【2026】タイ駐在の資産運用の極意│非居住者の制約から税制・出口戦略まで駐在員向けにプロが解説

監修者情報
110Financial Support認定FP/シニア資産コンサルタント
才田 弘一郎(さいた・こういちろう/Koichiro Saita)
日本・海外で累計2,000名以上のお客様の資産運用をサポート。
香港、シンガポール、日本、アメリカなど世界各国の保険やオフショア商品の事情に精通。日本人に適した「出口戦略」を意識した堅実な資産運用の提案が得意。
タイ駐在が決まった、あるいは着任してから「日本の証券口座が使えなくなる」と知って戸惑っていませんか。タイ駐在は収入面では資産を作る絶好の機会ですが、日本とタイ両方のルールを知らないまま動くと、思わぬ課税や機会損失につながります。本記事では、タイを活動拠点のひとつとするFPが、タイ駐在員の資産運用を制度と実務の両面から解説します。
この記事でわかること
- タイ駐在(日本の非居住者)になると使えなくなる金融サービスと代替手段
- タイ固有の税制(国外源泉所得の持ち込み課税)と2026年の緩和動向
- 帰任から逆算した資産運用の設計手順と出口戦略
なぜタイ駐在の資産運用には「タイ専用の設計」が必要なのか

日本の非居住者になると、使えない金融サービスが一気に増える
日本を出国して1年以上の予定でタイに赴任すると、税法上・金融実務上「日本の非居住者」になります。この瞬間に、日本国内では当たり前だった選択肢の多くが使えなくなります。
| 日本の金融サービス | タイ駐在中(非居住者)の扱い |
|---|---|
| NISA | 新規の買付は不可。口座の継続可否は金融機関により異なる |
| iDeCo | 国民年金の任意加入をすれば拠出継続が可能(2022年5月改正) |
| 企業型確定拠出年金(DC) | 勤務先の制度に基づき継続可能なケースが多い |
| 日本の証券口座 | 多くの証券会社で新規取引不可。売却のみ、または常任代理人口座へ移行 |
| 日本の銀行口座 | 原則は解約対象。非居住者向けサービスを持つ銀行のみ維持可 |
※2026年7月時点の一般的な取り扱いです。各社の最新規定をご確認ください。
とくに見落としが多いのがNISAです。出国により新規投資はできなくなり、証券会社によっては口座自体の廃止が必要になります。「海外からこっそり取引を続ける」のは規約違反であり、口座凍結のリスクを伴うため絶対に避けてください。
タイ固有の税制、国外源泉所得の「持ち込み課税」を知らないと危ない
タイで年間180日以上滞在する駐在員は、タイの税務居住者になります。ここで重要なのが、2024年1月から運用が始まった歳入局通達Por.161/2566です。タイの税務居住者が国外で得た所得(株式の売却益・配当・家賃収入等)をタイ国内に持ち込むと、持ち込んだ年の課税所得に算入されるルールに変わりました。
つまり「日本や第三国で運用して得た利益をタイの口座に送金する」という動きに課税が絡むようになったのです。なお、給与のうち日本払い分はもともとタイでの労働の対価としてタイでの課税対象となるため、この改正の影響はありません。
一方で2025年以降、所得が発生した年またはその翌年にタイへ送金した場合は課税対象外とする緩和方針が公表されており、制度は流動的です。タイへの大きな資金移動を行う前には、必ず最新の税制を確認し、専門家に相談してください。
タイ駐在員が使える資産運用の選択肢、3つのルートで整理する

タイ駐在員の資産運用は「日本側で続ける」「タイ現地で運用する」「第三国(オフショア)で運用する」の3ルートに整理できます。
| ルート | 主な手段 | 強み | 弱み・注意点 |
|---|---|---|---|
| 日本側 | 企業型DC、iDeCo、常任代理人口座 | 帰国後にそのまま接続できる | 新規投資の自由度が低い。常任代理人口座は手数料負担が重い |
| タイ現地 | 現地銀行の定期預金、タイ株 | 生活通貨(バーツ)で完結する | 帰任時に銀行口座は原則閉鎖。持ち込み課税の管理が必要 |
| 第三国 | 香港等の貯蓄型保険・オフショア投資 | 非居住者でも加入可能で帰任後も継続できる | 商品選定に専門知識が必要。短期解約は元本割れの可能性がある |
日本側で続ける、企業型DCとiDeCoは「守りの土台」
勤務先に企業型DCがあれば、赴任中も継続できるケースが大半です。iDeCoも2022年5月の制度改正で、国民年金に任意加入すれば海外居住のまま拠出を続けられるようになりました。どちらも税制優遇のある「守りの土台」として維持する価値があります。ただし拠出上限があるため、これだけで駐在期間の余剰資金を運用しきることはできません。
タイ現地で運用する、バーツ建ては「使う分だけ」が原則
タイの銀行定期預金やタイ株は、バンコクでの資産運用の選択肢として身近ですが、駐在員には構造的な弱点があります。本帰国が決まるとタイの銀行口座は原則閉鎖を求められ、運用資産を売却・送金して清算する必要があるためです。タイ現地の運用は「タイにいる間に使うお金+α」にとどめ、長期の資産形成の主軸には据えないのが実務的な考え方です。
第三国で運用する、香港のオフショア商品は「帰任後も続く」のが最大の強み
香港など第三国の金融商品は、日本の非居住者であることがむしろ入口になります。香港の貯蓄型保険は米ドル建てで長期複利を狙う設計が主流で、タイから日本へ帰任しても、次の国へ転勤しても契約をそのまま持ち続けられます。任地が変わるたびに運用をリセットしなくてよい点は、数年ごとに動く駐在員にとって本質的なメリットです。第三国ルートの全体像は海外赴任、駐在中でも投資できる?オフショア投資の魅力と投資戦略で詳しく解説しています。
タイ駐在は「貯めどき」、家計構造を運用に活かす

タイ駐在員の報酬は、日本給与に駐在手当・住宅補助が上乗せされる構成が一般的で、可処分所得は日本勤務時より大きく増えるケースが少なくありません。一方バンコクの生活費は家賃補助があれば月10万〜15万バーツ程度の給与レンジでも十分に余剰が生まれ、「タイ駐在はお金が貯まる」と言われる理由になっています。
ご相談の現場でよくあるのは、余剰資金をバーツ普通預金に置いたまま帰任間際を迎えるケースです。毎月の余剰資金のうち定額を自動的に外貨建ての長期運用へ回す仕組みを着任初年度に作れるかどうかで、駐在3〜5年後の資産額は大きく変わります。
帯同の配偶者(駐在妻・駐在夫)は就労ビザがない場合タイで収入を得られませんが、日本の口座やクレジットカードの整理、家計の外貨管理など、資産運用の実務は帯同側が担う家庭が多いのが実情です。夫婦で運用方針を共有しておくと、帰任時の手続きも格段にスムーズになります。
帰任から逆算する出口戦略、駐在員の運用は「終わり方」で決まる

帰任1年前からのチェックリスト
- タイの銀行口座・証券口座の閉鎖手順と送金ルートの確認
- 国外源泉所得の持ち込み課税の精算状況の確認(税理士へ相談)
- 日本帰国後に継続できる資産と清算が必要な資産の仕分け
- NISA・iDeCo・証券口座の再開手続きの準備
- 帰国後の住居・教育費など大型支出とのバランス確認
「帰任後も持ち続けられる資産」を核にする
出口戦略の要点はひとつです。駐在期間中に作る資産の核を、任地に縛られない資産にしておくこと。香港の貯蓄型保険やオフショア投資のように国をまたいで持ち続けられる資産を核にすれば、帰任は「運用の終わり」ではなく通過点になります。ベトナムやインドなど他国駐在の設計例はベトナム駐在の資産運用ガイドも参考になります。
今日から始める3ステップ

- 現状把握。日本の口座・NISA・DCの非居住者としての扱いを勤務先と金融機関に確認する
- 家計の見える化。毎月の余剰資金額を確定し、バーツ・円・米ドルの持ち分を決める
- 長期の核づくり。帰任後も継続できる長期運用(第三国ルート)を専門家と設計する
まとめ

タイ駐在の資産運用は、日本の非居住者制約とタイの持ち込み課税という2つのルールを踏まえた「タイ専用の設計」が出発点です。選択肢は日本側・タイ現地・第三国の3ルートに整理でき、長期の資産形成の核には、帰任後も持ち続けられる第三国ルートの活用が実務的な選択肢となります。タイ駐在は収入構造の面で人生有数の「貯めどき」です。着任初期に仕組みを作り、帰任1年前から出口を整える。この2つのタイミングを意識することが、駐在期間を資産面で最大化する鍵になります。
よくある質問(FAQ)
タイ駐在中もNISAを続けられますか?
新規の買付はできません。出国により日本の非居住者になると、NISA口座での新規投資は制度上不可となり、口座を継続保有できるかどうかも金融機関により対応が分かれます。出国前に証券会社へ届出を行い、保有分の扱い(継続保有・課税口座への払出し・売却)を確認してください。無届けのまま海外から取引を続けるのは規約違反です。
タイ駐在員はどのくらいお金が貯まりますか?
駐在手当と住宅補助により、日本勤務時より可処分所得が増えるケースが一般的で、毎月10万円以上を運用に回せる方も珍しくありません。ただし貯まるかどうかは仕組み次第です。バンコクは外食・レジャーの誘惑も多く、余剰資金を自動的に長期運用へ回す設定を着任初年度に作った家庭とそうでない家庭では、帰任時の資産に大きな差がつきます。
日本や香港で運用した利益は、タイで課税されますか?
タイに年間180日以上滞在する税務居住者が国外源泉所得をタイ国内に持ち込む(送金する)と、持ち込んだ年の課税所得になるのが2024年以降の原則です。ただし所得発生年またはその翌年の送金を非課税とする緩和方針が公表されており、制度は変わり続けています。タイへ資金を移す前に、必ず最新ルールを税務専門家に確認してください。
帯同する配偶者(駐在妻・駐在夫)でも資産運用はできますか?
可能です。ただし帯同側も日本の非居住者になるため、日本の証券口座・NISAの制約は本人と同じです。タイで就労ビザなしに働くことはできないため、収入は世帯単位で考え、名義や受取人の設計を含めて夫婦で方針を決めることが重要です。香港の保険商品などは帯同配偶者名義での加入も選択肢になります。
帰任が決まったら、タイで作った資産はどうすればよいですか?
タイの銀行口座は本帰国にあたり原則閉鎖を求められるため、現地の運用資産は売却・清算して送金する流れになります。一方、香港など第三国の資産は帰任後もそのまま保有・積立を続けられます。帰任1年前を目安に、清算する資産と継続保有する資産の仕分け、送金ルート、税務の確認を始めてください。
タイで現地企業に転職した場合も資産運用は継続できますか?
はい、資産運用自体は問題なく継続可能です。近年では、帰任命令をきっかけに、タイの現地企業(日系・外資を問わず)へ転職する人も増えています。現地での生活や仕事に魅力を感じ、そのままタイで働き続けたいと考える方もいるでしょう。
ただし、注意したいのは、雇用契約の内容によっては、駐在員時代に受けていた手当や福利厚生などのメリットが大きく変わることです。独身であれば家計への影響を抑えやすいケースもありますが、家族帯同となれば、住宅費・教育費・日本の社会保険料など、さまざまな費用が自己負担となる可能性があります。
現地採用への転職には多くの魅力がある一方、収支構造が大きく変わる可能性があるため、転職を機に、資産運用を含めたライフプランを再設計し、キャッシュフローを確認しておくことをおすすめします。
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参考情報
※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。税務に関する詳細は、税理士等の専門家にご相談ください。
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- 駐在国で、どのように資産運用を始めれば良いかわからない
- 駐在から現地転職や現地起業に変わった場合の保障や資産運用を相談したい
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- 現在加入している金融商品が自分に合っているか診断してほしい
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