【2025年10月】金価格はどこまで上がるのか?歴史的最高値の背景と「生成が追いつかない」供給の限界

はじめに


2025年、金価格は歴史的な高騰を見せ、国際価格・国内価格ともに史上最高値を更新し続けています。特に日本では、1グラムあたりの価格が初めて2万円の大台を突破し、「金が最高値」というニュースが連日メディアを賑わせています。
この背景には、世界的な経済の不確実性や地政学リスクの高まりといった需要面の要因に加え、「金の生成が追いつかない」という供給面の構造的な問題が存在します。本レポートでは、金価格がなぜこれほどまでに高騰しているのか、その要因を需要と供給の両面から深掘りし、今後の見通しと個人の資産形成への影響について包括的に分析します。

金価格、歴史的最高値を更新


2025年10月、金価格は驚異的な上昇を記録しました。国際指標となるニューヨーク金先物価格は1トロイオンスあたり4,300ドルを突破し [1]、日本の国内小売価格も1グラムあたり23,000円を超えるなど [2]、前例のない水準に達しています。

この価格高騰は、単一の要因によるものではありません。国際的なドル建て価格の上昇に加え、日本国内では歴史的な円安が価格をさらに押し上げる「ダブルパンチ」となっています。2020年1月からの5年間で、ドル建て金価格が約2.6倍になったのに対し、円建て金価格は約3.6倍にも達しており、円安が国内価格に与える影響の大きさがうかがえます [3]。

期間ドル建て金価格上昇率円建て金価格上昇率為替レート(円/ドル)変動
2020年1月~2025年10月約+160%約+259%約38%の円安

出所: 田中貴金属工業の公表データを基に作成 [3]

価格高騰の要因分析:なぜ「生成が追いつかない」のか


現在の金価格高騰は、旺盛な需要と、それに追いつかない供給という、需給バランスの極端な逼迫によって引き起こされています。

需要サイド:世界が金を求める理由

  1. 地政学リスクと「有事の金」需要: ロシア・ウクライナ紛争の長期化や中東情勢の緊迫化など、世界情勢の不安定化は、投資家を株式などのリスク資産から「有事の金」と呼ばれる安全資産へと向かわせています [4]。国や企業の信用に依存しない金は、究極の安全資産として需要が集中しています。
  1. 世界的なインフレと資産防衛: コロナ禍以降の各国政府による大規模な金融緩和は、世界的なインフレを引き起こしました。これにより、現金や預金の価値が実質的に目減りすることへの懸念から、インフレに強い「現物資産」である金への資産防衛ニーズが高まっています [5]。
  1. 各国中央銀行による「爆買い」: 近年、特に中国やインドなど新興国の中央銀行が、外貨準備の多様化(脱ドル化)を目的として、記録的な量の金を購入しています [5]。国家レベルでの大規模な金購入は、市場の需給を著しく引き締め、価格を支える強力な要因となっています。
  1. ETFへの資金流入: 金価格の上昇期待から、上場投資信託(ETF)への資金流入も活発化しており、これがさらなる価格上昇を後押ししています [1]。

供給サイド:「生成が追いつかない」構造的問題

需要が急増する一方で、金の供給は構造的な問題を抱えており、需要の伸びに全く追いついていません。

金の供給限界と「鉱山生産量の伸び悩み」

金の価格は需要だけでなく、供給にも影響されます。

  • 有限な資源: 金は地球上の埋蔵量が限られた有限な資源です。
  • 採掘コストの増大: 採掘しやすい場所の金は掘り尽くされており、年々、鉱山からの生産量を増やすのが難しくなっています。新しい鉱脈の開発には巨大なコストと長い年月がかかるため、供給が需要に追いつきにくい構造になっています。


出所: 質屋かんてい局 前橋店 スタッフブログ [5]

世界の鉱山生産量は2010年代半ばからほぼ横ばいで推移しており [6]、新たな大規模鉱山の発見も稀です。現在知られている経済的に採掘可能な金の埋蔵量は約59,000トンとされ、これは現在の年間生産量で換算すると、わずか20年分にも満たない量です [7]。この「生成の限界」こそが、金価格の長期的な上昇を支える根源的な要因と言えるでしょう。

今後の見通しと投資への示唆


こうした状況を受け、複数の金融機関が強気の見通しを示しています。ソシエテ・ジェネラルやバンク・オブ・アメリカは、2026年末までに金価格が1オンスあたり5,000ドルに達するとの予測を発表しており [1] [8]、価格上昇への期待は依然として高いです。

しかし、リスク要因も存在します。世界的なインフレが鎮静化し、金融引き締めが再開された場合や、地政学リスクが劇的に解消された場合には、金から資金が流出し、価格が急落する可能性も否定できません。

個人の資産形成において、金は値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う投資対象であると同時に、資産ポートフォリオ全体のリスクを低減させる「保険」としての役割も担います。今回の歴史的な価格高騰は、その価値を改めて証明したと言えるでしょう。金価格の動向を注視し、その背景にある構造的な需給の変化を理解することは、今後の資産形成戦略を考える上で不可欠です。

結論


現在の金価格の歴史的最高値は、地政学リスクやインフレといった短期的な要因だけでなく、「生成が追いつかない」という供給の構造的な限界によって支えられています。旺盛な需要に対して供給が絶望的に追いつかないという状況が続く限り、金価格は長期的には上昇基調を維持する可能性が高いと考えられます。今後も、各国中央銀行の動向、世界の金融政策、そして新たな鉱山開発のニュースなどが、金市場の行方を占う上で重要な鍵となるでしょう。

参考文献

[1] Bloomberg. (2025, October 14). 金の最高値更新続く-来年5000ドルに向かうとの見方も. https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-14/T43VBPGP9VDN00
[2] なんぼや. (2025, October 17). 【更新:2025年10月】金の相場価格が過去最高・最低だった…. https://nanboya.com/gold-kaitori/post/priceofgold-highest-lowest/
[3] 田中貴金属工業株式会社. 月次金価格推移. https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/m-gold.php
[4] Reuters. (2025, October 7). 金相場が最高値更新、1オンス3977.19ドル 米利下げ観測も…. https://jp.reuters.com/markets/japan/O7HUK3XOJ5MGTK7AQOWVO2YDOQ-2025-10-07/
[5] 質屋かんてい局 前橋店. (2025, October 15). 【貴金属】金価格が高騰し続ける理由を徹底解説!安全資産「ゴールド」に今、何が起きているのか?. https://www.kanteikyoku-maebashi.jp/staff/2025/10/36819/
[6] グローバルノート. (2025, August 8). 世界の金生産量 国別ランキング・推移.
https://www.globalnote.jp/post-1922.html
[7] The Oregon Group. (2025, October 14). Is the world running out of gold? Why explorers are critical…. https://theoregongroup.com/commodities/gold/peak-gold-is-the-world-running-out-of-gold-why-explorers-are-critical-as-2050-looms/
[8] Investing.com. (2025, October 13). バンク・オブ・アメリカ、金の目標価格を5,000ドル/オンスに引き上げ…. https://jp.investing.com/news/commodities-news/article-1278885
commodities/gold/peak-gold-is-the-world-running-out-of-gold-why-explorers-are-critical-as-2050-looms/

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