金を受給できていました。  しかし年月が経過するとともに、そのようなシステムを続けると年金財政に問題が生じるようになりました。それで、年金の他に収入がある人は年金額を少し下げる在職老齢年金制度ができました。現在は年金と給料を合わせて月50万円の収入がある人は年金がもらえません。例えば、老後も会社役員などに就任していて報酬が50万円以上であれば、その間は年金がもらえません。老後にもしっかり働きたいという人もいますが、その場合は、年金をもらわなくても良いと割り切った選択肢が求められると思います。これも行政の立場からの年金財政を維持する措置の一つだと考えています。」 今後、我々はどうするべきか 意識して年金の動きを見つつ、自己年金づくりをする 高林:「お話をお聞きしていて、我々若い世代にとっては明るい話題ではないように思いました。年金制度の不安定さを踏まえて、我々は自分の資産を守っていくためにどのように対策を講じるべきでしょうか。」  才田:「まず、年金制度についての政治的な動きに関心を持つことですね。そのうえで意見を出すことが大切だと思います。  そもそも年金は人口ピラミッドを前提に成り立つ仕組みですが、今の日本はそのピラミッドが崩れてきています。長生きは生活が良くなった結果ですし、いいことなのですが、少子化は問題があります。少子化の問題が解決しない限り、年金保険料を支払う期間が延びるか、支払う額が増えるか、もしくは受給できる年金額が少なくなるかのどれかになってしまいます。  年金制度の悪化を防ぐためには本来の人口ピラミッドの形、綺麗な三角形に戻す必要がありますが、それは超長期目線でみなければなりません。つまり、現在現役世代の人たちは国の制度に頼り切るのはいけないけれども、『どうせ年金を受け取れないから払わない』というのもいけません。自分の意見も出せなくなりますから。  年金保険料は支払いつつも、本当の将来の年金は自分たちで準備していかないといけないと思います。今回のテーマである遺族年金の見直しや年金加入期間の延長など、ちょっとしたニュースも意識して見ることも大事ですし、並行してスキルアップしたり、早いうちから資産運用に取り組んだりすることが大事です。とくに海外にいらっしゃる方は、海外の仕組みを使った自己年金作りを始めておきたいですね。 資産運用は先進諸国のあるべき姿 高林:「日本以外の国々では、積極的に自己年金を作っていく人が多いのでしょうか。」  才田:「G7と言われる先進諸国では、個人の投資という発想は数十年も前から始まっています。日本でも『貯蓄から投資へ』という流れになりつつありますが、他諸国に比べると遅いですよね。  そもそも、日本では学校でお金の教育をしていないですよね。どんな仕組みで世の中が回るかを理解しないまま社会に出る人が多いです。他の国は資産運用で成り立つ土台がずっとあるなかで年金制度が作られていますので、資産運用に長けている人も多いです。ただ、そうは言っても資産運用が上手くできない人もいて、富裕層とそうでない人との二極化が進んでいます。  日本はこれまで国の制度がしっかりしていた分、総中流社会といわれ、みんなどの世代も安定的に上昇傾向にありました。それが2000年初頭の政治改革によって、個人が投資に取り組むことが推奨されるようになりました。投資や運用が得意な人には良い社会になってきていると思いますが、今までの中流階級を保ちたい人にとっては投資で資産を増やせる人との差が開く可能性があると思います。ただ、それが資本主義にもとづく先進国の姿だと思いますし、国が中流社会を守るのではないということに気づいて自分達で一歩動き出すことが大事だと思います。」 自己年金づくりのやりかた 日本国内に住んでいる人の自己年金づくり 高林:「では、日本国内にいる人はどのようにして資産を作っていけば良いのでしょうか。」  才田:「日本国内にいる人は、『必要だから始める』というのではなく、『テレビなどで言い出したから始める』という人が多いと感じています、それではあまり上手くいきません。ですので、投資より先に自分のスキルを磨くことが大事だと思います。  スキルといっても世代によって変わるとは思います。例えば、長く働けるように健康に気をつけたり、ITスキルを身に着けたり、より年収の高い外資系企業で働くなどですね。とにかく、長く働き、稼ぎ続けるための活動スキルを蓄えるのが最優先だと思います。  そのうえで、例えば一般の会社員であれば新NISAやiDeCoを上手く活用して資産を作っていくのが良いと思います。ただ、新NISAには注意点もあります。今年2024年8月はじめに株式相場が急落して日経平均株価が4~5,000円下がりましたが、新NISAの場合は損失が出た場合に他の利益と相殺できません。こういった注意点も踏まえながら、(相場の動きに左右されず)一喜一憂せずに長く積立をし続けるのが良いと思います。」 海外に住んでいる人の自己年金づくり 高林:「ありがとうございます。では、海外に住んでいる人はどのようなことができそうでしょうか。」 才田:「海外に住んでいる人は、海外での仕組みを作れるのは大きなメリットです。ただ、最終的にどこに住むのかによって選択が変わります。海外にずっと住み続けるのであれば、不動産を含めて今住んでいる地で資産を所有するのが良いでしょう。  一時的な海外滞在で最終的には日本に戻るという人であれば、米国、シンガポール、香港など金融センターといわれている国の金融商品や制度を使うのが良いと思います。税制的なメリットを考えると保険を使って貯蓄を兼ねた資産防衛をするのもいいですね。  実は、私のところでも不動産投資に関するご相談を多くいただくのですが、海外で不動産を所有してもしっかり管理できたり、収益を得られたりする人は案外少ないようです。海外不動産は多くの収益、売買益を得られそうという感覚で購入する人も多いですが、日本の方にはあまり合っていないと感じることもあります。 …

【対談企画】新紙幣が発行されてお金の価値がなくなる?資産管理で考えるべきこと

2024年7月3日に日本で3種の新紙幣が発行されました。一万円、五千円、千円紙幣は20年ぶりの改刷になります。新紙幣では「すかし」や「3Dホログラム」など、最新技術による偽装しにくい仕掛けやデザイン、肖像が話題になっています。  一方で、新紙幣発行に便乗した詐欺への懸念や、キャッシュレス化を推進しているなかで新紙幣の発行する政府の意図などネガティブな話題も巷で賑わっています。なかには個人の資産管理に関わる懸念事項もあるようです。  そこで、資産管理や資産運用に詳しいシニアコンサルタントの才田氏に新紙幣発行に関するインタビューを行いました。今回は新紙幣発行とキャッシュレス化の関係や経済全体、消費者への影響について才田氏のご意見をお伺いするとともに、便乗詐欺に遭わないための対策およびこれからの資産管理で大切なポイントについても教えていただきました。 INSURANCE 110 DIRECTOR/シニアコンサルタント才田 弘一郎 日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。 〜対談スタート〜 新紙幣発行の背景 通常より2年早く発表 高林:「2024年7月に新紙幣が発行されましたが、その背景についてご存じのことを教えていただきたいです。」  才田:「新紙幣発行はいまから5年前の2019年に発表されています。なぜ今回話題になっているのか私も調べてみたのですが、通常は紙幣を替える3年前に公表されるというのが一般的であるようです。しかし今回は5年前に発表され、通常より2年長い準備期間がありました。  政府は新紙幣発行の目的として、(発表当時の)紙幣が使われている期間が長いということもあり、偽造防止などセキュリティ面での強化やユニバーサルデザインの向上を挙げています。実際、新紙幣には3Dホログラムやマイクロ文字など新技術が導入されており、技術革新によるセキュリティ向上を目的とされていることがわかります。」  高林:「3年前ではなく、5年前に発表されたというのは何か違う目的などがあったのでしょうか?」  才田:「あくまで当時の話題ですが、従前より準備期間が長いということで、デノミネーション(通貨単位変更)によりお金の価値を変えようとしている、紙幣を発行することで旧紙幣が使えなくなるなどといったことが懸念されていたと記憶しています。  (発表が5年前であった)本当の理由は表に出てくることはないと思いますが、従来と比べて時間差があることには、何らかの意味があるのではないかという気はしています。」 キャッシュレス化の促進 高林:「新紙幣発行に伴いキャッシュレス化が進むのではないかと言われています。どのように促進されていくと才田さんは思われますか?」  才田:「キャッシュレス化というと、『自分が何にお金を使ったか把握しやすく便利だ』などと(生活者にとっての利点が)よく言われますが、実はお金の発行コスト削減に寄与する、つまり発行者側にとってのメリットが大きいと思います。紙幣や硬貨の発行コストがいくらかかっているかというと、1万円札1枚に約20円、1円硬貨1枚に1.8円と言われています。ですので、キャッシュレス化が進むとこのコストが大幅に削減されます。」  高林:「キャッシュレス化は店舗(事業者)や消費者にとってのメリットもあると思いますが、新紙幣発行とキャッシュレス化の進展にはどのような関係がありますか?」  才田:「これは私の憶測的な部分もありますが……。まず、事業者側にすると、紙幣が新しく変わることで自動販売機や両替機、偽造紙幣を鑑別する機械など、さまざまなインフラを整備する必要が生じます。それにはコストが発生しますが、例えばコストを負担するにしてもインフラ整備対応のコストとキャッシュレスシステム導入のコストではどちらが経済的か、新紙幣発行を機に比較検討するようになります。その際、キャッシュレス決済を選ぶ事業者もいるのではないかと思います。つまり、新紙幣を発行することでキャッシュレス化が普及しやすい状況になっていくということでしょう。」  高林:「日本政府はキャッシュレス化を進めたいのでしょうか?それとも現金社会を維持したいのでしょうか?」  才田:「私は日本政府や日本銀行の者ではないので本意はわかりませんが、世界的な決済システムの状況やインバウンド(外国人消費者)が増えている日本の状況だけを見ると、可能な限りキャッシュレス社会に近づけたいという意図は感じます。対外国という視点でも日本だけがいまのまま現金社会であるというのは避けたいのではないかと思います。」  高林:「キャッシュレス化を推進させたいという前提があるなかで新紙幣を発行するのは、先ほどお話しされたような両替機の問題のように新紙幣が使えない状況にすることで必然的にキャッシュレス化を進めるという理解で大丈夫でしょうか?」  才田:「より身近な場面で、例えばゲームセンターはイメージしやすいかもしれません。ゲームセンターは機械に現金(硬貨)を入れて遊ぶので、両替機がたくさんあります。でもいまは、SUICAのようなICカードにチャージして遊ぶこともできるようになっています。新紙幣に変わって、大手企業なら両替機を全機入れ替えることもできるかもしれませんが、多くの場合、1~2台は新しいお金に対応させるとしても、あとはICカードにチャージしてもらうようにするのではないでしょうか。」 タンス預金の取り締まりも 隠れていたお金があぶり出される 高林:「新紙幣発行によってタンス預金があぶり出されるなどとニュースで言われています。これはどういう意味でしょうか?」  才田:「『あぶり出し』という言葉が適切かどうかはわかりませんが、そういう話はあり得ますね。  少し話が飛躍しますが、お金というのは預金口座等を通して動いている場合、使う側も監督する側も管理できるんですね。しかし、現金は管理しにくいんです。極端な話をすると、例えば、銀行が『1日いくらまでしか引き出しできません』というように規制した場合でも、現金はどこにでも置いておけますし、制限額以上に保管や使用も可能です。  オンライントラブルなどに備えて緊急予備資金的に現金を持っておきたいという人もいますが、問題になるのは国が管理できていないお金です。 先日、財務大臣がこれまでの紙幣もそのまま使えるということを述べられましたが、あえてこのような発言をするということは、その逆もあり得ると考えることもできます。旧紙幣が使えなくなる可能性があると告知されれば、多額の現金を持つ人々は新紙幣に交換せざるを得なくなり、手持ちの現金を銀行に持ち込もうとします。 緊急予備資金的な金額であれば問題ないと思いますが、例えば千万・億単位のお金の場合、その出所、すでに税金を払っているお金であるかどうかを確認できなければ銀行は受け付けてくれません。納税して初めて新紙幣に替えてもらえます。それによって税務当局が不透明な資産を把握しやすくなります。  このように、これまで国側が管理できていなかったお金を(使えなくなるかもしれないと所有者が考えて)表に出すようになることを『あぶり出し』という表現で言っています。」 現金の価値と安全性は? 新紙幣交換詐欺に注意が必要 高林:「新紙幣発行によって詐欺も増えているようです。才田さんは金融詐欺にもお詳しいと思うので、ご存じのことがあれば教えてください。」  才田:「新紙幣は偽装が難しい工夫が多々されていますから、そういう点では紙幣価値や安全性が向上します。しかし、新しく何かができるというような場合は常に注意が必要です。  というのも、新紙幣はもう発行されましたが、まだ見たことがない人が多いですよね。なので本物かどうかの見分けをつけられないんです。先ほど、タンス預金についてもお話ししましたが、『今までの紙幣は使えなくなるから新しい紙幣に交換してあげます。』などという新紙幣への交換詐欺のリスクがあります。 特に高齢者などは本当の情報かどうかの判断をしにくい方も多く、手持ちの現金を渡して交換してもらうことも考えられます。現時点では本物と偽物の見分けを付けられない人がほとんどですから、交換したお金を実際に使ったり、銀行に持って行ったりした時点ではじめて騙されたことがわかるんですね。  旧紙幣も引き続き使用できますし、被害に遭わないためには焦らず自然に手元に新紙幣が回ってくるのを待つのがいいでしょう。本来、新紙幣に交換するためにわざわざ出向いてくる人はいないことを認識しておくことも大切です。新紙幣が手元に欲しい方は、銀行等へ出向いて旧紙幣と交換してもらうなど、自らアクションを起こすことが必要です。」 新紙幣発行は経済や消費者にどう影響する? 経済への影響 高林:「新紙幣発行によって日本経済全体にどのような影響があるのか教えてください。」  才田:「新紙幣を発行することで市場での通貨の流通量が増えます。発行量は1万円札、5,000円札、1,000円札のそれぞれで異なっていますが、数千万枚〜数億枚発行されました。しかし、これまで流通していた旧紙幣を削除したわけではありません。これがどういうことかというと、流通量は確実に増えているということで、それだけお金の価値が薄まるということです。お金の価値が薄まれば、いま以上にインフレが進む可能性につながります。希少価値がなくなると、そのモノの価値が下がる。これは一般的な経済の法則として言えることですよね。」  高林:「円の価値が下がってインフレが進む。その先にはどのような影響がありますか?」  才田:「インフレは物の値段が高くなることですよね。会社員の賃上げといったニュースも流れていますが、すべての企業がそうではないと思います。結果的に多くの人が生活しにくい状況になる。不動産や車などの高価なモノは、努力は必要ですが、これまでは購入を目指せていました。しかし、買うことを目指すこともできなくなるかもしれない。外貨に対しても円の価値が薄まれば円安が進みます。そうなれば輸入が難しくなる懸念もあるなど、さまざまな影響が考えられます。  お金の量を増やした分だけ個人の懐に入るようになればいいですが、今の社会制度のなかではそれも難しいですよね。例えば、給料が増えてもその分社会保険料や税金が上がったりしますから。」 個人への影響 高林:「新紙幣発行は消費者にとってより厳しい状況になる可能性が高いということでしょうか?」  才田:「インフレの可能性もありますが、負荷はそれだけではないです。新紙幣への切り替えやキャッシュレス化の動きなど、いろんなことが複合的に動いていますから、個人もそれに対応していく必要があります。例えば、手持ち現金の確認や銀行での交換手続き、キャッシュレス化への対応が求められます。人によっては課税の増加も意識する必要があるかもしれません。」  高林:「新しいデザイン・技術の紙幣が発行されたって喜んでいる場合ではないということですね。」  才田:「お金は必要ですけど、お金がなくても大丈夫な生活圏を作ることや、日本以外の生活圏もイメージしておくといいかもしれませんね。その方法のひとつとして、例えば、海外に一歩踏み出してみたり、移住して働いてみたりというのもいいかもしれませんね。」 新紙幣発行により資産管理も変えるべき?…

【2026年版】日本円の紙くず化・ハイパーインフレ対策個人でできる資産防衛と海外での資産分散方法

世界的な金融不安や地政学リスクの高まりを受け、日本円の価値が将来的に下落する、いわゆる「日本円の紙くず化」や「日本円の暴落」の可能性を懸念する声が高まっています。世間で言われている「紙くず」は極端な表現かもしれません。しかし、2026年現在、歴史的な円安水準が続く中、万が一の事態に備えて、個人でできる資産防衛の方法を知っておくことは極めて重要です。 特に、日本でハイパーインフレが起こる可能性もゼロではありません。本記事では、ハイパーインフレの対策として、また円安からご自身の資産を防衛するための具体的な方法について、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から詳しく解説します。特に海外居住者の方はもちろん、日本にお住まいの個人の方にとっても有効な、海外資産への分散を含めたインフレ資産防衛の方法を学び、ご自身に合った運用方法を見つけましょう。 日本円が紙くずになる可能性とその対策 現在、世界は地政学リスクの高まりなどにより先行き不透明な状況が続いています。そのような世界情勢の中、日本経済に何かが起き、日本円の価値が暴落し、紙くず同然になるリスクは決してゼロとは言えません。 日本円が紙くずになる可能性:ハイパーインフレのリスクと歴史 歴史を振り返ると、1946年に日本では第二次世界大戦後のハイパーインフレ対策として預金封鎖が実施されました。これにより、銀行預金を自由に引き出せなくなり、国民の資産は実質的に差し押さえられたのです。このような状況では為替相場の変動も激しくなり、円の価値が急落することもあります。 ハイパーインフレは、なにも遠い国の話ではありません。 過去にはドイツやジンバブエ、近年では韓国、ギリシャ、キプロスなど、世界各国で経済破綻が起きています。経済が破綻すれば、為替市場は大きく混乱し、その国の通貨の信用は失墜します。 2026年現在、日本のインフレ率は2%前後で推移しており、直ちにハイパーインフレが起こる状況ではありません。しかし、専門家は「条件が重なれば、どの国でもハイパーインフレは起き得る」と警鐘を鳴らしています。その主な条件は以下の3つです。 現在の日本も、巨額の財政赤字を抱え、日本銀行が国債を大量に買い入れる状況が続いており、これらの条件と無関係とは言えません。 今後、何らかのきっかけで日本経済が大きなダメージを受け、ハイパーインフレが現実のものとなれば、私たちの生活に甚大な影響が及ぶでしょう。だからこそ、個人レベルでの対策が不可欠なのです。 なぜ今、個人での資産防衛と海外分散投資が不可欠な理由 特に、2023年7月の日銀によるYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化発表は、長期金利の上昇を事実上容認するものであり、市場では「事実上の利上げ」と受け止められました。この政策変更が、将来的にさらなる円安を招き、ハイパーインフレのリスクを高める可能性も指摘されているため、インフレに強い資産へ分散投資することは大切です。 以下では、海外在住の方だけでなく、国内居住の方でも実践できる具体的な資産防衛の方法を解説していきます。しかし、ただ利益を追求するだけでは不十分です。FPの視点から最も重要なのは、最終的にどの国でその資産を使うのかという『出口戦略』を明確にすることです。 日本円の価値下落に備えて資産を保全しても、最終的に手元に残せなければ意味がありません。注意点についてもしっかりと把握していきましょう。 個人でできるハイパーインフレ対策・資産防衛5選 ハイパーインフレや急激な円安からご自身の資産を守るためには、日本円以外の資産に分散させることが基本戦略となります。ここでは、個人で実践できる具体的な資産防衛の方法を5つ紹介します。 それぞれリスクやメリット・デメリットが異なるため、特徴をよく理解した上で、ご自身の資産状況やリスク許容度に合わせて組み合わせることが重要です。 1. 外貨預金:円安対策の基本(初心者向け) 外貨預金は、ハイパーインフレや円安に対する最も基本的な個人向け対策の一つです。日本円を米ドルやユーロといった海外の通貨に換えて預金することで、日本円の価値が下がった際のリスクを軽減できます。 メリット デメリット FPの視点から見ると、外貨預金は「攻め」の投資というよりは、「守り」の資産防衛と考えるべきです。多くのご相談者様が、為替の短期的な変動に一喜一憂してしまいがちですが、重要なのは長期的な視点で資産の一部を外貨に振り分けておくことです。例えば、給与の一部を毎月自動的にドルに換えて積み立てる「ドルコスト平均法」を活用すれば、為替リスクを平準化させることができます。 特に、シンガポールや香港など、金融ハブとして機能している国・地域では、有利な金利を提供する銀行が多く存在します。海外在住の方は、現地の銀行口座を積極的に活用するのも良いでしょう。 あわせて読みたい 円安の時に対策すべき投資とは?円安の時にすることや買うべきものをFPが解説 2. 金(ゴールド)投資:究極のインフレ対策(初心者〜上級者向け) 金(ゴールド)は、その希少性と普遍的な価値から「有事の金」と呼ばれ、歴史的にインフレや金融危機の際に価値を保全する安全資産とされてきました。ハイパーインフレのような極端な状況下では、通貨の価値が失われる一方で、金の価値はむしろ上昇する傾向があります。 メリット デメリット 2026年現在、世界的なインフレ懸念や地政学リスクの高まりから、金価格は歴史的な高値圏で推移しています。これは、多くの個人投資家や中央銀行が、資産防衛のために金をポートフォリオに組み入れていることの表れです。 個人が金に投資する方法としては、金地金や金貨といった現物を購入する方法のほか、証券会社を通じて手軽に売買できる「金ETF(上場投資信託)」や、毎月一定額を積み立てる「純金積立」などがあります。投資初心者の方でも始めやすい「純金積立」は、長期的な資産形成の手段としてFPの視点からもおすすめです。 あわせて読みたい 【2025年10月】金価格は5000ドル時代へ?「有事の金」が買えない時代の資産防衛術 3. 株式投資:インフレに強い企業への分散投資(中級者〜上級者向け) 株式投資は、インフレに強い資産防衛策の一つです。インフレ局面では、企業は製品やサービスの価格を値上げすることで、収益を維持・向上させることができます。特に、海外の優良企業の株式に投資することは、日本円の価値下落リスクをヘッジし、海外の経済成長の恩恵を受けるための有効な手段です。 メリット デメリット 株式投資でハイパーインフレに備えるには、特定の国や業種に集中投資するのではなく、グローバルに事業を展開し、安定した収益基盤を持つ企業に分散投資することが重要です。例えば、アメリカのS&P500に連動するインデックスファンドに投資すれば、世界経済を牽引する優良企業500社に手軽に分散投資できます。 4. 投資信託:手軽に始める海外資産分散(初心者〜中級者向け) 投資信託は、個人が少額から手軽に海外資産分散を始めるのに最適なツールです。1つの投資信託で、世界中の株式や債券などにまとめて投資できるため、ハイパーインフレ対策として非常に有効です。 メリット デメリット FPの視点からアドバイスすると、全世界の株式に投資する「オルカン(オール・カントリー)」のような投資信託をコア資産として長期で積み立てていくことが、最も着実なインフレ資産防衛の方法と言えるでしょう。これにより、特定の国の経済状況に左右されることなく、世界経済全体の成長を享受することが期待できます。 あわせて読みたい 海外資産運用の基礎セミナー 5. 海外の貯蓄型保険:税制メリットも活用(初級〜中級者向け) 海外の貯蓄型保険は、日本の商品よりも高い利回りが期待され、資産防衛と保障を両立可能な選択肢です。特に米ドル建ての終身保険などは、為替リスクを考慮しても、長期的に見れば日本円で資産を持つよりも有利になる可能性があります。 メリット デメリット…

リスクなしで年利回り7.12%『昔(40年前)は金利が高く、銀行貯金が安心・確実・最高』の投資手法。では現状は?

失われた20年の実力は? 日本にも良い時代があった これは平成10年(1998)から平成30年(2018)までの20年間銀行に30万円を預けていた通帳の記録です。 300,000円が20年で302,027円に。なんと年利は0.035%ということになります。 しかし日本も昔からこんなに年利が悪かった訳ではなく、実は良い時代もありました。 昭和55年(1980年)の郵便局定額貯金 昭和55年(1980年)は郵便局の定期預金に預けていると約7%もの金利がついていました。 実際に1980年の金利は7.12%(パーセント)で10万円を預けると1年後には107,122円になっていたのです。そして2年後には年利8%(パーセント)になりました。今では年利8%(パーセント)は考えられない数字ですね。昔の定期預金は銀行に預けるだけでお金が増えていきました。当時は、お金を借りる際の金利も高く、銀行は預金者に高い利息を支払うことができました。その一方で、お金を借りる人にとっては負担が大きかった時代でもあります。 当時は10年寝かしておくと元本の倍になる最高の資産運用 この7%を10年寝かせると、なんと元本の倍になる金利です。 昔の金利は高かったので、この頃はお年玉などは親からは「全部使うのではなく、普通預金や郵便局に預けて置きなさい!」ということが言われていました。 昔の金利はこの年利だったので、それが正しい資産運用になっていました。 株などを運用してリスクを取ることなく、30年前までは昔の普通預金や定期預金に置いておくだけで増えている時代があったのです。 昭和の定期預金金利推移は1980年代ごろにピークを迎え、昭和の終わりには定期預金金利推移が3%台まで落ちました。1990年12月末の銀行の定期預金金利は年6.08%でした。これは、バブル期と呼ばれた時代で、預金だけでお金が増えるという夢のような時代でした。30年前までは金利で資産が増えていきました。その後、1990年代後半以降は金利が低水準で推移し、2024年3月末では年0.005%となっています。 現状はどうなのか?! しかし現状はどうでしょう?現代では年利0.035%しかつかず、昔に比べるとかなり時代が変わってきています。そんな低金利の現状下で銀行に置いておくのが正しい資産運用の方法なのでしょうか? 金利の仕組みについて簡単におさらい 金利が下がってきている原因について簡単にお話しします。 その前に『金利の仕組み』をご存知でしょうか?金利は経済を考える上でも、身近な住宅ローンなどについて知る為に、とても重要になります。 しかし金利の仕組みについてはどこかで習ったり、教えて貰うような事もなかなか無いのが現実です。 なので、簡単に金利の仕組みについてまとめます。 簡単に分かる金利の仕組みについて 金利とは何か?簡単に言うと、お金を貸し借りしたレンタル料金の事です。それが%という表記で表されます。 個人のお金を銀行に預けるのは、銀行に貸していると言えます。なので「お金を貸すレンタル料」として利息が発生します。逆にカードローンや住宅ローンはお金を銀行から借りる行為です。なので、銀行からお金を借りるので、「お金を借りるレンタル料」として手数料が発生します。 借りる時と貸す時の差額で利益を生み出すのが、銀行のビジネスモデルになります。 この金利は需給バランスで決まります。お金を借りたい人がたくさんいる時には銀行から借りる金利や利息は上がります。逆に貸して欲しい人が少ない時には銀行から借りる際の金利や利息は下がります。 つまりお金を借りたい人がいない場合、銀行は利益が出せません。 つまり金利は勝手に誰かが決めているのではなく、世の中の景気や国債の需給バランスによって変わるのが、金利になります。 金利が年々下がっている原因 金利の仕組みについて簡単に解説しました。ここからは金利が下がった原因についてお話しします。 金利が下がっている理由の一つとして、アベノミクスが関係しています。 アベノミクスの金融政策で日本銀行による量的緩和が行われました。量的緩和は市場に流れるお金の量を増やす事が目的です。わたしのお財布や銀行口座の残高は増えていないのですが、見えないところで『日本円』『福沢諭吉さん1万円』が大量に増やされているんですね。 通常ですと金利が下がった時点で国債の購入がストップされますが、目標達成の為に無制限で金融緩和が行われてきました。こういった流れが、金利が下がっている一つの要因になっています。 日本を取り巻く現状、労働人口減少の先は?! 日本を取り巻く現状として、労働人口の減少があります。 こちらの図は1950年の各世代の人口の分布図になります。下に行くほど若い世代で、上に行く程年配の方になります。1950年当時は綺麗なピラミッド型でした。 しかし年々若い世代は減っていき、どんどんと少なくなってきています。 一方で上の赤い方、長生きする方がどんどんと増えていっています。 以下は、今後の予想図となります。 2050年では、更に労働人口の減少が進み、こちらのグラフは逆三角形になると言われています。 つまり少数の若年層で多数の年金受給者を支える必要があります。 年金を貰う人が増える一方で、年金を支払う若年層が減っていき、バランスが取れなくなってきています。 低金利時代は資産運用をしなければお金が増えない 40年前も今も親から学ぶお金の教育は『貯金』でした。『投資』『運用』『外貨』などは『危ないもの』として、庶民には『貯金』一本槍でした。 動画を見た人、本ブログの読者は既にピンと来ていると思いますが、現代の日本で『貯金』するだけではどうにもなりませんね。かと言って毎日上下する『株式投資』などもまだまだハードルが高いと感じている人も多いと思います。この低金利の時代に少子高齢化で膨れ上がる年金を支えるため、若年層は銀行に預ける以外の資産運用手法を考える必要性があるのではないでしょうか。