医師の資産運用|最低限知っておきたい高収入でも損する3つの落とし穴と対策

監修者情報
110Financial Support認定FP/シニア資産コンサルタント
才田 弘一郎(さいた・こういちろう/Koichiro Saita)
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。
「年収は高いはずなのに、なぜかお金が貯まらない」。多くの医師の方から多くこのようなご相談をいただきます。実は、高収入であるほど所得税・住民税の負担が大きくなり、手取り額は想像以上に少なくなります。さらに、長時間勤務で資産運用を後回しにしてしまうケースが非常に多いのが実態です。本記事では、医師が陥りやすい資産運用の落とし穴と、立場別の具体的な投資戦略を解説します。
この記事でわかること
- ・医師が高収入でもお金が増えない3つの原因とその対策
- ・勤務医・開業医・研修医の立場別おすすめポートフォリオ
- ・年収2,000万円の医師が10年間運用した場合のシミュレーション
Contents
- 1 医師こそ資産運用が必要な3つの理由
- 2 医師が陥りやすい資産運用の3つの落とし穴
- 3 医師におすすめの資産運用6選
- 4 勤務医・開業医・研修医 ― 立場別の資産運用戦略
- 5 医師の資産運用シミュレーション ― 年収2,000万円で10年運用した場合
- 6 今日から始める3ステップ
- 7 医師の資産運用は「仕組み化」が成功の鍵
- 8 グローバルな保障設計と資産運用は、110(ワンテン)Financial Support へ
医師こそ資産運用が必要な3つの理由

高収入でも手取りは思ったほど残らない ― 所得税・住民税で年収の半分が消える
医師の平均年収が1,200〜2,000万円と高水準ですが、日本の累進課税制度では所得が高くなるほど税率が上がります。年収2,000万円の場合、所得税・住民税・社会保険料を合わせると、手取りは約1,270万円にまで減少します。つまり、年収の約36%が税金と社会保険料で消えてしまうのです。
| 年収 | 所得税+住民税(概算) | 社会保険料(概算) | 手取り(概算) | 手取り率 |
| 1,500万円 | 約380万円 | 約120万円 | 約1,000万円 | 67% |
| 2,000万円 | 約580万円 | 約150万円 | 約1,270万円 | 64% |
| 3,000万円 | 約1,050万円 | 約170万円 | 約1,780万円 | 59% |
年収が上がっても手取り率は下がる傾向にあります。だからこそ、手取りの中からいかに効率的に資産を増やすかが重要になります。
忙しすぎて資産運用を後回しにしがち
医師の多くは週5〜6日勤務、当直やオンコールも含めると月の労働時間は200時間を超えることも珍しくありません。「いつか始めよう」と思いながら、気づけば40代、50代になっていたというケースをFPとして数多く見てきました。
資産運用で最も重要なのは「時間」です。30歳から月5万円を年利5%で運用すれば、60歳時点で約4,200万円になります。しかし、40歳から始めると同じ条件でも約2,400万円にとどまります。10年の差が1,800万円の差を生むのです。
働けなくなるリスク ― 医師のキャリア断絶と収入減少の恐怖
医師は高度な技術職であるため、手指の怪我や視力の低下、メンタルヘルスの問題で突然働けなくなるリスクがあります。特に外科系の医師にとって、手の怪我は文字通りキャリアの終わりを意味しかねません。勤務医の場合、退職すれば翌月から収入が大きく減少する可能性がありいます。
多くのご相談者様が陥りがちなのが、「自分は医師だから収入は安定している」という思い込みです。収入が安定しているからこそ、その期間に資産を積み上げ、万が一に備えることが重要です。
医師が陥りやすい資産運用の3つの落とし穴

落とし穴1 ― 「節税になる」という不動産営業を鵜呑みにする
医師は高収入であるがゆえに、不動産投資の営業ターゲットになりやすいです。「年収2,000万円なら、不動産投資で年間100万円の節税ができます」といったセールストークを受けた経験のある方も多いのではないでしょうか。
確かに不動産投資には減価償却による節税効果がありますが、物件の選定を誤れば空室リスクや修繕費で赤字になることもあります。FPの視点から言えば、節税目的だけで不動産を購入するのは危険です。物件のキャッシュフロー(家賃収入 – ローン返済 – 管理費 – 修繕費)がプラスであることを必ず確認してください。
落とし穴2 ― 保険を資産運用と混同する
「貯蓄型保険で資産形成もできます」という提案を受け、月額10万円以上の保険に加入している医師は少なくありません。しかし、日本国内の貯蓄型保険は返戻率が低く、10年運用しても元本をわずかに上回る程度です。
保険は「万が一の保障」、資産運用は「資産を増やす」こと。この2つの目的を混同してはいけません。保障は必要最小限の掛け捨て型で確保し、残りの資金を新NISAやiDeCo、投資信託に回す方が、資産形成の効率は格段に高くなります。
ただし、海外の貯蓄型保険は状況が異なります。シンガポールや香港の貯蓄型保険は日本の約6.5倍の利回りを提供する商品もあり、海外勤務中の医師にとっては有力な選択肢となります。
落とし穴3 ― 忙しさを理由に「おまかせ」してしまう
「忙しいから全部お任せしたい」という気持ちは理解できますが、金融機関や保険代理店に丸投げすると、手数料の高い商品を勧められるリスクがあります。特に、銀行窓口で勧められるファンドラップやラップ口座は、年間1〜3%の手数料がかかり、長期では数百万円の差になることもあります。
自分で判断する必要はありませんが、最低限「何に投資しているか」「手数料は何%か」「なぜこの商品を選んだのか」を説明してもらい、納得した上で進めることが大切です。
医師におすすめの資産運用6選

| 運用先 | リスク | 期待リターン | 最低投資額 | 手間 | 節税効果 | 向いている人 |
| 新NISA | 中 | 年3〜7% | 月100円〜 | 低 | 非課税 | 全ての医師 |
| iDeCo | 中 | 年3〜7% | 月5,000円〜 | 低 | 掛金全額控除 | 勤務医(節税重視) |
| 投資信託(積立) | 中 | 年3〜7% | 月100円〜 | 低 | なし | 忙しい医師 |
| 株式投資(高配当) | 中〜高 | 年3〜5%(配当) | 数万円〜 | 中 | なし | 投資経験のある医師 |
| 不動産投資 | 中〜高 | 年4〜8%(利回り) | 数百万円〜 | 高 | 減価償却 | 開業医(法人名義) |
| 海外保険・オフショア | 低〜中 | 年3〜6% | 月3万円〜 | 低 | 運用益の繰延 | 海外勤務・留学中の医師 |
1. 新NISA ― 非課税枠1,800万円をフル活用
2024年から制度が大幅に拡充された新NISAは、すべての医師にとって資産運用の第一歩です。年間360万円、生涯で1,800万円までの投資枠で、運用益がすべて非課税になります。
年収2,000万円の医師であれば、月30万円の積立で5年間で1,800万円の枠をフル活用できます。投資先は全世界株式インデックスファンド(オルカン)やS&P500連動型が王道です。
2. iDeCo ― 掛金全額所得控除で節税効果が大きい
iDeCoは掛金が全額所得控除となるため、高収入の医師ほど節税効果が大きくなります。勤務医の場合、月額2.3万円(年間27.6万円)が上限ですが、所得税率33%+住民税10%の医師なら、年間約11.9万円の税金が戻ってきます。
ただし、60歳まで引き出せないというデメリットがあります。流動性が必要な方は、新NISAを優先し、余裕資金でiDeCoを活用するのがバランスの良い戦略です。
3. 投資信託(インデックス型)― 忙しい医師こそ積立
忙しい医師にとって、個別株の売買タイミングを考える必要がない積立型の投資信託は最適な選択肢です。毎月一定額を自動で積み立てるドルコスト平均法を活用すれば、相場の上下に左右されず、長期的に安定したリターンが期待できます。
おすすめは信託報酬が年0.1%以下の低コストインデックスファンドです。eMAXIS Slimシリーズや楽天VTIなどが代表的な商品です。
4. 株式投資 ― 高配当株で不労所得をつくる
投資に興味がある医師には、高配当株による配当収入の構築もおすすめです。日本株であれば年間配当利回り3〜5%の銘柄を複数保有することで、年間100万円以上の配当収入を得ることも可能です。
ただし、個別株には価格変動リスクがあります。個別株投資に充てる資金は、全体のポートフォリオの20〜30%以内に抑えることをおすすめします。
5. 不動産投資 ― 節税と家賃収入の両立(ただし注意点あり)
開業医が法人名義で不動産を保有する場合、減価償却費を経費計上できるため節税効果があります。また、家賃収入はリタイア後の安定収入源にもなります。
ただし、前述の通り「節税目的だけの不動産投資」は危険です。購入前に必ずキャッシュフローシミュレーションを行い、空室率や修繕費を織り込んだ上で判断してください。
6. 海外保険・オフショア投資 ― 海外勤務・留学中の医師の選択肢
海外の大学病院で研究している医師や、国境なき医師団などで海外勤務している方は、日本のNISAやiDeCoが利用できない場合があります。このような方にとって、香港やシンガポールの貯蓄型保険やオフショア投資商品は有力な代替手段です。
シンガポールの貯蓄型保険は日本の約6.5倍の利回り(10年運用で3.60% vs 0.55%)を提供しており、運用中の課税が繰り延べられるメリットもあります。帰国後にNISAを再開すれば、海外資産+国内資産の「二刀流」で効率的な資産形成が可能です。
勤務医・開業医・研修医 ― 立場別の資産運用戦略

勤務医 ― 安定収入を活かした積立型がベスト
勤務医は毎月の給与が安定しているため、新NISA+iDeCoの積立を最大限に活用するのが王道です。月10万円を新NISAに、月2.3万円をiDeCoに回すだけで、30年後には約5,000万円以上の資産を築ける計算です。
開業医 ― 法人資産と個人資産を分けて設計する
開業医は法人の利益と個人の資産を分けて考える必要があります。法人名義では不動産投資や法人向け生命保険を活用した節税、個人名義では新NISAとiDeCoを並行して行うのが効果的です。
研修医 ― 月1万円からでも「始める」ことが最大の武器
研修医の年収は300〜400万円程度ですが、資産運用は「いくら投資するか」よりも「いつ始めるか」の方が重要です。月1万円でも新NISAで積立を始めれば、投資の仕組みを体で覚えることができます。これが将来、年収が上がった時に大きな差を生みます。
海外勤務・留学中の医師 ― NISAが使えない期間の戦略
海外の大学病院や研究機関に勤務している医師は、日本の非居住者となるためNISAの新規積立ができません。しかし、海外にいるからこそ活用できる選択肢があります。
FPの視点から最もおすすめなのは、NISAが使えない期間を「海外でしかできない資産形成の期間」と捉えることです。キャピタルゲイン非課税の国(シンガポール・香港)で運用すれば、日本では得られないスピードで資産を増やせる可能性があります。
| 立場 | おすすめポートフォリオ | 月額目安 |
| 勤務医(年収1,500万以上) | 新NISA 60% + iDeCo 20% + 個別株 20% | 月12〜15万円 |
| 開業医 | 法人: 不動産+法人保険 / 個人: 新NISA + iDeCo | 法人・個人合計で月20万円〜 |
| 研修医 | 新NISA 100%(インデックス積立) | 月1〜3万円 |
| 海外勤務医 | 海外保険 50% + 現地証券口座 30% + 米ドル預金 20% | 月5〜10万円 |
医師の資産運用シミュレーション ― 年収2,000万円で10年運用した場合

ケース1 ― 新NISA+iDeCoで月10万円積立
新NISAに月7.7万円、iDeCoに月2.3万円、合計月10万円を全世界株式インデックスファンド(期待リターン年5%)で10年間積立した場合。
ケース2 ― 海外保険で月5万円+国内投資信託で月5万円
海外勤務中の医師がシンガポールの貯蓄型保険(期待リターン年3.6%)に月5万円、帰国後に国内の投資信託(期待リターン年5%)に月5万円を配分した場合。
| 項目 | ケース1(国内完結) | ケース2(海外+国内) |
| 月額投資額 | 10万円 | 10万円 |
| 10年後の資産額 | 約1,550万円 | 約1,480万円 |
| 節税効果(10年累計) | iDeCo: 約119万円 | 海外: 運用益非課税 |
| 流動性 | NISA: 高 / iDeCo: 低 | 海外保険: 低 / 投資信託: 高 |
| 特記事項 | 全額非課税で受取可能 | 帰国後にNISA併用で加速可能 |
どちらのケースも10年で約1,500万円の資産形成が可能です。ケース1は国内完結でシンプル、ケース2は海外勤務期間を活かした戦略的な設計です。
今日から始める3ステップ

ステップ1 ― 月の手取りから「投資に回せる金額」を把握する
まず、月の手取り額から生活費と貯蓄(半年分の生活費)を差し引き、「投資に回せる金額」を算出します。目安として、手取りの20〜30%を投資に回すのが理想です。年収2,000万円(手取り約105万円/月)の勤務医であれば、月20〜30万円が目安になります。
ステップ2 ― 新NISA口座を開設し、積立設定をする
SBI証券や楽天証券などのネット証券で新NISA口座を開設し、全世界株式インデックスファンドの積立設定を行います。この設定が完了すれば、毎月自動で引き落とし・投資が行われるため、忙しい医師でも手間なく資産運用を続けられます。
ステップ3 ― 年1回、ポートフォリオを見直す
年に1回、資産配分が当初の計画からずれていないかを確認します。株式の比率が高くなりすぎていたら一部を債券に、逆に低くなっていたら追加投資するなどのリバランスを行います。
よくある質問(FAQ)
Q1. 医師は忙しくても資産運用できますか?
はい、できます。新NISAの積立投資であれば、最初に口座開設と積立設定を行えば、あとは毎月自動で投資が行われます。毎日チャートを見る必要はありません。
Q2. 研修医で年収が低くても始めるべきですか?
始めるべきです。資産運用は「金額」よりも「期間」が重要です。月1万円でも25歳から始めれば、35歳から月5万円で始めた場合よりも65歳時点の資産額が大きくなります。
Q3. 不動産投資の営業を受けていますが、やるべきですか?
慎重に判断してください。不動産投資自体は有効な手段ですが、「節税になる」というセールストークだけで判断するのは危険です。キャッシュフロー(家賃収入 – ローン返済 – 管理費 – 修繕費)がプラスになる物件かどうかを、第三者のFPに確認してもらうことを強くおすすめします。
Q4. 海外留学中はNISAやiDeCoはどうなりますか?
NISA口座は、会社命令による海外赴任であれば最長5年間の継続が可能です(2024年〜主要ネット証券が対応)。ただし、自己都合の海外移住の場合は口座の閉鎖が必要です。iDeCoは2022年の法改正で海外居住者も加入可能になりましたが、国民年金の任意加入が条件です。
Q5. 医師向けの資産運用の本でおすすめはありますか?
医師に特化した資産運用本は少ないですが、投資の基本を学ぶには『ほったらかし投資術』(山崎元・水瀬ケンイチ著)が最適です。医師特有の税金対策や海外投資については、専門のFPに個別相談するのが効率的です。
Q6. FPに相談する場合、医師専門のFPを選ぶべきですか?
医師専門である必要はありませんが、高収入者の税金対策や、海外勤務時の資産運用に詳しいFPを選ぶことが重要です。銀行や証券会社に所属するFPは自社商品を勧める傾向があるため、独立系のFP(IFA)に相談するのがおすすめです。
医師の資産運用は「仕組み化」が成功の鍵

医師の資産運用で最も重要なのは、忙しくても続けられる「仕組み」を作ることです。新NISAとiDeCoの積立設定を一度行えば、あとは自動で資産が積み上がっていきます。
高収入であるにもかかわらずお金が貯まらない原因は、税負担の重さと「後回し」にする習慣にあります。月10万円の積立を30歳から始めるか、40歳から始めるかで、60歳時点の資産額は約1,800万円の差が生まれます。
「いつか始めよう」ではなく、「今日、口座を開設する」。それが、医師の資産運用における最も効果的な第一歩です。
※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。税務に関する詳細は、税理士等の専門家にご相談ください。
グローバルな保障設計と資産運用は、110(ワンテン)Financial Support へ

『110 Financial Support』では、海外在住者・海外移住検討者の資産形成を、世界6カ国13拠点・日本人ライフプランナー20名以上在籍・サポート実績累計27,000名以上(米国・ハワイ含むグループ累計)の体制でサポートしています。 海外資産運用では、税務・現地情勢・物価上昧・出口戦略など多岐にわたる要因を考慮することが必要です。
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