円安で目減りする円資産、海外在住者は資産をどう守る|2026年の防衛策

監修者情報
110Financial Support認定FP/シニア資産コンサルタント
才田 弘一郎(さいた・こういちろう/Koichiro Saita)
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。
2026年7月、円は対米ドルで約40年ぶり、対韓国ウォンで1年8カ月ぶりの安値をつけました。日本で働く人にとっては輸入物価の話ですが、海外で暮らす私たちにとっての円安は、日本に置いている円資産を現地通貨に換えたときの価値が、年々目減りしていくという現実そのものです。本記事では、円安が海外在住者の資産にどのように影響するのかを整理し、いまから取れる資産運用と資産防衛の具体策をお伝えします。
この記事でわかること
- 2026年7月の円安がどこまで進んでいるか(対ドル・対ウォンの実際の水準)
- 円安が海外在住者の資産に二重に影響する理由と、非居住者ならではの制度の壁
- 円安局面で今すぐ始められる資産防衛の4ステップ
Contents
2026年7月、円安はどこまで進んだのか

まず現状を数字で押さえます。2026年7月、円は主要通貨に対して大きく値を下げました。対米ドルでは1ドル163円台と、1986年12月以来およそ40年ぶりの円安ドル高水準を記録しています。日本人が多く暮らすアジアの通貨に対しても円は弱く、韓国ウォンに対しては100円が約899ウォンと、2024年11月以来、1年8カ月ぶりの円安水準となりました。
| 通貨ペア | 2026年7月の水準 | 特徴 |
|---|---|---|
| 米ドル/円 | 1ドル163円台 | 1986年12月以来およそ40年ぶりの円安ドル高 |
| 円/韓国ウォン | 100円が約899ウォン | 2024年11月以来、1年8カ月ぶりのウォン高円安 |
※2026年7月時点の水準です。為替は日々変動するため、最新値は各金融機関のレートでご確認ください。
円安が続く背景にあるのは主に金利差です。米国など主要国が高い政策金利を維持する一方、日本銀行の利上げは緩やかで、日米の金利差が残っています。加えて日本政府の拡張的な財政方針も、円を売られやすくする要因になっています。市場では日銀の追加利上げ時期が焦点ですが、時期は不透明で、当面は円安基調が続くとの見方が優勢です。
円安は海外在住者の資産に二重に影響する

円安の影響は、海外で暮らす人ほど大きくなります。理由は、資産の目減りと制度の壁という二つの側面が同時に影響するためです。
円建て資産が現地通貨換算で目減りする
日本の銀行預金や円建ての投資信託、日本の給与を円で貯めている場合、その残高は円のままでは変わりません。しかし生活の拠点が海外にある人にとって資産価値の基準となるのは、日々使う現地通貨でいくらに換わるかです。たとえば100万円を現地通貨に換えるとき、1年前より1割円安が進んでいれば、同じ100万円でも手にできる現地通貨は1割少なくなります。日本にいる人には見えにくい、こうした現地通貨換算での目減りが、海外在住者の資産防衛で最初に意識すべき点です。
非居住者はNISAの新規買付が不可、iDeCoは国民年金への任意加入が条件
円安対策として海外在住者が日本の非課税制度に頼ろうとすると、制度の壁にぶつかります。NISAは日本の居住者向けの制度で、出国して非居住者になると新規の買付はできません。会社命令による海外赴任者に限り、出国前に所定の届出をすれば、出国日から5年後の年末まで保有を継続できる特例がありますが、その間も新規買付はできません。iDeCoは2022年5月の改正で、国民年金に任意加入していれば海外居住者も継続できるようになりました。ただし、国民年金への任意加入が条件がです。
証券会社によって非居住者の扱いは大きく異なります。出国前に自分の口座がどうなるかを確認しておく必要があります。
| 証券会社 | 非居住者になったときの主な扱い |
|---|---|
| SBI証券 | NISA口座は廃止、保有商品は一般口座へ払い出し |
| マネックス証券 | 口座の継続は不可、長期出国では口座解約 |
| 楽天証券 | 国外滞在が1年未満なら手続き不要で保有可 |
| 三菱UFJ系(銀行・証券) | 所定の手続きで継続できる場合あり |
※各社の対応は変更される場合があります。2026年7月時点の各社案内に基づく一般的な整理です。手続きの可否と条件は、必ず出国前に利用先へご確認ください。非居住者や海外赴任者のNISAの扱いについては、「海外赴任後も新NISA口座を継続できるかを非居住者向けに解説した記事」で詳しくまとめています。
円安局面で海外在住者が取るべき資産防衛4ステップ

円安に振り回されないために、いまから始められる守りの手順を4つに整理します。
ステップ1 生活費に使う通貨を基準に、通貨配分を見直す
資産防衛の出発点は、自分が生活費に使う通貨を明確にすることです。日々の支出が現地通貨やドルなら、その通貨で資産を持つことで、円安による価値の変動を受けにくくなります。逆に資産の大半を円で持っていると、円安のたびに購買力が下がります。まず、支出の何割を現地通貨・ドル・円で使っているかを書き出し、資産の通貨配分を支出の通貨に近づけます。これをカレンシー・マッチングと呼びます。為替の先読みではなく、使う通貨と持つ通貨を合わせることで、円安・円高のどちの影響も受けにくくするのが狙いです。
ステップ2 ドル建て資産で円安の影響を抑える
通貨配分の軸をドルに寄せる方法として、米国ETFやドル建てのMMF、ドル建ての定期預金、ドル建ての貯蓄型保険などがあります。特にアジアで暮らす人にとって、ドルは国際的な基軸通貨として広く使われており、資産を守る通貨として使いやすい選択肢です。香港の貯蓄型保険はドル建ての運用が中心で、円や現地通貨に偏った資産の分散を図りつつ、堅実なリターンを狙える点で海外在住者の資産防衛と相性が良い商品です。円安の局面では、いま持っている円をどう扱うかだけでなく、これから積み上げる資産をどの通貨で持つかがより重要になります。香港が資産を守る場所として選ばれる理由については、「香港がアジアの金融センターと呼ばれる理由を解説した記事」もあわせてご覧ください。
ステップ3 円資産の外貨への移行は感情ではなくルールで決める
円安が進むと、今のうちに円資産を外貨へ移すべきかと迷います。逆に円高に戻ると、損をした気がして動けないことも起きます。為替は誰にも読めないため、感情で一度に動かすと高値づかみや機会損失になりがちです。有効なのは、時間を分けて少しずつ通貨を入れ替えるルールを先に決めておくことです。たとえば毎月一定額をドルへ移す、円高に転換した局面では日本のNISA枠へ計画的に戻す、といった具合です。帰国して再び居住者に戻ればNISAの買付も再開できるため、円高局面を出口戦略に組み込むと、円安と円高の両方を味方にできます。円安局面でのドル建て資産の扱いは、「円安でドル建て保険を解約すべきかを判断基準とともに解説した記事」が参考になります。
ステップ4 資産が増えるほど必要になる税務上の手続き
資産防衛を進めると、見落としがちな税務申告や報告の義務が出てきます。日本の居住者(非永住者を除く)は、その年の12月31日時点で国外財産の合計額が5,000万円を超えると、翌年6月30日までに国外財産調書を提出する義務があります(国税庁タックスアンサーNo.7456)。海外在住で非居住者と判定される間は対象外ですが、帰国して居住者に戻ると関わってきます。また、外貨預金で生じた為替差益は原則として雑所得となり、総合課税の対象です。居住者か非居住者か、どの国の税務に服するかで扱いは変わるため、資産が一定規模を超えたら、税理士など専門家への確認を早めに行うのが安全です。
円安に振り回されない資産防衛の要点

円安は海外在住者にとって、円資産の現地通貨換算での目減りと、非居住者ゆえの制度の壁という二つの逆風になります。振り回されないための要点は次の通りです。
- 自分の生活費通貨を決め、資産の通貨配分を支出に近づける
- ドル建て資産を軸に、円安・円高のどちらも影響を受けにくい形をつくる
- 円資産の買いがへの移行は感情でなく、時間分散のルールで決める
- 国外財産調書や為替差益の課税など、税務上の手続きを早めに押さえる
まずは自分の資産が今どの通貨に偏っているかを書き出すことから始めてください。海外での資産運用は、居住国の制度や税務、帰国後の設計まで含めて考える必要があります。判断に迷う場合は、海外在住者の事情に詳しい専門家に相談し、自分の状況に合った通貨配分と出口戦略を組み立てることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
円安のとき、円資産はすぐにドルへ換えたほうがよいですか
一度に全額を換えるのはおすすめしません。為替は誰にも予測できないため、高値づかみのリスクがあります。毎月一定額を移すなど、時間を分けて通貨を入れ替えるルールを決めるほうが安全です。生活費通貨とのバランスを見ながら、資産全体の通貨配分を少しずつ調整していく考え方が、円安局面の資産防衛では有効です。
海外に住んでいてもNISAは使えますか
日本の非居住者になると、原則としてNISAの新規買付はできません。会社命令による海外赴任者に限り、出国前に所定の届出をすれば、出国日から5年後の年末まで保有を継続できる特例があります。ただし、継続期間中も新規買付はできません。証券会社によって扱いが異なるため、出国前に必ず利用先へ確認してください。
円安で海外在住者の生活はどう変わりますか
日本から円で仕送りや貯蓄をしている場合、同じ金額でも現地通貨に換えると受け取れる額が減ります。日本の年金や円建て資産に生活を頼るほど、円安の影響は大きくなります。生活費を現地通貨やドルで確保できる状態をつくると、円安の影響を和らげられます。
ドル建ての資産を持つと円安対策になりますか
はい。生活費や資産の基準をドルに寄せると、円安による影響を受けにくくなります。米国ETFやドル建ての預金、ドル建ての貯蓄型保険などが選択肢です。ただし円高に振れれば円換算の評価は下がるため、生活費通貨とのバランスを見て配分を決めることが大切です。
海外資産が増えたら日本で申告が必要ですか
日本の居住者(非永住者を除く)で、12月31日時点の国外財産の合計額が5,000万円を超える場合、翌年6月30日までに国外財産調書の提出が必要です。非居住者と判定される間は対象外ですが、帰国後は関わってきます。外貨預金の為替差益は原則として雑所得として課税されるため、資産が一定規模を超えたら専門家に確認してください。
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参考情報
朝鮮日報日本語版「100円=800ウォン台に、1年8カ月ぶり円安水準」(2026年7月24日)
国税庁 タックスアンサー No.7456 国外財産調書の提出義務
※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。税務に関する詳細は、税理士等の専門家にご相談ください。
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