海外在住で親の介護が必要になったら?海外赴任・海外移住者が備える5つの方法と手続き【2026年版】

監修者情報
110Financial Support認定FP/シニア資産コンサルタント
才田 弘一郎(さいた・こういちろう/Koichiro Saita)
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。
「親が転倒して入院した」「認知症の兆候が出てきた」。そのような知らせを受けても、海外で働いていると、日本にいる親の異変にすぐ駆けつけることができません。海外駐在員・海外移住者にとって、親の介護は「いつか来る」ではなく「突然来る」問題です。
生命保険文化センターの調査によると、介護期間の平均は55ヶ月(4年7ヶ月)、費用の総額は平均542万円に上ります。海外在住者はこれに加えて、緊急帰国の渡航費、日本の介護保険制度の適用可否、資産の国際移動といった固有の課題を抱えています。
この記事では、110 Financial Supportが、海外在住の日本人2,000名以上をサポートしてきた経験をもとに、「まだ元気なうちに何を準備すべきか」を5つのステップで解説します。
この記事でわかること
- 海外在住者が親の介護で直面する5つの固有リスクと、それぞれの事前対策
- 日本の介護保険制度は海外在住者(非居住者)にどう適用されるか
- 介護費用を「親の資産」「自分の資産」「公的制度」の3層で備える方法
Contents
海外赴任・海外移住で親の介護が深刻になる3つの理由

日本国内の遠距離介護(例: 東京在住で地方の親を介護)と、海外からの遠距離介護には、決定的な違いがあります。
| 課題 | 国内の遠距離介護 | 海外からの遠距離介護 |
|---|---|---|
| 移動コスト | 新幹線往復2〜3万円 | 航空券往復5〜15万円+宿泊費 |
| 移動時間 | 日帰り〜1泊 | 片道5〜10時間+時差 |
| 緊急帰国の柔軟性 | 当日〜翌日 | 最短でも翌日〜2日後 |
| 介護保険の適用 | 通常通り | 住民票を抜いている場合は対象外 |
| 日常の見守り | 電話・訪問が容易 | 時差+通信環境の制約 |
| 行政手続き | 本人または委任状で対応 | 委任状+認証手続きが必要な場合あり |
特に問題になるのは、帰国するたびに往復のコストと時間がかかること、帰国中の現地業務の調整が毎回必要になること、そして帰国と帰国の間に親のそばにいてくれる体制を誰が担うかという3点です。
ステップ1|親の老後について家族で話し合う(海外移住前が理想)

介護が始まってから慌てて家族会議を開くのでは遅すぎます。特に海外在住者は、物理的に集まれる機会が限られるため、帰省時や家族旅行の機会に以下を確認しておくことが重要です。
確認すべき5項目:
- 親の健康状態と持病(かかりつけ医の連絡先)
- 親の資産状況(預貯金・不動産・保険・年金額)
- 介護が必要になった場合の希望(在宅か施設か)
- きょうだいとの役割分担(現地対応は誰が担うか)
- 委任状・成年後見制度の事前準備
「親の資産について聞くのは気が引ける」という声は多いですが、介護費用の総額は平均542万円(一時費用47万円+月額9万円×55ヶ月)に上ります。誰がどの費用を負担するかを事前に決めておかなければ、介護が始まった瞬間にきょうだい間のトラブルに発展します。
ステップ2|海外在住者の介護保険の手続きと適用条件を理解する

海外在住者が最も誤解しやすいのが、日本の介護保険制度の適用範囲です。
| 状況 | 介護保険の適用 | 保険料 |
|---|---|---|
| 住民票が日本にある(短期赴任等) | 適用される | 支払い義務あり |
| 住民票を抜いて海外転出済み | 適用されない | 支払い義務なし |
| 帰国して住民票を戻した場合 | 即日適用される | 転入日から支払い開始 |
出典: 川崎市「海外に滞在する場合、介護保険料を支払う必要があるのか」 / 福岡市 同様のFAQ
重要なポイント: 帰国して住民票を戻せば、過去の未納保険料を遡って支払う必要はなく、即座に介護保険サービスを利用できます。 ただし、要介護認定の申請から認定結果が出るまでに通常30日程度かかるため、「帰国してすぐに介護サービスを使いたい」という場合は、暫定ケアプラン(暫定プラン)の利用を地域包括支援センターに相談してください。
また、40歳以上の海外駐在員で、日本の会社から給与を受けている場合(在籍出向等)は、住民票を抜いていても健康保険の被保険者資格が継続し、介護保険料の支払い義務が残るケースがあります。免除手続きを行っていない場合は確認が必要です。
ステップ3|遠方からの介護方法を選ぶ — 帰国・遠距離・呼び寄せの判断基準

介護が始まったとき、海外在住者には大きく3つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを整理します。
| 選択肢 | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 帰国して介護 | 直接ケアできる。親の安心感が大きい | キャリアの中断。海外資産の整理が必要 | 一人っ子で親の介護を担う必要がある場合。親の状態が重い場合 |
| 遠距離介護 | キャリアを維持できる | 費用がかさむ。精神的負担が大きい | きょうだいが日本にいる。親の要介護が軽〜中度の場合 |
| 親を海外に呼び寄せ | 日常的にケアできる | ビザ・医療制度・言語の壁。親の環境変化 | 親が比較的元気。長期滞在ビザを取得できる場合 |
出典: 介護福祉事業情報ラボ「海外移住後に親の介護が必要になった場合の4つの対応方法」
110 Financial Supportへの相談で最も多いのは「遠距離介護」のケースです。特に海外在住の一人っ子の場合、きょうだいに頼れないため「自分が帰国するしかない」と思い込みがちですが、地域包括支援センター+自費サービスの組み合わせで遠距離対応が可能なケースは少なくありません。
いずれの場合も必ず検討すべきなのが、帰国の判断基準を事前に決めておくことです。「要介護3以上になったら帰国を検討する」「認知症の診断が出たら6ヶ月以内に判断する」など、感情ではなく基準で判断できるようにしておくと、いざというときにパニックにならずに済みます。
ステップ4|介護費用を「3層」で備える

介護費用の平均は月額9万円(在宅5.3万円/施設13.8万円)、期間は平均4年7ヶ月です。しかし、これはあくまで平均値であり、要介護5で施設に入居する場合は月額20万円以上、期間が10年を超えるケースも珍しくありません。
海外在住者は以下の「3層」で備えることを推奨します。
| 層 | 内容 | 具体的な準備 |
|---|---|---|
| 第1層: 親の資産 | 親自身の年金・預貯金・保険 | 親の資産状況を把握、年金額だけで在宅介護費をカバーできるか試算 |
| 第2層: 公的制度 | 介護保険・高額介護サービス費・医療費控除 | 帰国時の介護保険適用条件を確認し、高額介護サービス費の上限額を把握 |
| 第3層: 自分の資産 | 緊急帰国費用・不足分の補填・施設入居の初期費用 | 最低200万円の「介護準備金」を流動性の高い資産で確保 |
出典: 生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」
特に第3層「自分の資産からの補填」は、海外在住者特有の注意点があります。海外口座から日本の親の口座に送金する場合、CRS(共通報告基準)により送金情報が税務署に報告される可能性があります。また、年間110万円を超える送金は贈与税の対象となる可能性があるため、介護費用であることを証明できる記録(領収書・介護サービス契約書等)を残しておくことが重要です。
ステップ5|「見守り体制」と「緊急時フロー」を構築する
海外在住者が最も不安を感じるのは、「親に何かあったとき、すぐに対応できない」という点です。以下の体制を事前に構築しておくことで、その不安を大幅に軽減できます。
日常の見守り体制
- 地域包括支援センターへの事前相談(介護予防・見守りサービスの情報収集)
- 見守りカメラ・IoT機器の導入(親の同意が前提)
- 週1回以上のビデオ通話の習慣化(変化に早く気づくため)
- 保険外の自費介護サービスの事前登録(インターネット完結型が海外在住者に適しています)
緊急時フロー(事前に決めておくこと)
- 親に異変 → 誰に第一報が入るか(きょうだい・近隣・ケアマネ)
- 第一報 → 海外の自分に連絡する手段(電話+LINE等の二重化)
- 緊急帰国の判断基準(入院・要介護認定・認知症診断)
- 航空券の即時手配方法(マイル口座・クレジットカードの緊急発券)
- 帰国中の現地業務の代替体制(上司との事前合意)
「介護が始まってから調べる」のでは遅すぎます。まだ親が元気なうちに仕組みを作っておくことが、海外在住者にとって最も重要な準備です。
まとめ|海外在住者の介護準備は「親が元気なうち」がすべて

海外在住者が親の介護に備えるために必要なのは、次の5ステップです。
- 家族で介護の方針を話し合う(資産状況・希望・役割分担)
- 介護保険制度の適用条件を正しく理解する(住民票の有無が分かれ目)
- 「帰国・遠距離・呼び寄せ」の判断基準を事前に決める
- 介護費用を「親の資産・公的制度・自分の資産」の3層で備える
- 見守り体制と緊急時フローを構築する
110 Financial Supportでは、海外在住者の資産設計において、「親の介護リスク」を織り込んだライフプランニングを標準で行っています。「介護準備金をどの通貨で、どこに置いておくべきか」「海外資産を日本に移す最適なタイミングはいつか」といったご相談にも対応しています。まずは現状の資産状況を整理することから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 海外在住中に親の介護が始まったら、必ず帰国しなければなりませんか?
必ずしも帰国する必要はありません。きょうだいとの役割分担、介護保険サービスの活用、保険外の自費サービス(インターネット完結型)を組み合わせることで、遠距離介護は十分に可能です。ただし、要介護度が重い場合や一人っ子の場合は、帰国を含めた判断が必要になります。
Q2. 住民票を抜いて海外に住んでいますが、帰国したらすぐに介護保険は使えますか?
帰国して住民票を戻せば、過去の未納保険料を遡って支払う必要はなく、即座に介護保険の被保険者になれます。ただし、要介護認定の結果が出るまでに通常30日程度かかります。急ぎの場合は、暫定ケアプランの利用を地域包括支援センターに相談してください。
Q3. 親の介護費用はどのくらいかかりますか?
生命保険文化センターの2024年調査によると、一時費用の平均は47万円、月額費用の平均は9万円、介護期間の平均は55ヶ月(4年7ヶ月)です。総額では平均542万円になります。ただし施設入居の場合は月額13.8万円以上、要介護5では月額20万円超になるケースもあります。
Q4. 海外から親に送金する場合、税金はかかりますか?
年間110万円を超える送金は贈与税の対象になる可能性があります。ただし、親の介護費用として「扶養義務者間の生活費の援助」に該当する場合は非課税です。介護費用であることを証明できる領収書・契約書を保管しておくことが重要です。
Q5. 海外在住者向けに介護と資産の相談ができるところはありますか?
介護そのものの相談は、親の居住地の地域包括支援センターが窓口になります。一方、介護費用の資産準備・海外口座の整理・帰国後の資産設計については、海外在住者専門のライフサポーターに相談するのが有効です。110 Financial Supportでは、介護リスクを織り込んだライフプランニングを提供しています。
※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。税務に関する詳細は、税理士等の専門家にご相談ください。
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