海外資産はCRSでバレる|税務署に口座が把握される仕組みと申告しないとどうなるか

監修者情報

110Financial Support認定FP/シニア資産コンサルタント
才田 弘一郎(さいた・こういちろう/Koichiro Saita)

日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。

海外で働き、資産を現地の銀行や証券口座に置いている。日本の税務署からは見えないはず。そう考えている海外在住の方は少なくありません。しかし今は、海外口座の情報が毎年自動で日本へ届く時代です。本記事では、海外資産がCRSでバレる仕組み、海外在住(非居住者)の扱い、そして申告しなかった場合に何が起きるかを、香港で2,000名以上を支援してきた立場から整理します。

この記事でわかること

  • 海外口座の情報が日本の税務署へ自動で届くCRSの仕組みと、交換される情報
  • 海外在住(非居住者)でも残る課税と、国外財産調書の正しい線引き
  • 海外資産を申告しなかった場合のペナルティと、今すぐ取るべき対策

結論から言うと、海外資産はCRS(共通報告基準)による自動的な情報交換で日本の税務署に把握されます。口座残高や利子・配当などの譲歩うは毎年各国から日本へ送られ、海外に資産を移すだけでは、財産隠しは通用しません。

そもそも海外資産はなぜバレるのか?CRSで「移せば安心」は通用しない

海外資産がバレる最大の理由は、各国の税務当局が金融口座の情報を自動で交換しているからです。日本の税務署は、海外に置いた資産を複数の経路で把握しています。

参考になるのが、2026年10月に韓国で起きた事例です。韓国の西帰浦市は地方税の滞納者を調査し、「納税資金がない」と納付を拒んでいた281人が株式口座に資産を隠していたと発表しました。隠されていた株式は約123億ウォン(約14億円)相当で、当局は証券会社を通じて口座の差押えに動いています。これは韓国国内の地方税の事例で、日本のCRSとは制度が異なります。ただし、金融口座が当局に把握され、財産隠しが通用しないという流れは国境を越えて共通です。

日本の税務署が海外資産を把握する主な経路は、次の5つです。

把握経路概要基準の目安
CRS自動的情報交換海外口座の情報が毎年自動で日本へ届く残高・運用益など
国外送金等調書100万円超の国外送金・国外からの送金受領を金融機関が報告1回100万円超
国外財産調書12月末5,000万円超の国外財産を自己申告合計5,000万円超
国外転出時課税出国時に1億円以上の有価証券等へ課税対象資産1億円以上
相続・贈与時の突合租税条約の情報交換とCRSを突合相続・贈与の発生時

海外資産の把握方法は1つではありません。どれか1つに当てはまらなくても、別の経路で情報が届いている可能性があります。

CRS(共通報告基準)とは?海外口座が自動で税務署に届く仕組み

CRS(共通報告基準、Common Reporting Standard)とは、OECDが2014年に策定した、非居住者の金融口座情報を各国の税務当局どうしが自動で交換する国際ルールです。

従来の情報交換は、調査が必要になったときに相手国へ要請する「要請ベース」でした。CRSはこれを「自動交換」に変えた点が決定的な違いです。日本では2017年1月から、金融機関が口座を開設する人の居住地を確認するようになり、初回の情報交換は2018年(2017年末時点の残高情報から)に始まりました。

かつては、タックスヘイブン(租税回避地)に口座をつくれば資産は見えないとされていました。しかしCRSにより、120を超える国・地域(2025年時点)が口座情報を交換するようになり、その前提は崩れています。

CRSで交換される情報と対象国

CRSで交換されるのは、口座の持ち主と残高、そして運用益の情報です。預金口座だけでなく、証券口座や一部の保険契約も対象になります。

交換される情報具体的な内容
口座保有者の情報氏名・住所・納税者番号・生年月日
口座の情報口座番号・年末時点の口座残高
運用益の情報利子・配当・有価証券の売却代金など

香港、シンガポール、タイ、オーストラリアなど、日本人が多く暮らす国・地域の多くがCRSに参加しています。口座を開いた国がCRS参加国であれば、その残高は日本へ届くと考えてください。

日本はどれくらいの口座情報を受け取っているのか

日本の国税庁は、外国から膨大な量の非居住者口座情報を受け取っています。最新の集計では、受領件数は約275万件、受領元は101か国・地域にのぼります(国税庁、令和6事務年度の集計)。

これは「いつか調べられるかもしれない」という話ではありません。毎年、機械的に情報が届いている状態です。海外口座を開設した時点で居住地が日本と確認されていれば、その残高は翌年以降、日本の国税庁へ自動的に送られます。

CRS以外に税務署が海外資産を把握する4つの経路

海外資産を把握する経路はCRSだけではありません。CRSと組み合わせて使われる、国内の調書制度も押さえておきましょう。

国外送金等調書(100万円超の国外送金)

1回100万円を超える海外への送金や海外からの送金の受領があると、金融機関がその内容を税務署へ報告します。記載されるのは、送受金者の氏名・住所・マイナンバー・金額・送金目的などです。海外預金への入金や引き揚げも、この調書を通じて税務署の目に触れます。

国外財産調書(5,000万円超)

12月31日時点で国外にある財産の合計が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出する義務があります。提出期限は令和5年分以降に3月15日から6月30日へ延長されました。この調書はCRSで届いた情報と突合され、記載漏れの発見に使われます。

国外転出時課税(出国税・1億円以上)

1億円以上の有価証券等を持つ人が日本から出国するとき、その含み益に所得税が課されます。これが国外転出時課税、いわゆる出国税です。出国前10年以内に5年を超えて日本に住んでいた人が対象で、贈与や相続で非居住者へ資産を移した場合にも課税されます。

相続・贈与時の情報突合

相続や贈与の場面でも、租税条約に基づく二国間の情報交換、CRS、国外財産調書が突合されます。海外の不動産や口座が申告から漏れていれば、相続税・贈与税の調査で把握されます。

制度対象・基準額提出・申告の義務者
国外送金等調書1回100万円超の国外送金・国外からの送金受領金融機関が提出
国外財産調書12月末で合計5,000万円超居住者(非永住者を除く)
国外転出時課税1億円以上の有価証券等出国する居住者

海外在住(非居住者)なら申告は不要?

海外在住(非居住者)の方は、国外財産調書の提出義務はありません。提出義務があるのは居住者(非永住者を除く)に限られるためです。ただし、調書の義務がないことと、日本の課税と無関係であることは、まったくの別物です。

まず、CRSによる情報交換は居住区分に関係なく行われます。海外口座の残高は、日本側が必要と判断すれば把握できる状態にあります。

次に、非居住者であっても日本国内に源泉がある所得には、日本で課税・申告の義務が生じます。たとえば国内不動産の賃貸収入や売却益、日本国内での勤務分の給与、日本法人からの配当などが該当します。

さらに、出国時にかかる国外転出時課税や、将来帰国したときの資産の扱いも論点です。「調書を出さなくてよい、だから日本の税務とは関係ない」と考えるのは危険です。非居住者であっても、出国時の課税、国内源泉所得、帰国後の扱いまで見据える必要があります。

海外資産を申告しないとどうなるか

海外資産を申告しないと、情報の突合で申告漏れが把握され、本来の税額に加えて加算税や延滞税、悪質な場合は刑事罰が科されます。海外資産を隠すリスクは、追徴課税だけにとどまりません。

バレた後の流れは、おおむね次のとおりです。各国からCRS情報が到着する、税務署から「お尋ね」が届く、回答内容によっては税務調査に進みます。申告漏れが確定すれば加算税と延滞税がかかる、仮装・隠蔽などが認められる悪質なケースでは、重加算税や刑事罰に至る、という順です。

国外財産調書には、ペナルティを左右する仕組みがあります。期限内に提出し財産を記載していれば、申告漏れがあっても過少申告加算税・無申告加算税が5%軽減されます。逆に提出がない、または記載がない場合は5%加重されます。税務調査で関連書類の提示を求められ、60日以内に出さないと、加重の割合は10%になります。

国外財産調書の状況加算税の扱い
期限内に提出し、財産を記載加算税を5%軽減
未提出、または財産の記載なし加算税を5%加重
調査で書類を60日以内に不提示加重の割合が10%に
仮装・隠蔽など悪質な場合重加算税・刑事罰の対象

さらに、国外財産調書の不提出や虚偽記載そのものにも、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。

海外在住者が今すぐ取るべき3つの対策

海外資産は「いずれ把握される」前提で備えるのが、最も確実です。今日からできる対策を3つに整理します。

  1. 自分の居住区分を確認する。居住者・非永住者・非居住者のどれに当たるかで、申告義務も課税範囲も変わります。
  2. 国外の財産と口座を棚卸しする。国外財産の合計額5,000万円、1回の送金額100万円、有価証券等1億円という基準に照らし、どの制度に関わるかを把握します。
  3. 帰国や受け取りまで見据えた出口戦略を専門家に相談する。保有中だけでなく、解約・受け取り・帰国のタイミングで税務の差が大きく出ます。

特に香港やシンガポールの保険・オフショア商品は、契約時よりも出口(受け取り方・解約・帰国の時期)で手取りが大きく変わります。110 Financial Supportでは、海外在住者一人ひとりの資産状況に合わせて、課税リスクを抑えた出口戦略をご提案しています。

海外在住者に関わる日本の税金や課税の基本については、「海外移住者の税金はどうなるの?海外に住む人の納税に関する基本知識と注意点を解説」でも詳しく解説しています。帰国後の国外財産調書をはじめとする税務手続きについては、「【2026】帰国前に確認を!海外在住者が知るべき日本の税務手続きと資産対策」をご覧ください。
香港のオフショア投資や貯蓄型保険を活用した資産運用については、「【2026】好調な香港経済|日本人が選ぶべき資産運用ルート5選」も参考になります。

まとめ|海外資産は「見える前提」で準備する

海外資産は、CRSによる自動的情報交換で日本の税務署に把握される時代になりました。要点は次の5つです。

  • CRSにより、海外口座の残高や運用益が毎年自動で日本へ届く
  • CRSに加え、国外送金等調書・国外財産調書・国外転出時課税・相続時の突合という経路がある
  • 非居住者は国外財産調書の対象外だが、CRSでの把握や国内源泉所得、出国税の論点は残る
  • 申告漏れには加算税・延滞税、悪質なら重加算税や刑事罰が科される
  • 国外財産調書を期限内に出すと加算税が5%軽減され、出さないと加重される

まず自分の居住区分と国外財産を棚卸しし、基準額に照らして必要な申告を確認してください。そのうえで、受け取りや帰国まで見据えた出口戦略を早めに準備することが、課税リスクを抑える近道です。

よくある質問(FAQ)

以下は、海外資産とCRSについて検索時によく見られる質問への回答です。

CRSはいつから始まりましたか

CRSはOECDが2014年に策定した国際ルールで、日本では2017年1月から金融機関による居住地の確認が始まりました。各国との初回の情報交換は2018年に実施され、2017年末時点の口座残高情報から対象になっています。現在は120を超える国・地域が参加しており、海外口座の情報が毎年自動で交換されています。

海外の銀行口座は少額でも税務署にバレますか

CRSは残高の下限を一律には設けておらず、個人の口座は原則として報告の対象になります。少額だから届かないとは限りません。ただし実際に調査や課税につながるかは、残高や所得の規模、他の情報との突合によります。金額の大小にかかわらず、把握され得る状態にあると考えるのが安全です。

海外在住でも日本で確定申告は必要ですか

海外在住(非居住者)でも、日本国内に源泉がある所得があれば確定申告が必要です。国内不動産の賃貸収入や売却益、日本国内での勤務分の給与、日本法人からの配当などが該当します。一方で、国外財産調書の提出義務は居住者(非永住者を除く)に限られ、非居住者は対象外です。自分の居住区分の確認が出発点になります。

海外資産はいくらから申告が必要ですか

国外財産調書は、12月31日時点で国外財産の合計が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)に提出義務があります。また、1回100万円超の国外送金・国外からの送金受領は国外送金等調書の対象、1億円以上の有価証券等を持つ人の出国は国外転出時課税の対象です。基準額ごとに関わる制度が異なるため、自分の資産を各基準に照らして確認してください。

海外資産を申告していなかった場合はどうすればよいですか

まずは速やかに修正申告または期限後申告を検討してください。自主的な申告は、調査を受けてからの対応に比べて加算税が軽くなる場合があります。海外資産は制度の判定が複雑なため、税理士等の専門家に相談しながら進めるのが安全です。放置するほど延滞税が積み上がり、悪質と判断されれば重加算税や刑事罰のリスクも高まります。

※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。税務に関する詳細は、税理士等の専門家にご相談ください。なお本記事は2026年10月時点の制度に基づいています。

参考情報
国税庁 タックスアンサー No.7456 国外財産調書制度
国税庁 タックスアンサー No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
国税庁 CRS(共通報告基準)に基づく自動的情報交換
国税庁 令和6事務年度における自動的情報交換の実施状況

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記事監修
110Financial Support認定FP/シニア資産コンサルタント 才田 弘一郎
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。
日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。