【対談企画】あなたはどっち?海外の資産を残せるお父さん・残せないお父さん

海外には日本に比べて資産を形成する上で魅力的な商品や方法、税制などが多々あります。海外駐在や海外移住を機に海外で資産形成をしたり、日本の資産を海外に移転させたりする人も多いのではないでしょうか。一方で、せっかく海外で上手く資産を築けたとしても、場合によってはその資産を家族にきちんと残せなくなる可能性もあります。海外駐在をはじめ海外移住をする日本人が増えている昨今、あらためて海外での資産形成方法について考える必要がありそうです。

そこで、香港を中心に多くの日本人の資産づくりや管理のサポートをされているシニアコンサルタントの才田氏に「資産を残せるお父さん・資産を残せないお父さん」というテーマでインタビューを行いました。海外の資産を残せるお父さんになるための方法や、そのために準備しておくべきことなどについて教えていただきました。

INSURANCE 110 DIRECTOR/シニアコンサルタント
才田 弘一郎

日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。



資産を守るには海外と日本のどちらが有利?

高林:「最初に、(海外に移住された方が)資産を守るということからお聞きしたいです。日本に住んでいる場合と比較して、海外に移住すると資産を守るという点でどのようなメリットがあるのか教えていただきたいです。」 

才田:「海外に移住した場合にどう資産を守るかという話ですが、まずは無理して海外にでる必要はないということをお伝えしたいです。というのも、日本は金融機関を含めて日本人が(日本語で)対応してくれますよね。私自身、海外に住んで14年になりますが、日本に帰るたびに対応の良さや充実したサービスなど、とても素晴らしいと感じています。日本はとても住みやすいですし、これらは資産を守ることにつながる要素だと思います。『資産を守る』というと税金とか為替を含めた経済的なリスクもあって海外移住……となりがちですが、税金や資産面だけ考えて海外に移住してもよいのか、資産のどういったことを守るのかということはしっかり考える必要があります。 

そのうえで海外に出た場合についてお話しすると、まずは税制が日本とまったく違う国があります。例えば、香港では所得税率は16〜17%ですし、社会保険料も徴収されません。日本は、昔、5公5民といって収入を得ると半分は国(税金や社会保険料など)で半分は自分のものでした。今の日本は社会保険料、所得税、消費税など諸々を含めると6公4民もしくは7公3民と言えるような状態です。さらに、日本では三代相続すると資産がなくなるとも言われますが、大きな資産を次世代に渡す必要がある人たちにとっては相続税や贈与税もあります。ですので、大きな資産を残していくということであれば、相続税等が安い国に移動するのもひとつの方法でしょう。具体的な守り方は超資産家、ミドルアッパー層などといった資産の程度によっても変わりますが。 

あと、日本にいると気づきにくいと思うのですが、日本は自分のお金を海外に移動させにくいですね。子供の留学資金や生活費など、海外送金をすることはあると思うのですが、日本は銀行窓口で海外送金する際に厳しく確認されますよね。香港やシンガポールではスマホのアプリで海外送金の設定が簡単にできます。まあ、捉え方によって良し悪しは変わりますが、自分の大切なお金をすぐに動かせるかどうかというのは、自分の資産を安全なところに移せるかどうかにも関係してきますね。」

海外で資産を残すためには

相続で有利な国を選ぶ

高林:「お話のなかで相続という言葉が出ましたが、資産を残すという意味では相続になりますよね。相続や資産保有において日本より有利な国というのはあるのでしょうか?」 

才田:「相続は誰にも大切ですが、特に多くの資産を保有している方にとっては避けがたいポイントですね。まず、相続税や贈与税の有無で言うと、シンガポールやマレーシア、香港では相続税がかかりません。日本の方でも相続税の利点を重視してシンガポールに移住される方もいらっしゃるようです。アジアであればベトナムやタイもそうですね。

ただ、これらの国は不動産(土地)を現地の人以外が買えないといった問題もあったりします。だからといって、じゃあ海外居住者になるということで身体だけ移したなると、日本の当局からも相続税回避のためだけに移住したのではないかと疑いをかけられる可能性も高いです。最初にお話ししましたが、ただ税金のためだけに海外に移住しようと考えるのではなく、日本にいながらできること、海外のどこに資産の基盤を置くかなど全体的なバランスを考えながら、税金納める国や相続に有利な国、方法を選ぶべきだと思います。

でも、大切なことがありまして、本人だけが移住してもダメなんです。私もお客様の資産サポートをお受けするなかで遭遇することがあるのですが、資産のことを考えて海外に出たもののやはり日本が暮らしやすいといって帰国される方は多いんですね。その後、海外の銀行にそのまま預金を置いた状態で亡くなると、遺族がすごく大変なんです。これは香港の事例ですが弁護士費用に数百万円(数百万円が大きいかどうか?感じ方は人それぞれです)かかります。それで口座のお金(相続財産)を取り戻すのに2~3年ぐらいかかります。ですので、何の目的で移住するか、その目的を為し得るための資産運用やお金の置き場はどこがいいかというのをしっかり考えて移住されるのがいいですね。総合的に考えていくと、この国で、この相続の仕方がいいという結論が出てくると思いますが、単純に税金だけで選ぶと本末転倒になる可能性があります。」

残す資産を増やす

高林:「ありがとうございます。税金だけではなく、人それぞれのケースに合わせてどの国や方法を選ぶか相談されると良さそうですね。これもケースバイケースかもしれませんが、海外に住むとなればどのような資産を持つのが最適でしょうか?」 

才田:「海外にどれだけ滞在するかによって変わります。例えば、永住される予定でしたらその地に根ざした投資の仕方が有効だと思います。例えば、アジアの発展途上にある国の不動産を購入しておくのもいいでしょうね。経済発展に従って不動産価値も上がりますし、最終的には自分で住むこともできますよね。 

日本にいながら業者に勧められて買うというのは注意したほうがいいです。これもご相談をお受けすることがあるのですが、数十年前に日本でも海外不動産への投資ブームがあって投資された方もいらっしゃいます。当時、マレーシアのジョホールバルなんかは特に人気があったのですが、地価が上がりそうなエリアだと言われても実際にそこに住んでいないとどこに開発地区ができるかなんてわかりません。そのなかのどこが上がるかといった具体的なことは何もわからないですよね。

結局、投資をされて何とか上手く原資を取り戻せた方もいますが、購入費用に加えてずっと維持費がかかり、ずっと赤字のままという方もいらっしゃいます。それならまだいいですが、当時の販売業者がいなくなって、メンテナンスしてもらえないということもあるんです。不動産投資が悪いと言ってるわけではないのですが、きちんとメンテナンスもされて、最終的には自分で住めるという前提の元に購入されることが大事です。 

成長が見込まれるのであれば、現地の株式市場で投資をするのもいいでしょうね。タイ・ベトナムなどは株式市場でも外国人が購入できる枠もあります。UAEでは仮想通貨関係の税金優遇があります。その国それぞれの資産運用に対する優遇制度を見ながら資産運用方法を選ぶのがいいでしょう。 

大きな資産を次世代につなぎたい、相続税がたくさんかかる可能性があるという場合には、海外で貯蓄型保険を使うのがすごく有効ではないかと考えています。永住する予定だったけど帰国することになるってこともあるんですね。

先ほどもお話ししましたが、海外で資産を蓄えて日本に戻り、困ったことになったといってご家族から相談されることって多いんです。本人が認知症になったとか、死亡されたとかになると海外の銀行口座は凍結されてしまいますので。海外ではもう一人の名義人がアクセスできるジョイント口座を持つ方法もありますが、それにしても自分が元気なうちに資金を移動させていくことが大事です。不動産や仮想通貨にしても同じです。 

その点、海外の貯蓄保険は保険とは名ばかりで、実は中身は資産運用なのですが、出口では受取人を指定して、10人でも20人でも資産を渡せます。他の資産に比べて、確実に渡したい人に資産を渡せるという点、その指定を生前のうちに計画的に実施できるという点で群を抜いていると思います。 

そのうえで、さらに資産規模が大きいという方はスイスやシンガポールのプライベートバンクを利用されてはいかがでしょうか。お手伝いさせていただきます。誰に渡したい、どのように使いたいなど、信託や財団などの仕組みを使って資産を振り分けていくこともできます。」

税金面で有利な資産を選ぶ

高林:「今回のテーマが『資産を後世に残す』ということなのですが、税金面では有利な資産と不利な資産というのはありますか?」 

才田:「そうですね。税金面で有利な資産というと保険でしょうね。海外の貯蓄型保険は資産を代々引き継がせることができますし、お金を引き出さなければ運用している限り現状の税制では税金はかからないです。例えば株式とかだと譲渡した時点で所得税がかかることが多いですから、次世代に渡すのには不利な気がします。 

税金といっても所得税と相続税を考える必要がありますし、海外でということであれば、資産の種類よりも各国の税制によって検討するのがいいでしょうね。例えば株式・仮想通貨など資産は運用利益に対して税金(所得税)がかかりますので、非課税となる国を選ぶのがいいですよね。利益をそのまま再投資できますから投資効率が上がります。そのうえで、相続したとしても相続税への影響が少ない資産に変えておくといいでしょう。 

繰り返しになりますが、貯蓄型保険は税金のことにしても、遺族に残すことにしてもとても優れています。自分自身が売買や管理できるうちは株式や投資信託などでもいいのですが、例えば株価が最高潮の時に相続が発生してその価格で財産評価されると税額も上がりますし、実際にその株を売却できるようになったときに価格が下がっていたら税金だけ多く取られたということになりかねません。 

税金面での有利不利とは離れるのですが……。私がお客様の資産サポートをさせていただきながら、自分自身でも日々考えるのですが、運用の良し悪し以前に、こうやってきちんとサポートしてくれる人間、組織が近くにいるというのが一番有利な資産の残し方になるのではないかと思います。

先ほどお話ししたジョホールバルの不動産ではないですが、売りこむときには元気よく言い寄ってきていたのに3年ぐらい経つといなくなるケースもあります。そうなるのは一番不幸な資産運用だと思います。何かに投資する、何かを購入するときには、きちんとサポートしてくれる人がいる資産であることが税金面の有利不利よりも大切なのではないかと思います。」

仮想通貨には相続リスクがある?

高林:「仮想通貨はいかがでしょうか。海外で仮想通貨を保有していると相続時に何かリスクはありますか?」

才田:「仮想通貨については最近お問い合わせを受けることも増えてきていますね。仮想通貨については相続時のリスクというより、まず保有の仕方をケアしておく必要があります。

これは海外だからというのではなく日本でもそうですが、そもそも取引所に対するリスクヘッジをしておく必要があると考えています。自分ではアラート通知などの安全設定をしていても取引所が悪いことをしないとも限りませんし、ある日突然残高がゼロになっているということもあり得ます。最近では、取引所側のエラーで起こるハッキングへの保険やコールドウォレットといって取引所内の取引できないアカウントに入れるなど保全はされてきていますが、取引所を信用しきらずに複数に分けておくといいでしょう。 

ウォレット内に保管して自分自身で保有する選択肢もあります。そうなると仮想通貨というデジタル資産が物理的な存在になり(個人保管になるため)保管責任が発生します。仮想通貨を保有したことがない方にはちょっと難しいかと思いますが、その資産を自分のものとするための秘密キーなど、もし突発的に良くないことが起こり、それを家族が知らない場合はほぼ取り戻せないと思っておいたほうがいいでしょう。

これは相続時のリスクといえますね。個人で管理するという場合は、家族にどう伝えるか、いつ渡すかをしっかり考えることが必要だと思います。 

あと、海外でという話になると国ごとに仮想通貨へのルールが違うことに注意が必要です。ヨーロッパや米国のように規制が少ないところもありますが、香港のように資産保有規模により取引が制限されている国・地域があります。課税のルールも国によって違います。」

結論・資産を残せるお父さんになるためには

今から準備しておくこと

高林:「では、子供に資産を残すために我々がしておく準備にはどのようなことがありますか?」 

才田:「子供に残す資産としては『目に見える資産』と『目に見えない資産』があると考えています。目に見える資産はビジネスや不動産、金融商品、仮想通貨などです。これらはどういう資産があるか配偶者や子供に少しずつ伝えていくことが大事ですね。それと、家族がもめないようにするために遺言書にまとめておくことでしょうか。遺言書は、書き方のルールが各国違いますので注意は必要ですが、家族に対する想いも伝えられますし遺族も嬉しいと思います。 

あと、受取人を指定できるタイプの資産を準備するのがいいですね。私自身、何度もお客様の相続の場に立ち会っていますので自信を持って言えますが、特に海外では保険の仕組みを有効に活用した方法で残すのが大事ではないかと考えています。お子様達もどこか他の国にいるかもしれませんし。大切な家族を亡くして悲しみに浸っているなか、高い弁護士費用を払って、長い期間をかけて、それでも取り戻せない不安がある資産ではなく、『これは貴方のために準備したもの』とわかりやすく、確実に残せるのが保険の神髄だと思っています。 もちろん資産規模によりプライベートバンクの活用、資産管理会社の活用などあるかと思いますが、常に規制は変化し当局とはイタチごっこになるのではないでしょうか?改めて原理原則に立ち返り下手な相続税対策を施すより良いかもしれません。

目に見えない資産としては、生きていくためのサバイバル能力をつけてあげるということがあります。お子様の年齢にもよりますが、例えば、自分の生き様や考え方を遊びを通して、見せたり、伝えたり、資産の増やし方を伝授したりというのもひとつです。自分が亡くなったときの相続で家族がもめないようなファミリーづくりの準備も必要だと思っています。」

資産を残せるお父さん・残せないお父さんの違い

高林:「ありがとうございました。まさに『資産を残せるお父さん』という本日のテーマに合ったお話ですね。では、ずばりお聞きしたいのですが、『資産を残せるお父さん』と『資産を残せないお父さん』の違いは何でしょうか?」 

才田:「ひとことで言うと『死生観』ですね。私自身、『もし今、自分が死んだら』という前提づけをするようになったのが30代中盤ぐらいだったと記憶していますが、そう考えるようになったことでいろいろ変わってきたと思います。死というのは重いテーマですが、死は皆平等に訪れますし、私は逆に生きる糧にしています。死生観を持つことで、今やるべきことがわかるようになりますし、子供と接する時に何を、どう話すかなんてことも真剣に考えられるようになってきたと感じています。 

資産にしてもそうですね。遺族が資産を受け取りやすいかという視点で逆算しながら資産の種類や運用方法を選べるようになってきたと思っています。人間、どんなに長生きしても100年ぐらいですよね。最後の20年ぐらいは意識があるかどうかもわからないですし、そのうち後半の10年ぐらいは健康かどうかもわからない。そう思うと家族としっかり接していけるのは50年か60年ぐらいです。そのなかで次世代にどう残すか、その先にどう残していけるかということを心として伝えていくことで、自分の子ども達もまたその子や孫にどうしていくか考えるようになるのではないかと思います。 

私のお客様のなかでも次世代にお金をたくさん残してあげたいという方がいらっしゃいます。理由をお聞きすると、自分に孫ができた時にたくさんお小遣いをあげたいからと言われたのですが、シンプルですけど本質をついた理由ですよね。こうやってイメージするとお金の使い方にしても投資と浪費の違いも見極められるし、資産を残せるお父さんになれますよね。 

死生観を持って、自分がどのような生活をしていきたいかをより具体的にイメージできるお父さんであるほどしっかり資産を残せるのではないかと考えています。私も資産を残せる側のお父さんになれるよう、まだまだ研鑽中です。」 

高林:「逆に、資産を残せないお父さんはどういう特徴があるのでしょうか?」 

才田:「場当たり的な方、快楽主義者というのでしょうか。自分中心の判断をするというか、借金を重ねてしまったり、良いお金の使い方ができなかったりする方はお金を残せないのではないかと思います。一生懸命やっても残せない場合もあるとは思いますが、『お金を残せるお父さん』を意識して前向きに行動していくことが大事なのではないでしょうか。」 

高林:「『残せるお父さん』を目指していきたいですね。才田さん、本日はどうもありがとうございました。」

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記事監修:INSURANCE 110 DIRECTOR 才田 弘一郎
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