【対談企画】金融業界のプロが伝授する、投資詐欺の被害に遭わないためにできる対策とは?

近年、FacebookやInstagramの広告で、ホリエモンや前澤氏といった実業家・著名人の画像や動画を使用した詐欺広告や、SBI証券や松井証券などのロゴを無断利用して証券会社を装う偽広告が急増しています。これによる被害も増加の一途をたどっています。

ニュースではよく耳にするこれらの投資詐欺ですが、いつ自分の身に降りかかるかわかりません。自分は詐欺だと感じていなくても、催眠術のように知らず知らずのうちに多額のお金を投じてしまい、もしかしたら人生を狂わせてしまうきっかけとなるかもしれません。

今回は、近年社会問題となっているこのような詐欺に対して、日本および海外の金融業界で20年以上お客様の資産運用をサポートしているシニアコンサルタントの才田氏に、投資詐欺の被害を避ける具体的な方法についてインタビューを行いました。

INSURANCE 110 DIRECTOR/シニアコンサルタント
才田 弘一郎

日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。

巧妙な投資詐欺に関する事案

最近話題の投資詐欺に関するニュース

昨今は円安の影響や新NISA制度の開始に伴い、保有している円資産をうまく活用して資産を増やしたいと考える人の心理につけ込み、巧妙な手口でお金を騙し取る事案が増えています。

警視庁の発表によれば、2023年に警察が把握したSNS型の投資詐欺は全国で2,000件以上あり、そのうち1億円以上の被害が26件、被害総額は約278億円に達しています。インターネットの発達により、このような被害はこの1年だけで10倍以上に急増しているといったデータもあります。

とあるニュースで、関東地方の40代夫婦は、Facebook広告を見て投資相談会に参加し、信頼できる「先生」と思い込まされ、1億円をだまし取られる詐欺に遭ったと被害を訴えました。SNS広告の審査チェックが不十分であることから、META社などプラットフォーマー(広告媒体)側の責任も追求されていますが、こうした事例が我々の身近にも潜んでおり、まずは自分が被害に遭わないための対策を講じることが重要です。

投資詐欺の最近の傾向

詐欺の手口はますます巧妙化しており、被害に遭わないためには「うまい話」を疑い、公式サイトで確認するなどの対策が不可欠です。しかし、金融リテラシーやウェブに明るくない人にとって、自らの手で防衛するのが難しい場面もあるかと思います。今回はこうした状況にメスを入れるべく、お金を取り扱うプロに、近年の投資詐欺の傾向と対策について話を伺いました。



高林:「才田さん、本日はよろしくお願いいたします。最近はなぜ投資詐欺の被害が増えているのでしょうか。」

才田:「よろしくお願いいたします。まず、人がなぜこのような詐欺被害に出会ってしまうのかというお話ですが、人間はどうしても特別なもの、魅力的なもの、限定的なものに弱い性質があり、これは1,000年前から今もずっと変わっていません。

そのため、『今だけ』『ここだけ』『あなただけ』といった限定的な提案を近しい間柄の人からされた場合に、騙されてしまうケースが発生するのですが、ここは注意が必要です。

特にここ20年に関してはスマホの普及が進み、詐欺の敷居も低くなっているのに加えて、詐欺に引っかかる・踏み込む人のハードルも低くなっているのが、近年の状況だと見ています。」

高林:「詐欺提案でよく使われる疑わしい言葉遣いやフレーズがあれば、教えてください。

才田:  「『リスクゼロ』や『確実な利益』などの保証を含む表現は非常に疑わしいですよね。また、『今すぐ行動しないと損』といった緊急性を促すフレーズも注意が必要です。

やはり、緊急性を求める提案の場合、瞬間的に反応しないことが大切です。よくある『この画面を消したら二度と表示されません。』といったような表示がスマホで出たりしますが、そうしたものは何回でも出てきますし、仮に本当に良い話だったとしても『なくなったら自分には縁がなかった』という割り切る考えが必要だと思います。」

高林:「特に最近ニュースで話題となっている有名人を使った詐欺広告含め、近年の投資詐欺の傾向を教えてください。

才田:「広告宣伝等に出ている人が有名人だったり知人など近しい人・身近な人からの紹介の場合ほど、より一層注意をしなければいけないと感じています。

最近の事例としては、クラウドファンディングや仮想通貨関連の詐欺も増えています。たとえばインターネット媒体経由の動画でとある有名人が『こちらは私が発行に関わっているコインです。』などとうたう場面などもあったりします。有名人であるがゆえに『彼がやっているのであれば間違いないよね。』と思わせて、多額の投資を促すケースです。」

これはいわゆるICO(Initial Coin Offering)といって暗号資産(仮想通貨) の新規発行によって資金調達する方法ですが、これは昔から存在するような俗に言う『未公開株詐欺』と同じ類のものです。

『うちは今から上場しますが、上場してしまうと買えなくなるので、今のうちに買っておきましょう』という謳い文句で、投資を促します。その形が仮想通貨に変わった形となります。」

高林:「先ほど話に出たクラウドファンディングも、近年登場したものだと思いますが、クラウドファンディングに関連する投資詐欺についても何かご存知でしょうか。

才田:「そうですね、クラウドファンディングの場合、お金を集めた一方で『ビジネスが成立しませんでした。』といった形で終わり、結果的にお金だけ失うといった事案も存在します。

クラウドファンディングはどちらかと言うと『期待値』や支援したいという気持ち、人間の良心に漬け込んだようなお金集めの一種だと思います。

たとえば金融機関から資金調達をしようとすると『貴方のビジネスプランだとお金貸せません』とか『金利がこのくらい高くないと貸し出しできません』といった理由で断れるケースもありますが、クラウドファンディングの場合は『この人を応援したい』『そういったものができたら嬉しい』など、期待値でお金を集めることができています。

もちろん、クラウドファンディングを適切に活用している方がいらっしゃるのも事実ですが、これらの仕組みを悪用してお金を騙す人もいることも知っておくと良いと思います。」

投資詐欺の見分け方について

投資詐欺を識別する際の危険な兆候

高林:「投資詐欺を識別する際に注意すべきサイン、危険な兆候はありますか?

才田:  「まず、不自然に高いリターンを約束する提案には特に注意が必要です。例えば、フィリピンのどこかの銀行に預けると月利8%の高いリターンが得られるなどの高いリターンは、やはり現実的ではありませんよね。

高林:「月利8%というと、たとえば100万円を預けたら、毎月8万円が入ってくるってことですよね。」

才田:「そうなりますね。よくよく計算したらお分かりかと思いますが、そのようなものは残念ながら存在しません。カンボジアやフィリピンの銀行であれば、もしかしたら年利8%くらい出してくれるところはギリギリあるかもしれませんが。」

才田:「月利8%=年間96%の配当を我々に与えてくれるということは、その銀行は年間96%以上儲けられる投資をどこかにしていないといけないことになりますが、そんな投資場所がどこになるのか、ということをまずは疑う必要がありますよね。

とはいえ、仮想通貨で言えば、そうした『一撃必殺』のような大当たりが存在しているのも事実なので、全く0とは言い切れないのが難しいところです。ですが、仮想通貨で上手く稼げているような人たちは、ただ他人の言うことを鵜呑みにしたわけではなく、様々なことをかなり研究をした上で投資で成功されているのだと思います。

ですので、第三者の言いなりになってお金を払うことは気をつけるべきと、自戒をこめて忠告しておきます。」

信頼できる投資案件と詐欺案件の見分け方

高林:「仮にリターンの金額が現実的だった場合に、その投資案件が信頼できるものか、詐欺案件かを見分ける方法があれば、教えていただけますか?

才田:「まず、そのオイシイ話がどういうところから来たのか、というのは最初に注意しなければいけない点ですね。そのような儲け話は意外に身近なところから来ていたりします。

有名なYouTuberが言っていたり、少し古い間柄のご友人など、断りにくいような関係性の方の元から来ていたりします。友人知人からの『今だけ』『ここだけ』『あなただけ』という謳い文句にはやはり注意が必要ですね。」

高林:「近しい間柄だからこそ、疑わずにして鵜呑みにしてしまうことがあるいうことですね。」

才田:「大学時代のお友達からとか、先輩後輩などの断りにくい関係性だったとかはなおさらですね。

例えば、最初だけ試しに10万円ほどお金をつぎ込んだ結果、その翌月に本当に8%返ってきたたため信じてしまい、そのあとさらに何倍ものお金をつぎ込んだら、その後音沙汰なくなってしまった、というような話はよくある例です。」

高林:「本当に言われた通りにお金が返ってきたら、より一層信じてしまいますもんね。」

才田:「他にも知人からの紹介における被害という意味だと、連鎖型マーケティング、マルチレベルマーケティングというものも存在しますが、このような場合にもビジネスモデルが果たして成立しているのかということも疑う必要があります。

運営側からすると、その情報を広げてくれることは広告宣伝費ですといった話が出ることもあるんですが、たとえば1年間で金額が倍にするような仕組みの場合、運営側はさらに3倍、4倍にする運用でないと儲からないわけです。

それなのに、さらにその中間紹介者にお金を渡すということは必ずどこかに限界値があることなので、そこは冷静になって判断する必要があります。」

高林:「ありがとうございます。他にも、信頼できる投資案件かどうかを見分ける方法はあったりしますか?

才田:「怪しいと思った時、冷静な人はまず調べると思います。

そこで調べたときに、『これは良い』と言う意見と『これは詐欺』という情報のどちらかが出てきたりしますが、それらの情報を精査してうまく判断する必要があります。

運営機関がしっかりしたものかどうか見極める、という話でいくと、日本国内に住んでいる方は、日本の金融庁の中に登録されていない『怪しい未登録者リスト』といった金融業者一覧を確認することができます。

販売業者側でもライセンスが必要なので、未登録で日本でバンバン営業している会社は怪しい可能性があるため、こうした信頼できる金融機関の公式サイトや金融庁のウェブサイトを辿って疑ってみる必要があります。」

高林:「そうしたものがあるんですね。これはチェックしておこうと思います。」

参考サイト:無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について 金融庁

才田:「特別な情報に出会ったとき、人間はどうしても『自分の選択は正しいはず』という正常性バイアスがかかってしまうところではありますが、提案元が正規の証券会社や金融機関であるかどうか、具体的な実績や運営歴があるかどうかを確認することが重要です。」

高林:「具体的な投資実績を確かめる方法もあったりしますか。

才田:「実績を確認することはもちろん大事なのですが、最近はこのあたりの詐欺レベルもかなり巧妙になっています。

たとえば相手からPDFファイルを見せられて『これが海外の銀行から認められている正式に登録されている書類だよ』と言って開示してくることもあるのですが、どうでしょうか。ちょっと考えたら、最近はこのような書類も加工して簡単に作ることができますよね。」

高林:「そうですよね。ですが、もしその書類に外資系の会社のロゴがきちっと並んでいたり、なおかつそれが全て英語だったりしたら、もしかするとなんとなく信用してしまうかもしれませんね。」

才田:「かなり判別が難しいですよね。もう少し詳細に調べるとしたら、たとえばその書類に記載されている登録住所を、GoogleMAPで実在するものか調べてみたりなどできると思います。

もし、その住所がそもそも検索できなかったり、どこかの変な村の位置が出てきたりしたら、そこでも疑った方がいいですよね。」

投資詐欺の被害に遭わないためにできる対策とは

怪しい案件を持ちかけられたときの切り返し方

高林:「この業界の専門家である才田さんが、もし怪しい投資提案を持ちかけられた場合、その方に対してどのような質問を投げかけますか?

才田:「実は6〜7年ほど前に、ハワイのリゾートで不動産の物件を買うことも含めて一緒に展開しませんか?と相談された話がありました。『1期がもう完売したので、今は2期を売るために動いています。』と言われ、話を聞く限りは非常に魅力的なプランだったと思います。

ですが、そもそもそんな大きなリゾート融資であれば、銀行がお金を出すんじゃないのか?と、不思議に思う部分は正直ありました。そこで、『1期は結構良い売れ行きで完売したんでしょう?それだったら、そのときの広告宣伝のチラシとか、どうやって展開したのかという1期の実績を見せてくれ』と伝えました。」

高林:「どのような返事がありましたか?」

才田:「そしたら、その方からは二度と連絡が来なくなりました(笑)。なかなか良い質問ができたなと思いましたが、まずはなぜ銀行がその投資に対してお金を出さないのかを疑ったこと、次にそのリゾートが本当に売れているという証拠や、運営している会社の住所の確認を求めることですかね。」

高林:「素人だと本物の投資案件かどうか見極めるのが難しいところではありますが、たしかに過去実績や住所が実在するものかどうかをチェックすることは重要ですよね。」

才田:「もう1つ実績を確かめる方法としては、お金を投じる前に専門家や信頼できる第三者に意見を求めることもできます。

未登録業者リストの確認に加え、セカンドオピニオンを活用し、信頼できる企業や専門家に意見を求めたり、また詐欺掲示板やX(旧Twitter)などのSNSで同様の詐欺の報告がないかも確認すると良いでしょう。」

投資詐欺の被害を未然に防ぐ初期対策

高林:「最後に、投資詐欺の被害を未然に防ぐ対策について教えてください。

才田:「繰り返しとなりますが、まずはその話がどこから来ているのかを確認しましょう。有名なインフルエンサーや近しい知人からの紹介であっても、鵜呑みにせずに疑うことが大切です。

次に『今すぐに決断しなければならない』といった緊急性を強調し、すぐに決断しなければならないというプレッシャーをかける提案も危険な兆候です。ネットやSNS、外部の専門家などのセカンドオピニオンを活用して、多角的を集めて、冷静に判断することを心がけましょう。

ひと昔前は、マルチレベルのマーケティングでもリアルの場であれば『それってもしかしたら怪しい詐欺とかじゃない?』と言ってくれる人がいることで助かったケースもあると思いますが、現代はネット社会なので誰も見ていないところでスマホ1台で孤独に被害に会ってしまうこともあるので、周りから情報を多く集めることは非常に重要です。」

高林:「最近は、LINEなどのクローズドなコミュニティへ誘導したり、サクラを使って騙すケースもあるようなので、セカンドオピニオンの活用は大事になりそうですね。」

才田:「どのようなケースでも最終的に決断をするまでは、こちらの『勝ち』とも言えます。なので、いくら煽られても最後にお金を送らないという判断ができれば大丈夫です。『今だけ』『ここだけ』『あなただけ』という謳い文句がきたときに、人生をかけるようなお金は払わないことが重要です。

また、投資はあくまで自己責任の範疇で行い、いきなり大金を投資せず、最悪なくなっても良いお金と割り切って進めることも大事かもしれません。

金融会社としても歴史があり、文句のつけようがないところに投資ができれば安心でしょう。お金を預けても確実に自分よりも長生きしてくれる金融機関に預けるといった考えも良いと思います。」

高林:「才田さん、本日はインタビューありがとうございました。」

まとめ

投資詐欺は巧妙化しており、初心者や素人にとっては見分けが難しいことが多いです。しかし、適切な情報リテラシーと冷静な判断があれば、詐欺被害を未然に防ぐことができます。

本記事では、信頼できる投資案件と詐欺案件の見分け方、投資詐欺の兆候、インターネット上の情報確認方法、詐欺提案の言葉遣い、実際の詐欺事例とその対応方法について解説しました。

投資を行う際には、焦らず冷静に判断し、適切な情報を収集することが重要です。

この記事を参考に、投資詐欺の被害を避け、安全な生活を送るための一助となれば幸いです。

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記事監修:INSURANCE 110 DIRECTOR 才田 弘一郎
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日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。