24年・25年の石油需要予想、引き下げへ|原油先物上昇の理由とは


2024年11月13日時点で、原油先物が若干上昇しました。一部のアナリストは、この値上がりについて「現物市場での一時的な供給不足の兆候が、長期的な石油需要の低迷予測を上回り、買いが入っている結果に過ぎない」と分析しています。実際、原油先物の価格は、石油輸出国機構(OPEC)が11月12日に発表した世界の石油需要予測の下方修正を受けて、2週間ぶりの安値近辺で取引されているのが現状です。今後の世界の石油需要はどのような動きをするのでしょうか。

石油需要見通しの減速


OPECは11月12日、2024年の世界石油需要予想を、前月予想の日量193万バレルから引き下げるという月報を発表しました。引き下げは4ヶ月連続で、2024年の需要見通しが下方修正されたということになります。OPECの月報によると、2025年の石油需要の伸びも引き続き減少する見通しで、さらに今後数年間に渡って減速していくと予想されています。この石油需要の下落傾向は、主にアメリカや中国、インドなど主要消費国を中心とした世界的な経済減速の影響が背景にあります。これらの国々で起こっているインフレや、地政学的リスクが、石油の需要に影響を与えているのです。

長期的な石油需要の展望


国際エネルギー機関(IEA)が公表した年次報告によると、世界の石油需要は2029年までにピークに達し、2030年からは減少に転じると予想されています。これは、大型トラックが燃料をディーゼルから液化天然ガス(LNG)に転換していることや、商業施設や住宅の建設の鈍化などによって、ディーゼル消費が低調になっていることが要因とされています。また、世界的な電気自動車(EV)の普及、発電の脱石油化など、昨今のさまざまな経済的課題やクリーンエネルギーへの移行も、石油の消費の抑制に拍車をかけています。

また、最新の予測では、次の10年間で大幅な供給過剰になると予想されます。IEAも、石油の需要は2030年までにピークに達するという予測を示していたものの、今回その時期を前倒し、2029年までには日量1億0560万バレルで頭打ちとなって2030年には小幅な減少の見込みです。こうした長期的な弱気の展望は、石油市場やOPEC加盟国、米国シェール産業に重大な影響を及ぼす可能性があり、石油産業は事業戦略や事業計画の見直しを迫られているのが実態です。

中国の急速な電動化


石油市場に大きな影響を及ぼしているのが中国です。IEAが発表している2024年の世界エネルギー見通しによると、産油国の足元を危うくしているのは「電動モビリティ」によって輸送手段に使用されるエネルギーが化石燃料から電気へと移行が進んでいることが原因といわれています。中国は、世界最大の石油輸入国にして、電気自動車(EV)普及を牽引している世界最大の国です。中国のEVの生産シェアは世界でも圧倒的であることに加え、国内新車販売に占めるEVのシェアは既に50%に達しています。

また、EV以外にも、太陽光パネルや蓄電池など、国策として急速に電動化を推し進めており、高額な輸入化石燃料への依存を急激に減らしています。中国は2023年までの10年間で、世界の石油需要の伸びの3分の2、天然ガスは3分の1を占めていた石油消費大国ですが、現在の強力な電動化推進政策によって、中国全体の石油需要は今後数年でピークに達する見通しです。このことが、今後の世界の石油需要にも大きな影響を与えるといわれているのです。

石油から電気への動き


中国の電力の需要はこれまで、GDPに応じて増加していたところが、2019年以降はGDPを50%も上回るペースで伸びています。実際に、中国のエネルギー最終消費に占める電力の割合は既に石油を上回っています。

このようなデータからも、中国は電動化で突出した国になりつつあることが見て取れます。そして、この電動化の動きは中国に限った話ではなく、世界的にも同じような傾向にあります。他国でも、国内新車販売に占めるEVのシェアは、遅かれ早かれ同じ水準に達するでしょう。また、中国に次ぐ石油消費大国である米国でも、電力需要が急激に拡大しています。その大きな要因となっているのが、近年急拡大する人工知能(AI)用データセンター向けの電力需要です。

米国の巨大IT企業は、生成AIに必要となるデータセンターのエネルギー需要の急増に対応しようと、こぞってあらゆる手段を講じています。米国エネルギー情報局(EIA)の分析によると、こうしたデータセンターの電気使用量は、2030年までに現在の2倍を超え、米国国内電気消費量の約9%にまで拡大すると予想されています。このように、中国やアメリカをはじめとした、世界的な潮流や電力需要、経済問題、政策などによって、世界の石油需要は減速しつつあり、電力需要への移行が始まっているのです。

良いものは残しつつ、人間社会にとって必要な変化は受け入れていきたいものです。

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