海外居住者は日本の年金をどう受け取るのが良いか?受け取り方の違いによるメリットや注意点を解説

老後の生活が近づいてくると、年金のことが気になり始めるものです。海外に住んでいる方や、海外移住をお考えの方の中には、「そもそも日本で加入していた公的年金を受け取れるのか」「受け取る場合はどのように受け取れるのか」と不安に感じている方もいるでしょう。

結論から言うと、海外にいても日本の年金は受給可能です。ただし、いくつか留意すべきポイントがあります。

そこで本記事では、海外居住者が日本の年金を受け取る方法や、受け取り方の違いによるメリット・注意点について解説します。老後も海外生活を続ける予定の方や、老後に海外移住を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

日本で加入した年金は海外にいても受け取り可能

日本で加入していた公的年金は、受給開始年齢に達した時点で海外居住者となっている場合でも受け取ることができます。ただし、日本に居住している場合と同様に、年金を受け取るためには受給資格要件を満たすことが必要です。

公的年金(老齢年金)の受給資格要件

老齢年金の受給資格を得るための要件は日本にいる場合と同様です。具体的には、「国民年金または厚生年金に10年以上加入していること」と、「65歳に達している」の2つです。

なお、1つ目の「10年以上加入していること」という要件は、以下の3つの期間を合計してカウントします。 

  1. 国民年金または厚生年金の保険料を納付した期間
  2. 正式な手続きを行ったうえで保険料を払わなかった期間(保険料免除期間)
  3. 年金制度に加入していなくても資格期間に加えることができる期間(「カラ期間」と呼ばれる合算対象期間)

海外居住者の中には、海外移住するにあたって日本の住民票を抜く手続きをした方もいるでしょう。この場合、出国日以降の期間が3つ目の「カラ期間」に該当します。一方、日本の住民票をそのままにした状態で国民年金保険料を支払わなかった場合、その期間は「未納期間」となり、「10年以上加入」の計算に含まれないため注意が必要です。

また、海外駐在など会社の厚生年金に加入していた方や、海外移住にあたって国民年金に任意加入した方は、それらの期間が1つ目の保険料納付済み期間としてカウントされます。

年金を受け取るためには請求が必要

受給資格の要件を満たしていても、受給開始年齢に達しただけで自動的に年金が支給されるわけではありません。日本の年金制度では、「自ら請求手続きをしなければ支給されない」ため、必ず年金の請求を行う必要があります。

海外居住者の場合は、国際郵便を利用して書類を提出する方法や、一時帰国時に年金窓口を直接訪問する方法などで手続きを行うことが可能です。

手続きの提出先は、日本国内の最終住所地を管轄する年金事務所、または街角の年金相談センターになります。

海外居住者は日本の年金受け取りを2つの方法から選択可能

ここからは、海外に居住しながら日本の年金を受け取る方法について見ていきましょう。受け取り方法は、以下の2つのうちいずれかを選択することができます。

手続きの詳細についてはここでは省略しますが、年金請求時に「外国居住年金受給権者用」の所定の用紙を使用して、受取口座を指定する必要があります。詳しくは、日本年金機構の公式サイトなどでご確認ください。

日本の口座で受け取る

日本国内に本人名義の銀行口座があれば、年金振込先口座として指定することが可能です。この場合、年金保険料納付状況に応じて計算された年金額が日本円で振り込まれます。

海外(居住現地)の口座で受け取る

海外の居住地にある現地の金融機関口座を、年金の振込先口座として指定することも可能です。

この場合、日本円で計算された年金額が、現地通貨などの外貨に換金されて振り込まれます。送金される通貨は国ごとにあらかじめ指定されており、居住国で実際に使われている通貨とは異なる場合もあります。

たとえば、口座がシンガポールにある場合はシンガポールドルで送金されますが、香港や台湾の場合は米ドルで送金されます

どちらが良い?海外で年金を受け取る際に考えるべきポイント

海外に居住している方の場合、現地で普段使っている口座で年金を受け取るのが一般的です。一方で、日本に帰省する機会が多い方などは、日本国内の口座で受け取るほうが使い勝手が良いというケースもあるでしょう。

日本の口座か、海外の口座か――いずれを選ぶにしても、海外居住者が日本の年金を受け取る際には、いくつか考慮すべきポイントがあります。これらのポイントを踏まえて、ご自身にとって最適な受け取り方法を選択しましょう。

為替の影響

海外の口座で年金を受け取る場合、日本円から外貨に両替されるため、為替の影響によって毎回の受取額が変動します。為替が円高に動けば外貨ベースでの受取額は増え、円安になると減るということになります。年金は2ヵ月ごとに2ヵ月分ずつ、偶数月の15日(土日の場合は前営業日)に支払われる仕組みです。したがって、自分で為替のタイミングを選べないことを知っておきましょう。

令和7年度時点の厚生年金の標準年金額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)を例に、米ドルで送金されるケースで見てみましょう。標準年金額は、日本円ベースでは月額232,784円、1回あたりの支払い(受取り)額は2ヶ月分の465,568円となります。

これをもとに、2025年2月と4月の各15日時点の為替レートを用いて上記支払い額を米ドルに換算してみます。

2025年2月15日2025年4月15日
為替レート1ドル=約152円1ドル=約143円
米ドル換算額約3062.95ドル約3255.72ドル


1回あたりの受取額に約190ドルの差が出ていることがわかります。 

受け取る年金が国民年金(老齢基礎年金)だけの場合でも見てみましょう。満額で受け取れる場合の年金額(令和7年度)は月額69,308円、1回あたりの支払い額は138,616円です。 同様に米ドルに換算してみます。

2025年2月15日2025年4月15日
為替レート1ドル=約152円1ドル=約143円
米ドル換算額約911.95ドル約969.34ドル


1回あたりの受取額の差は約57ドルです。 

日本の口座で受け取る場合でも、為替の影響がまったくないわけではありません。例えば、海外に居ながら受け取った年金をオンラインバンキングなどで海外送金したり、現地で買い物に利用したりする場合です。ただし、この場合は、為替の動向を見ながら自分で送金や利用のタイミングを調整できる可能性があります。

為替手数料

海外口座での受け取りには、手数料が発生することもあるため注意が必要です。先ほどは米ドルへの換算額の例を紹介しましたが、実際の送金時には為替手数料(両替手数料)を含んだ両替レートが適用されます。

また、振込手数料は国(日本側)が負担するため発生しませんが、受取先の金融機関によっては受取手数料がかかる場合があります。前述したように年金は2ヵ月ごとに支払われるため、受る取るたびにこの手数料を負担することになります。

なお、日本の口座で年金を受け取り、その後に自分で海外送金を行う場合には、振込手数料(海外送金手数料)が別途発生しますので、こちらも留意しておきましょう。

税金

海外居住者(非居住者)が日本の年金を受け取る際は、原則として20.42%(源泉所得税+復興税)の税率で源泉徴収されます。この源泉徴収は、日本国内の口座で受け取る場合も、海外口座で受け取る場合も同様に適用されます。そのため、税金が差し引かれることで実際の手取り額が減る点には注意が必要です。

なお、日本と租税条約を締結している国に居住している場合は、一定の手続きを行うことで、日本での課税(源泉徴収)がされません。その場合、年金は居住国で課税されることになりますので、居住国の税制もあらかじめ確認しておきましょう。

在留証明

公的年金の支給には、年1回の現況確認が必要です。海外居住者(非居住者)の場合、日本年金機構から送付される「現況届」に対し、現地の日本領事館などで在留証明を取得し、これを添えて日本年金機構に送付する必要があります。

この手続きにおいては、在留証明の発行手数料や、日本年金機構への郵送料が自己負担となる点にも留意しておきましょう。

日本の年金は老後生活のプラスαと位置づけ、別途資産形成をするのがおすすめ

海外にいても日本の年金を受け取ることができるのは、老後も海外移住生活を続ける上で大きな安心材料となります。特に海外に移住された方の場合、年金の受け取り方に加えて、iDeCoの運用継続や現地での資産形成も重要になります。老後に海外移住を考える方にとっては、制度理解と早期準備の両方が求められます。

ただし、海外居住者が日本の年金を受け取る場合には、手数料や税金がかかるため、実際の手取り額は少なくなる可能性があります。また、為替の影響を受けるため、受取額が都度変動する点にも注意が必要です。こうした理由から、老後資金の計画を立てづらいというデメリットもあるでしょう。

為替レートの動向によっては、実質的な年金の受給額が少なくなる可能性もあります。そのため、日本の年金はあくまで”老後生活資金のプラスα”と位置づけ、居住地での資産形成を並行して進めておくことが望ましいでしょう。

最後に、間もなく年金の受給を開始する方にとっても、今後年金制度が大きく改善する見込みはありません。

また、就職したばかりの若い世代にとっても、海外居住する・しないに関わらず、「自己年金」という発想を持ち、できるだけ早く資産運用を始めることが将来の安心につながります。

グローバルな保障設計と資産運用は、110(ワンテン)グループへ

「110 Financial Support」では、海外在住者や海外移住を検討されている方の資産運用をサポートをしています。海外での資産運用では、資金シミュレーションはもちろん、税務知識の専門性や海外現地の情勢、物価上昇や想定外の出費など、多岐にわたる要因を考慮することが必要です。

  • ・駐在国で、どのように資産運用すべきか、方法がわからない
  • ・駐在から現地転職や現地起業に変わった場合の保障や資産運用を相談したい
  • ・海外での資産運用事情や、老後資金の準備について詳しく知りたい

といったお困りごとがあれば、日本人サポート実績20年以上の「110 Financial Support」までご相談ください。海外在住者や海外移住N-2年前のご準備段階の方も、あなたの資産運用状況を踏まえ、最適な資産運用プランづくり・適正化のサポートをいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

\海外保険 × 資産運用で新たなライフプランをご提案/

海外在住者のためのマネーセミナー開催中

Insurance110では世界各地に拠点があります。
各国に滞在する日本人ファイナンシャルプランナーが、海外在住時の資産運用に関するセミナーを行なっております。

老後2000万円問題や円安、物価高など家計に直結するニュースについても分かりやすく解説いたします。

\お金のプロに相談できる/

無料セミナー予約はこちら
記事監修:INSURANCE 110 DIRECTOR 才田 弘一郎
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。
日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。