「正貨」お金の中のお金 第二部
前回の第一部では
- 『金Gold』について
- ペーパーゴールドと現物ゴールドのメリットとデメリット
などをご紹介しました。
便利なペーパーゴールドですが危機が迫っています、と軽く触れたところで終わってしまったので、続きが気になっている方もいらっしゃいますよね。
第二部では
- バーゼル3について詳しく解説
- 英国にバーゼル3が適用される懸念
- 各国の中央銀行の動き
などをご紹介します。
Contents
バーゼル3でペーパーGold終焉か!?
なぜペーパーゴールドに危機が迫ってきたのか、第一部でもご説明したのですがおさらいしましょう。
バーゼル3は「銀行の健全性確保のための国際ルール」を取り決めた活動の第3弾のことを指します。
今後、2028年くらいまで銀行の体力があるのかを確認する動きをとるようです。
バーゼル3にはさまざまなルールの規制があるのですが、金に限っての話ではペーパー上で取引していた金に裏付けが必要になります。
経済危機などが起こっても、金の取引に問題が発生しないよう、銀行は体力をつける必要があるのです。
これまでは重たい金を動かすことなく、数字上の取引だけで売買ができていました。しかし、売買するにあたってお金を用意しなければいけないため、銀行としてはコストが増大します。
そのため、取引自体を取りやめる銀行がでてくるかもしれません。
【豆知識1】BIS(Bank for International Settlement):国際決済銀行って?
BIS(Bank for International Settlements、国際決済銀行)は、1930年に設立された中央銀行をメンバーとする組織で、スイスのバーゼルに本部があります。
ドイツの第1次大戦賠償支払に関する事務を取り扱っていたことが行名の由来ですが、それ以外にも、当初から、中央銀行間の協力促進のための場を提供しているほか、中央銀行からの預金の受入れ等の銀行業務も行っています。
BISには、2021年(令和3年)6月末時点で、わが国を含め63か国・地域の中央銀行が加盟しています。
日本銀行は、1994年(平成6年)9月以降、理事会のメンバーとなっています。
参照元(日本銀行):
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/intl/g05.htm/
まずはEUに適用されるバーゼル3
バーゼル規制とはどのようなものなのか、またバーゼル規制によってどのような懸念があるのかを解説します。
バーゼル規制(BIS規制)とは
バーゼル銀行監督委員会が公表している、国際的に活動する銀行の自己資本比率に関する国際統一基準のことです。
米国は1980年代前半に銀行の自己資本比率規制を強化しましたが、国際業務を営む世界の銀行が同じ条件で競争できるよう、米国はバーゼル銀行監督委員会にも自己資本比率規制の強化を提案しました。
その提案を受け、1988年に最初のバーゼル規制、すなわちバーゼルⅠが制定されました。
その後の金融自由化に伴い、銀行内部のリスク管理手法が発展していくなか、バーゼルⅠでは対応しきれなかった部分に対応すべく、2004年にバーゼルⅡが制定されました。
リーマンショックを経ての金融危機発生を受けて、欧米の多くの金融機関が破綻ないしは危機的な状況に至り、経済全体が不安定な状況に陥りました。
その反省を踏まえ、金融機関の健全性向上を目的として、2010年にバーゼルⅢが制定され、完全適用に向けて2013年から段階的に実施されており、2028年はじめには完全に実施される計画です。
【豆知識2】バーゼル合意とは?
バーゼル合意とは、バーゼル銀行監督委員会(注1)が公表している国際的に活動する銀行の自己資本比率(注2)や流動性比率等に関する国際統一基準のことです。
日本を含む多くの国における銀行規制として採用されています。
バーゼル合意は、1988年(昭和63年)に最初に策定され(バーゼルI)、2004年(平成16年)に改定されました(バーゼルII)。
その後、2007年(平成19年)夏以降の世界的な金融危機を契機として、再度見直しに向けた検討が進められ、2017年(平成29年)に新しい規制の枠組み(バーゼルIII)について最終的な合意が成立しました。
なお、バーゼル銀行監督委員会の常設事務局が国際決済銀行(Bank for International Settlements。略して「BIS」と言われます)にあることから、バーゼル合意は「BIS規制」と呼ばれることもありますが、BISとバーゼル銀行監督委員会は別組織のため、「バーゼル規制」がより正しい呼称と言えます。
参照元(日本銀行):
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/pfsys/e24.htm/
ペーパーゴールドに対する規制の強化を発表
2021年6月28日に、バーゼル3のペーパーゴールドに対する規制の強化についての発表がありました。
金取引の中心になっている国はイギリスです。
イギリスにバーゼル3が適用されると、金取引が止まってしまうのではないか、という懸念が拡がっています。
実際の金保有量に対して金の裏付けのない世界の取引(ペーパーゴールドも含む)額は、85.75倍です。
仮にこの状態でリーマンショック級の経済危機が起こった場合、金の現物として引き出そうとしても在庫がない事態が起こるかもしれません。
今回は金取引をする銀行に裏付けの資産を保有しなければならない、という規制強化が入ることで今後のペーパーゴールドの雲行きが怪しくなったわけです。
英国に適用となる2022年1月危機はどうなる
バーゼル3のペーパーゴールドに対する規制の強化により、混乱が起こるかもしれないと心配した方も多かった今回の発表。
バーゼル3がどうなるのかはもう答えが出ました。
大規模な混乱を避けるため、英国でのペーパーゴールドに対する規制は免除されるようです。
今回の規制で「金が暴騰する」と期待していた投資家の方には残念な結果になったのかもしれません。
しかし、目線を変えると「金の現物を現在の価格帯で購入できるチャンス」と捉えることもできるでしょう。
今回のバーゼル3適用外認定における背景はいろいろとあったのでしょうが、我々一般投資家においては金購入を検討する時間ができた、と喜ぶべきことなのかもしれませんね。
【豆知識3】「バーゼル3」金市場の根幹を揺らす 極論の流布には要注意
国際資本規制「バーゼル3」で金現物はリスクフリーの「中核的自己資本(Tier1)」とされ、現金と同等の安全資産とみなされる。
ロンドン市場内に保管されている金塊(筆者提供)
しかし、金がインターバンク(銀行間)などプロの間で売買される場合に、取引ごとに大量の金の現物をA銀行の金庫からB銀行へ移送するわけではない。実際には巨額の現物金の在庫を英ロンドンに置き、所有権移転を貸借記して決済する。これをロコ・ロンドン取引と呼び、スポット金売買の世界基準になっている。ロンドン市場の金価格はたとえば、金上場投資信託(ETF)の基準価格算定に使われる。ロンドン市場における巨額の金地金在庫は、大手商業銀行やイングランド銀行(BOE)の金庫にまで保管されている。以下、記事参照ください・・・。
参照元(日本経済新聞社):
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00015_R00C21A7000000/
各国中央銀行の『金』備蓄の新たな動き
Bloombergによると各国の中央銀行はここ一年、金の購入を控えていましたが購入意欲が復活しつつあるようです。
セルビアやタイなどが金の保有量を増やしており、ガーナは購入計画を発表しました。
インフレ加速の観測に加え、世界貿易回復で購入資金が潤ったことが背景にあります。中銀の金購入は10年ぶりの低水準に落ち込んでいましたが、回復すれば金相場の見通し押し上げにつながります。
参照元:Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-05/QVQTA4DWX2QC01
また、他の国についても
- ポーランド国立銀行:2年ぶりに金購入
- 中国:金の爆買い
- ロシア:金購入再開のニュース
- ボリビア:採掘された金は中央銀行が管理
と動き出しているニュースがありました。
各国中央銀行の『金』備蓄の増える予測
下記のグラフは中央銀行の過去の備蓄量を表したものです。
出典:Bloomberg:
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-05/QVQTA4DWX2QC01
世界経済の回復に伴い、中央銀行の金購入量が計約1,000トンに達する可能性があると予想しました。
地政学リスクなどのリスクヘッジを考慮した上での対策として、金を準備する意向があるとのことです。
第一部、第二部に渡って金について解説してきました。
データを調べていくうちに金について興味が湧いてきたので、第三部では『香港で実際に金貨を買いに行く!実践編』お話をしたいと思います。
どうぞご期待ください。
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