なぜ今、「デジタル相続」と「お金の相続」の生前整理が必要なのか?

元NTTインフラ設計者が語る「資産」と「家族の手続き」を絶対に途絶えさせないバックアップ設計の極意

「質問です。今この瞬間、あなたの心臓が止まったとして、ご家族はあなたのスマートフォンのロックを解除できるでしょうか?」

私のセミナーでこの問いを投げかけると、画面の向こうの空気がピリッと張り詰めます。9割以上の方が、ハッと気まずそうに目をそらされるからです。

多くのビジネスパーソンや、海外に資産をお持ちの方々はこうおっしゃいます。「まだ元気だし、50代や60代で終活なんて早すぎる」「家族を信頼しているから、いざとなったら銀行がなんとかしてくれるだろう」と。

しかし、数々の相続手続きの現場を、国際弁護士・会計士などの専門家とともに対応し、身近に見てきた実務家として、綺麗ごと抜きで申し上げます。「家族への信頼」と「実際の手続きがスムーズにできるかどうか」は、まったくの別問題です。

「通信を止めない」インフラ設計思想を、あなたの資産保全へ

私は現在、アジアの金融ハブである香港に拠点を移して16年目になります。海外資産専門の国際ファイナンシャル・アドバイザー(FP)として、日本と世界の双方の視点から、国境を越えて活躍する皆様の資産形成や保全をサポートしています。

そんな私のキャリアの原点は、実は金融業界ではなく、NTTグループにおける国家規模の重要インフラ設計にありました。当時、私が従事していたのは、24時間365日「絶対に通信を切断させない」ための設備計画やリスク管理です。台風が来ようが、地震が起きようが、インフラの心臓部を絶対に止めない。そして可能な限り迅速に通常状態に移行させる。そのためにロジカルな「多重バックアップ体制」を緻密に設計することが、私の仕事でした。

その後、人生の転機を経て日本でのFP業務、そして国際FPへと転身したのですが、金融の世界に身を置いて痛感したことがあります。それは、「個人の人生における『資産』や、もしもの時の『家族の手続き』もまた、絶対に途絶えさせてはならない最重要ライフインフラである」という事実です。

私の資産設計の信念は『Form follows function(形態は機能に従う)』というデザイン界の格言に基づいています。どんなに華やかに見える投資や資産運用も、万が一のときに家族を守り、生活を維持するという「基盤(機能)」が正しく設計されていなければ、何の意味も成しません。

災害に耐える通信回線と同じように、予期せぬ事態(突然の死や病)というリスクに直面しても、家族の生活インフラを途絶えさせない。そのための論理的で再現性の高い「資産と手続きのバックアップ体制」をあらかじめ設計しておくこと・・・これこそが、私が常に求める「国際終活」の本質なのです。

万が一のとき、遺された家族を襲う「手続きの嵐」と「制度の壁」。

人が亡くなると、遺された家族には悲しむ暇もないほど膨大な手続きが押し寄せます。役所への死亡届の提出や世帯主変更手続きに始まり、健康保険、介護保険、公的年金の受給停止、さらには通夜・葬儀の手配からお墓の準備まで、やるべきことは山積みです。

その過酷なプロセスの最中に、あなたが遺した預貯金、生命保険、株式などの金融手続き、さらには不動産の相続手続きが一気にスタートします。

家族に多くのお金を遺したいと願うのは親心ですが、資産を遺すことと同じくらい、「それを家族がすぐに使えるようにしておくこと(保管場所やアクセス方法が伝わっていること)」も重要なのです。

「いざとなったら、銀行に行けば引き出せるはず」そう思っているなら、今すぐその認識を改めてください。金融機関は口座名義人の死亡を把握すると、相続手続きが完了するまで口座を即座に凍結します。

海外においては、居住国によって違いはありますが、香港では同じく銀行・証券など凍結されて、裁判所による『プロベート』という手続きが必要です。最低でも1〜2年、費用面においても無策であれば最低300万円ほどの専門家費用等も掛かってまいります。

日本の場合、2019年から施行された「預貯金の仮払い制度」を使えば、遺産分割前でも一定額の引き出しは可能になりました。しかし、引き出せるのは「相続開始時の預貯金額の3分の1×法定相続分(1金融機関あたり上限150万円まで)」という厳しい制限があります。

しかも、この仮払いを受けるためだけに、ご家族は以下の書類を自力で揃えて銀行の窓口に並ばなければなりません。

被相続人の出生から死亡まで連続した、
・すべての戸籍謄本(除籍謄本・全部事項証明書)
・相続人全員の戸籍謄本
・払戻しを希望する人の印鑑証明書

大切な人を失った深い悲しみと混乱の中で、役所を何度も往復し、山のような古い戸籍書類を集めて銀行とやり取りをする・・・。生前の「資産の見える化(資産目録の作成)」を怠るということは、この壮絶な作業と精神的負担をそのままご家族に丸投げすることを意味するのです。

今回は『デジタル相続』『お金の相続』についての直接的な言及はしていませんが、終活という準備についての真意はご理解頂けたのではないかと思います。

次回は、より複雑になる「現代のブラックボックス相続」について、現代の便利さの裏側にあるデジタル資産の取り扱いと「お金の相続」の注意点について詳しく解説します。あなたとご家族の未来のインフラを、一緒に設計していきましょう。

香港FP
才田弘一郎

YouTube:https://www.youtube.com/@110FinancialSupportMedia

才田コラム

所属:Insurance110 香港

才田 弘一郎

SAITA Koichiro

「通信を止めない」インフラ設計思想を資産防衛へ。香港16年の知見でグローバルに生きる人々を支える国際フィナンシャル・アドバイザー

49歳:2人の子育て中。アジアの金融ハブである香港に拠点を移して16年目。香港のダイナミックな変化を肌で感じ、海外の資産専門家として、日本と世界の双方の視点から、国境を越えて活躍する皆様の資産形成・保全をサポート。

社会人の最初はNTTグループにて、24時間365日『絶対に通信を切断させない』ための設備計画など、国家規模の重要インフラ設計に従事。個人の人生における『資産』もまた、絶対に途絶えさせてはならない最重要インフラであると痛感。転機もあり国内FPを経て16年前に渡港し、激動のグローバル金融環境に身を置く中で、インフラの世界で徹底的に叩き込まれた『高度なリスク管理』と『緻密な設計思想』を個人の資産防衛に役立てるべく、国際FPへと転身。

専門分野

  • 国際終活プランニング
  • クロスボーダー資産管理戦略
  • マーケット分析・運用戦略
  • Wealth Management

『Form follows function(形態は機能に従う)』という格言を、資産形成・設計の信念としています。
華やかに見える投資も、人生の土台となる『基盤(機能)』が正しく準備出来ていなければ意味を成しません。
元インフラ設計者の視点から、予期せぬ環境変化というリスクにも耐え、論理的で再現性の高い『資産形成とバックアップ体制』の設計が重要だと考えています。

才田 弘一郎からの一言

日本の通信インフラを支えた『ロジカルな設計力』と、香港16年で磨いた『グローバルな金融知見』。これらを掛け合わせ、皆様の資産を荒波から守り抜き、豊かで安心な未来を築くための最良のパートナーとして伴走いたします。

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